第17問
株式上場にあたり証券取引所が審査を行う基準は形式基準と実質基準のつから 構成される。形式基準は、上場を申請するにあたって最低限クリアしなければなら ない一定の数値や事実を要件として設定されている。これに対して実質基準は、規 則上は定性的な項目を示し、具体的な考え方を「手引き」や「ガイドライン」、「Q & A」の形で公表している。 実質基準に関連する下記の設問に答えよ。 I
設問1
L 東京証券取引所の上場審査において、実質基準の「企業経営の健全性」の項目で は、新規上場申請者の企業グループとその関連当事者との間に取引が発生してい る場合に、取引の合理性、取引条件の妥当性、取引の開示の適正性等を確認する としている。 新規上場申請会社I以下「会社」という。Lと関連当事者との間で行われた取引に 関する審査上の判断として、最も適切なものはどれか。
- ア 会社が、会社の役員I関連当事者Lに対し報酬の支払いを行っていたとして も、その報酬について財務諸表上で関連当事者との取引として開示を行わない ことは問題はない。
- イ 会社が、会社の役員I関連当事者Lの所有する不動産を賃借しているが、直接 の契約の相手方は外部の仲介不動産業者であるため、財務諸表上で関連当事者 との取引として開示を行わないことは問題はない。
- ウ 会社が、会社の役員を退職したオーナーI関連当事者Lを顧問に招聘し顧問料 を支払う場合は、期待する役割やその達成状況、顧問料の算定根拠について確 認できなくても問題はない。
- エ 会社が所有するビルの空きスペースを、会社の役員I関連当事者Lが個人事業 として営む飲食店に無償貸与することは、空きスペースでもあり問題はない。 DKJC-1E I
設問2
L JASDAQ グロースの上場審査において下記の 書きの事項を確かめるのは、 JASDAQ における有価証券上場規程第10 条第 項に掲げられている実質基準の 主にどの項目に該当するか。最も適切なものを下記の解答群から選べ。 競争優位性及び事業環境等の外部環境や内部環境の適切な分析を踏まえた、 客観性の認められる事業計画I中長期事業計画等Lを有しているか。 V解答群X
- ア 企業行動の信頼性
- イ 企業の成長可能性
- ウ 企業の存続性
- エ 健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立
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正解: 設問1 ア 設問2 イ
解答:設問1=ア、設問2=イ
設問1(関連当事者取引の審査)
〔リード〕実質基準「企業経営の健全性」では、関連当事者取引について、①取引の合理性(そもそも行う必要があるか)、②取引条件の妥当性(第三者と同等の条件か)、③開示の適正性(財務諸表で適切に開示されているか)を確認する。役員報酬は本来の職務遂行の対価であり、別途定められた様式で開示されるため、関連当事者取引としての開示対象から除かれる扱いがある点に注意する。
- ア(○):会社が役員に支払う報酬は、役員給与として別途開示されるもので、財務諸表上の「関連当事者との取引」として重ねて開示しなくても問題とされない。審査上の判断として最も適切。
- イ(×):役員所有の不動産を実質的に賃借しているのに、形式上の契約相手が仲介業者だからといって関連当事者取引の開示を行わないのは、取引の実質を隠すもので開示の適正性を欠く。問題あり。
- ウ(×):退職オーナー(関連当事者)を顧問に招き顧問料を支払う場合、期待する役割・達成状況・顧問料の算定根拠を確認できなければ取引の合理性・条件の妥当性を検証できず、問題がある。
- エ(×):会社所有ビルの空きスペースを役員個人の飲食店に「無償」貸与するのは、取引条件の妥当性(会社利益の流出)の観点から問題がある。空きスペースであっても許容されない。
設問2(JASDAQグロースの実質基準)
〔リード〕問われているのは「外部・内部環境の分析を踏まえた客観性ある中長期事業計画を有しているか」という審査項目。JASDAQグロースは成長性を重視する市場であり、事業計画の合理性・客観性は「企業の成長可能性」を確かめるための項目に該当する。
- ア(×):「企業行動の信頼性」は適時開示やコンプライアンス等に関する項目で、事業計画の客観性を確かめる項目ではない。
- イ(○):客観性のある中長期事業計画の有無は、将来の成長を見込めるかを審査する「企業の成長可能性」の項目に該当する。最も適切。
- ウ(×):「企業の存続性」はJASDAQスタンダード等で問われる継続企業としての存続可能性に関する観点で、グロースの成長性審査項目とは異なる。
- エ(×):「健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立」はガバナンス・内部管理に関する項目で、事業計画の客観性を直接確かめる項目ではない。
よって 設問1=ア、設問2=イ。