第11問
C 株式会社(以下「C 社」という。)が、次のような状況にあることを前提として、 賃貸借契約に関し、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 C 社はX 氏の所有する倉庫を、倉庫兼事務所として使用するために平成年 (1990年)月日から年ごとに都度合意して賃貸借契約を更新し、賃借してい る。しかし、賃料が近隣の相場より高く、C 社の経営状態を圧迫しているために、 よりコスト負担の少なくなる方策を検討している。なお、本件賃貸借契約におい て、C 社は賃料カ月分相当額を「保証金」との名目でX 氏に預けている。また、 来年(平成22年(2010年))月末には、更新の時期を迎える。
- ア C 社は、X 氏の了承を得て倉庫に備えつけた汎用的な建具を残して引越費用 を削減したいとしても、C 社とX 氏間の賃貸借契約に特段の定めがない場 合、X 氏から「残しても良い」旨の同意がない限り、C 社は入室した当初と同様 の状態にするためのコストを負担しなければならない。
- イ 現在のC 社近隣の賃料相場と比べてC 社の賃料が著しく高くなっている場 合、C 社が支払っている現在の賃料を下げる方法には、X 氏と交渉することの ほか、法律に基づき、C 社はX 氏に対し裁判を起こして賃料を下げるように 請求することもできる。
- ウ 引越しするには、次の賃貸借契約締結の際に保証金を引越先のオーナーへ支 払うこととなっているが、C 社は、建物明渡後に返還される保証金から未払い 賃料を相殺するようにX 氏に請求することができるので、期間満了時まで賃 料の支払いを止めて、引越先の保証金を準備することができる。
- エ 本件賃貸借契約の契約書には、更新について「更新料を支払った場合に更新 できる」と規定があるだけで、特段の記載がない場合、C 社が更新時期のカ 月以上前にX 氏に対して更新をしない旨を通知しないときは、自動的に年 間契約が更新される。 ― 16― ◇M5(557―129)
▼ 解答・解説を見る
正解:イ
解答:イ
〔リード〕建物(倉庫兼事務所)の賃貸借に関する問題。借地借家法32条1項は、建物の借賃が近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、当事者は将来に向かって借賃の増減を請求できる(借賃増減請求権)と定める。協議が調わないときは調停・訴訟により裁判所が相当な賃料額を定めることができる。
- ア(×):原状回復の特約や同意がない場合に、賃借人が常に入室当初と同様の状態に戻すコストを負担しなければならないとは限らない。賃借人は通常の使用収益によって生じた損耗等について原状回復義務を負わず、また有益費・必要費の償還や造作買取りの問題もある。「同意がない限り入室当初と同様の状態にするコストを負担しなければならない」と断定する点が不適切。
- イ(○):賃料が近隣相場に比べて著しく高くなっている場合、X氏と交渉するほか、借地借家法32条の借賃減額請求権に基づき、協議が調わなければ裁判(調停前置を経て訴訟)により賃料の減額を請求できる、という説明は正しい。
- ウ(×):保証金から未払賃料を相殺すること等を理由に「期間満了時まで賃料の支払いを止めてよい」とするのは誤り。賃料支払義務は存続し、一方的に支払を止めれば債務不履行(契約解除事由)となる。保証金の充当・精算は明渡し時に問題となるもので、賃料不払いを正当化しない。
- エ(×):更新について「更新料を支払った場合に更新できる」とのみ定めがあり特段の記載がない場合に、「更新拒絶通知をしないと自動的に契約が更新される」と断定するのは誤り。本件は期間満了ごとに都度合意して更新してきた賃貸借であり、当然に法定更新で一定年数自動更新されるという結論は導けない。
よって イ。