第2問
以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX 株式会社以下「X 社」という。 の代表取締役甲氏との間で行われたものである。現在、X 社は、Y 株式会社以下 「Y 社」という。 との間で、Y 社の完全子会社であるZ 株式会社以下「Z 社」とい う。 の全株式の買取りに向けた交渉を行っている。この会話を読んで、下記の設問 に答えよ。 甲 氏:「今、わが社によるZ 社株式の買取りについての契約書を読んでいるので すが、見慣れない用語が飛び交っていて正直よく分かりません。」 あなた:「確かに、株式譲渡契約は、売買、賃貸、請負といった、企業間の商取引 とは異なる構造になっているので、慣れないと難しいですよね。これらの 契約には、 A や B 事項といった C 系の概念が用 いられており、 D 系に属する日本にはなじみにくいところがあり ます。」 甲 氏:「まず、クロージングとは何でしょうか。」 あなた:「取引の実行のことですね。通常、契約書を締結してから、取引を実行す るまでに間隔が空くので、クロージングという概念がでてきます。株式譲 渡の場合でいうと、売主から買主への株主権の移転と買主から売主への株 式譲渡代金の支払ということになります。」 甲 氏:「なるほど。 A とはどういうことでしょうか。」 あなた:「株式譲渡の場合だと、契約の一方当事者が、相手方当事者に対し、株式 やその株式を発行している株式会社の状況などについて、契約書締結時や クロージング時などの一定の時点において、一定の事項が真実かつ正確で あることを A するものです。今回の契約書ですと、Y 社が御社 に対して、Z 社において未払い残業代がないことなどを A してい ます。」 甲 氏:「難しいですねえ。 B 事項とは何でしょうか。」 あなた:「契約の一方当事者が、相手方当事者に対し、一定の行為を行う、又は行 わないことを約束し、又はその義務を負うことです。大きく分けてクロー ジング前のものとクロージング後のものがあります。今回の契約書です と、Y 社がクロージングまで、Z 社を適切に経営していくことなどがこれ に該当します。」 DKJC-1E 2 甲 氏:「やっぱり、難しいですねえ。」 あなた:「うまく説明できなくてすみません。これらを理解するには、 A や B 事項に違反した場合にどういう効果が発生するのかを考える と分かりやすいかもしれません。まず、クロージング前に A 違反 や B 事項違反が発覚した場合には、一方当事者が違反した当事者 に対し、①取引の実行拒否、②契約の解除及び③損害の補償請求を求める ことができると契約書に定めることが多いです。他方、クロージング後に 違反が発覚した場合については、①から③までのうち、 E のみ認 められると契約書に定めることが多いです。」 甲 氏:「なるほど。ようやく理解できました。買主である当社としては、契約締 結後に取引を取り止めたい事由や契約を解除したい事由、Y 社に損害を 補償してもらいたいと考えるケースについてY 社の A や B 事項として契約書に定めておけばいいわけですね。」 あなた:「そのとおりです。」
設問1
会話の中の空欄A、B及びEに入る語句の組み合わせとして最も適切なものは どれか。
- ア A:誓約 B:表明・保証 E:②契約の解除
- イ A:誓約 B:表明・保証 E:③損害の補償請求
- ウ A:表明・保証 B:誓約 E:①取引の実行拒否
- エ A:表明・保証 B:誓約 E:③損害の補償請求
設問2
会話の中の空欄C及びDに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれ か。
- ア C:英米法 D:大陸法
- イ C:国際法 D:国内法
- ウ C:私法 D:公法
- エ C:手続法 D:実体法 DKJC-1E
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正解: 設問1 エ 設問2 ア
解答:設問1=エ、設問2=ア
株式譲渡契約(M&A契約)に特有の概念を問う問題。会話中の定義から、A=一定の事項が真実かつ正確であることを述べる概念、B=一定の行為をする/しないことを約束する概念を判別する。
設問1(答:エ) A:表明・保証 B:誓約 E:③損害の補償請求
- Aは「株式や会社の状況などについて、一定時点で一定事項が真実かつ正確であることを述べる」ものなので表明・保証(representations and warranties)。
- Bは「一定の行為を行う/行わないことを約束し、義務を負う」ものなので誓約(コベナンツ)。
- クロージング後に違反が発覚した場合、取引はすでに実行済みで①実行拒否は不能、②解除も実務上認めないのが通常で、認められるのは③損害の補償請求のみ。
- よって組み合わせはエ。A・Bが逆のア・イ、Eが①のウは誤り。
設問2(答:ア) C:英米法 D:大陸法
- 表明・保証や誓約は英米のM&A実務に由来する概念であり、**英米法(コモンロー)系の概念。一方、日本は大陸法(シビルロー)**系に属するためなじみにくい、という会話の文脈に合う。
- よってC=英米法、D=大陸法でア。国際法/国内法、私法/公法、手続法/実体法の対比はこの文脈に当たらず誤り。
よって 設問1=エ、設問2=ア。