第7問
以下の会話は、X株式会社(以下「X社」という。)の株主兼代表取締役である甲氏 と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読ん で、下記の設問に答えよ。 なお、X社は種類株式発行会社ではなく、定款に特段の定めはない。また、X社 とY株式会社(以下「Y社」という。)との間に資本関係はない。 甲 氏:「私も今年で70 歳を超え、X社の経営をしていくのが大変になってきたの で、X社の経営を他の人に譲ろうと思っています。知人に聞いたところ、 Y社が、X社の事業に興味を持っているということで、X社の株式を買っ てもよいということでした。X社の株式をY社に売却するに当たって、ど のようなことを準備しておくとよいのでしょうか。」 あなた:「他人の名義を用いて株式の引き受けや取得をしていた場合には、その名 義株主と実質的な株主との間で、株主がどちらであるかということが争い になる場合があります。このため、もし、そのような事情がある場合に は、実質的な株主と名義株主との間で合意書を締結し、株主がどちらであ るのかを確認しておくことが必要です。」 甲 氏:「分かりました。X社の株式は、私の他に株主名簿に記載された人が出資 をして株式を引き受けていますので、名義株主はいなかったと思います が、改めて確認します。ところで、X社の株式は、私が大半を持っていま すが、それ以外にも株主がいます。Y社に株式を譲渡するにあたって、私 以外の株主の大部分はY社に株式を譲渡することに同意してもらえます が、一部の株主はY社への株式譲渡に応じない可能性があります。Y社に X社の株式の全部を譲渡するために何か方法はありますか。」 あなた:「甲氏は、X社の株式をどれくらい持っているのでしょうか。」 甲 氏:「私は、X社の A の B 以上を持っています。」 あなた:「そうであれば、甲氏は、X社の特別支配株主になりますので、X社の株 主の全員に対し、その有するX社の株式の全部を自分に売り渡すことを請 求することができ、所定の手続をとることにより、甲氏が、X社の株式の 6 全部を取得することができます。そのうえで、Y社に株式を譲渡すること が考えられます。」 甲 氏:「分かりました。ところで、X社の株式をY社に譲渡する以外の方法で、 Y社にX社の事業を引き継ぐ方法はありますか。」 あなた:「例えば、X社の事業の全部をY社に事業譲渡する方法や、Y社がX社を 吸収合併する方法があります。」 甲 氏:「事業の全部をY社に事業譲渡する場合、X社では、どのような手続きが 必要となるのでしょうか。」 あなた:「その場合は、原則として、X社で株主総会の特別決議が必要になりま す。」 甲 氏:「知人からは、会社法では、債権者異議手続や反対する株主から株式を買 い取る手続きが定められていると聞いたのですが、この点はどうでしょう か。」 あなた:「ご質問の事業を全部譲渡する場合、X社において、 C 。X社の 反対株主には、 D 。」 甲 氏:「ありがとうございます。進展があったらまた相談します。」 あなた:「必要であれば、事業承継に詳しい弁護士を紹介しますので、いつでも相 談してください。」
設問1
会話の中の空欄AとBに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれ か。
- ア A:総株主の議決権 B:5分の4
- イ A:総株主の議決権 B:10 分の9
- ウ A:発行済株式総数 B:3分の2
- エ A:発行済株式総数 B:5分の4
設問2
会話の中の空欄CとDに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれ か。
- ア C:債権者異議手続が必要となります D:いかなる場合でも株式買取請求権は認められていません
- イ C:債権者異議手続が必要となります D:株式買取請求権が認められていますが、事業譲渡の承認決議と同時に解 散の決議をする場合には、株式買取請求権は発生しません
- ウ C:債権者異議手続は不要です D:いかなる場合でも株式買取請求権は認められていません
- エ C:債権者異議手続は不要です D:株式買取請求権が認められていますが、事業譲渡の承認決議と同時に解 散の決議をする場合には、株式買取請求権は発生しません
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正解: 設問1 イ 設問2 エ
解答:設問1=イ、設問2=エ
特別支配株主の株式等売渡請求と、事業全部譲渡の手続を問う事例問題。
設問1(正解:イ) 特別支配株主とは、ある株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する株主をいう(179条1項)。よってA=総株主の議決権、B=10分の9。
- ア(×):割合が5分の4で誤り。
- イ(○):総株主の議決権の10分の9以上。
- ウ(×):基準が発行済株式総数ではなく議決権で、割合も誤り。
- エ(×):基準が発行済株式総数で誤り。
設問2(正解:エ)
- C:事業全部譲渡は会社分割等の組織再編と異なり、債権者異議手続は不要(個別の債務引受・債権者保護は債権者の同意等で処理)。よって「債権者異議手続は不要です」。
- D:事業全部譲渡には反対株主の株式買取請求権が認められる(469条)が、譲渡承認決議と同時に解散決議をする場合は株式買取請求権は発生しない(469条1項1号)。
- ア・イ(×):Cが「必要」で誤り。
- ウ(×):Dが「いかなる場合でも認められない」で誤り。
- エ(○):C=不要、D=買取請求権あり・解散決議同時なら不発生で正しい。
よって 設問1=イ、設問2=エ。