経営法務 H21年度 第7問

第7問

A 社の代表取締役社長からの次の質問に対する回答として最も適切なものを下記 の解答群から選べ。 【A 社の代表取締役社長からの質問】 「当社は、平成16年(2004年)月に設立され、設立時から苛性ソーダの製 造・販売を主な事業としていますが、このたびB 社から『貴社の苛性ソーダの 製造方法について弊社の保有する苛性ソーダの製造方法に関する特許権に抵触 するので直ちに製造・販売を中止し、現在市場に出回っている苛性ソーダを回 収するように。』との警告書を受け取りました。当社内で調べたところ、この警 告書に記載されたB 社の保有する特許権の番号から特許出願がなされたのは 平成17年(2005年)月であることが分かりました。この警告書に対してどの ように対処すればよいでしょうか。」 ― 10― ◇M5(557―123)

  1. B 社の特許権に係る特許出願の時点で、すでに御社がB 社の特許と同一の 方法により苛性ソーダの製造を行っていたことを立証できれば、B 社の特許権 が存続していても将来にわたり苛性ソーダの製造方法を実施する権利がありま す。
  2. B 社の特許権は、平成17年(2005年)月に出願されており、まだ特許出願 日から20年を経過していないため、現在でも有効に存続していることから、 すぐに製造・販売を中止し、市場に出回っている御社の苛性ソーダを回収しま しょう。
  3. 御社が用いている苛性ソーダの製造方法が、B 社の保有する特許権に係る特 許発明の技術的範囲に属するか否かの判定を特許庁に請求するのがよいと思い ます。
  4. 御社は、B 社の特許権に係る特許出願前から苛性ソーダの製造方法を実施し ていたので、B 社の特許権に係る特許発明は特許出願前に公然実施された発明 に該当するとして特許無効の審判を裁判所に請求して、B 社とのライセンス交 渉を行うことがよいと思います。 ― 11― ◇M5(557―124)
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正解:

解答:ア

〔リード〕A社は平成16年(2004年)設立時から苛性ソーダの製造・販売を行っており、B社の特許出願は平成17年(2005年)。すなわちA社はB社の特許出願前から、その発明の実施である事業を日本国内で行っていた。この場合、A社には**先使用権(特許法79条)**が認められうる。先使用権が成立すれば、B社の特許権が有効に存続していても、A社はその実施または準備をしていた発明・事業の範囲内で、継続して無償で実施を続ける通常実施権を有する。

  • ア(○):B社の特許出願時点で、すでにA社がB社特許と同一の方法で製造していたことを立証できれば、先使用権(特許法79条)により、特許権が存続していても将来にわたり実施する権利がある、という説明は正しい。
  • イ(×):特許権が存続期間内で有効だからといって直ちに製造中止・回収すべきとするのは誤り。先使用権の成否を検討すべきで、A社には先使用権が認められる余地がある。
  • ウ(×):判定(特許法71条)の請求自体は可能だが、本問の事情では先使用権の主張が最も適切な対処であり、技術的範囲に属するか否かの判定請求が最良の助言とはいえない。また判定には法的拘束力がない。
  • エ(×):先使用に当たる事実があっても、それは当然に「特許出願前に公然実施された発明」として無効理由になるとは限らず、また無効審判は特許庁に請求するもので「裁判所」ではない。請求先も誤り。

よって

#会社の種類・設立#株式・機関#特許・実用新案#意匠・商標

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