第6問
Y市で古くから製麺業を営むA製麺所は、年ほど前からその材料と製法に工夫 を凝らした生麺を「〇〇〇」という商品名で売り出し、A製麺所の店先や、Y市の スーパーで販売をしていたが、商標「〇〇〇」については商標登録出願をしていな かった。A製麺所の生麺「〇〇〇」は、今年に入って、ようやくY市でも味と食感に 優れたおいしい生麺として人に知られるところとなり、売れ行きも好調になってき ていた。 そのような矢先突然、株式会社B 製麺所(以下、「B 製麺所」という。)というとこ ろから、A製麺所のものと同じ商標「〇〇〇」で商品区分・第30類について商標権 を取得したので、A製麺所の商標「〇〇〇」の使用を直ちに中止して欲しい旨の内容 証明が送られてきた。 そこで、A製麺所から相談を受けたあなたが商標公報を見たところ、確かにB 製 麺所は生麺、生そばを含む商品区分・第30類について商標「〇〇〇」について商標 権を取得しているが、出願日はA製麺所が生麺を商標「〇〇〇」で売り出した日から 年後であることが判明した。 A製麺所に対するアドバイスとして最も適切なものはどれか。
- ア A製麺所が、商標「〇〇〇」をB 製麺所の登録出願日よりも先に使用を開始して いたといっても、わが国は先願主義によっており、先に出願され、商標権が取得 された以上、B 製麺所の登録商標と同一のA製麺所の商標使用は中止せざるを得 ないと思います。
- イ A製麺所の商標「〇〇〇」を付した生麺は、味と食感に優れているということ で、今ではY市で知られた存在となっていることから、周知商標として保護さ れ、そのまま使用できるはずです。
- ウ A製麺所は、B 製麺所の商標登録出願日よりも前に商標「〇〇〇」の使用を開始 していたのですから、B 製麺所の登録商標「〇〇〇」は当然無効であるので、商標 登録無効審判を提起できるはずです。
- エ A製麺所は、B 製麺所の商標登録出願日よりも前に商標「〇〇〇」の使用を開始 していたのである以上、当然使用する権利があるはずですから、その旨の回答を したらよいでしょう。 ― 8― ◇M5(023―111)
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正解:ア
解答:ア
〔リード〕未登録商標を先に使用していたが、他社が後から同一商標を登録した事例。日本の商標法は先願主義を採るため、登録した者が商標権者となる。A製麺所の使用開始がB製麺所の出願日より前であっても、出願日時点で「需要者の間に広く認識されている(周知)」とまではいえないため、先使用権(商標法32条)も周知商標としての保護も主張しにくい。
- ア(○):わが国の商標法は先願主義を採用しており、先に出願・登録した者が商標権を取得する。A製麺所が先に使用していても、登録されていない以上、B製麺所の登録商標と同一の使用は中止せざるを得ないという助言は適切である。
- イ(×):商標が「周知商標」として未登録のまま保護される(先使用権が認められる)には、B製麺所の出願時点で当該商標がA製麺所の商品表示として需要者の間に広く認識されている必要がある。本件は「今年に入ってようやくY市で知られるところとなった」段階であり、出願日(売り出しから数年後)時点で周知といえる事情は乏しい。「周知商標として保護され、そのまま使用できる」と断定するのは適切でない。
- ウ(×):先に使用していたという事実だけでは、B製麺所の登録商標が当然に無効となるわけではない。先願・先使用に関する登録無効事由(周知性等)を満たさなければ無効審判で覆すことはできず、「当然無効」「無効審判を提起できるはず」とする助言は不適切。
- エ(×):先に使用していたというだけで当然に使用する権利(先使用権)が認められるわけではない。先使用権の成立には出願時の周知性が必要であり、それを欠く本件で「当然使用する権利がある」と回答するのは不適切。
よって ア。