第17問
A 株式会社(株券発行会社ではない。以下「A 社」という。)は、その発行株式の全 部について譲渡による取得に取締役会の承認を要する旨、定款で定めているが、A 社が相続人に対してその取得したA 社株式をA 社に売り渡すことを請求できる旨 の定款規定は存在しない。 A 社を弟の専務X1 とともに創業し、A 社の発行済株式の分の (以下「甲株 式」という。)を保有する社長甲は、甲とZ (故人。甲と婚姻関係を有したことはな い。)との間で出生した長女であるY に「その所有に属する遺産全部を遺贈する」旨 の自筆遺言証書を作成した。甲の死後、甲の遺言書が自宅で発見され、家庭裁判所 で甲の長男X2 (亡妻との間の子)の立ち会いの下、検認の手続が行われた。甲の子 はX2 とY の 名だけである。 甲 X2 Y 甲の妻 (故人) X1 A 社株式 (甲株式) Z (故人) この場合、甲株式の法律関係に関する記述として最も適切なものはどれか。な お、遺言執行者の指定、推定相続人の廃除及び相続人と受遺者間の合意はいずれも 存在せず、甲株式以外の相続財産、相続債務、寄与分及び特別受益についても考慮 しないものとする。 DKJC-1E
- ア X2 は、Y に対して遺留分減殺請求権を行使すれば直ちに、甲株式のうち、自 らの遺留分を保全するのに必要な限度の株式数を単独で取得することができる。
- イ X2 は、遺留分減殺請求により甲株式につき権利を取得した場合、Y の同意を 得たうえで、権利行使者をX2 と指定してA 社に通知すれば、単独で株主権を 行使することができる。
- ウ Y が甲株式についての権利を取得するためには、その取得についてA 社に承 認の請求を行い、A 社取締役会による承認の決定を得ることが必要である。
- エ Y に対して、X1 は相続財産の分の 、X2 は相続財産の 分の の割合で、 各自遺留分減殺請求権を行使することができる。 DKJC-1E
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正解:イ
解答:イ
全部包括遺贈と遺留分減殺請求、株式の共有(準共有)と権利行使に関する問題(H27当時=遺留分減殺請求の旧規律)。甲の相続人は子X2とY(X1は弟であり相続人ではない)。Yへの全部包括遺贈に対し、X2が遺留分を有する。
- ア(×):遺留分減殺請求権を行使しても「直ちに」「自らの遺留分保全に必要な株式数を単独で取得」できるわけではない。減殺の結果、対象財産(甲株式)はX2とYの準共有となり、単独取得には至らない。
- イ(○):減殺請求により甲株式について権利を取得した場合、株式は準共有となるため、共有者は権利行使者1人を定めて会社に通知しなければ株主権を行使できない(会社法106条)。Yの同意を得てX2を権利行使者と指定しA社に通知すれば、X2は単独で株主権を行使できる。正しい。
- ウ(×):相続による株式の取得(一般承継)は、譲渡制限株式であっても取締役会の譲渡承認の対象とならない。Yが取得するのにA社の承認決定は不要。
- エ(×):X1は甲の相続人ではなく遺留分権利者でもないため、X1が遺留分減殺請求権を行使できるとする点が誤り。また割合の記述も不正確。
よって イ。