経営法務 H22年度 第16問

第16問

X 社の代表取締役甲の母親乙は、不動産等の資産を有しており、X 社が自社工場 建設などの事業資金を必要とした10年前に、X 社のY 銀行からの11億円の借り 入れについて、乙所有の不動産に抵当権を設定して、物上保証人兼連帯保証人と なった。甲はこの借り入れについて、連帯保証人となっている。X 社は10年間は 返済を毎月履行してきたが、最近、業績悪化のため返済が滞りがちである。 これらの状況を前提に、以下の選択肢ア~エのうち最も適切なものはどれか。

  1. Y 銀行が、月々の返済について11年目になって初めて乙に支払うよう請求し てきた場合、乙は自らの保証債務に関する消滅時効を援用して、Y 銀行の請求を 拒否することができる。
  2. Y 銀行から乙が支払わないと乙の不動産の競売をする旨の通知を受けた場合、 乙は、X 社の有する工場等の資産に対する執行を完了するまで、Y 銀行の請求を 拒絶することができる。
  3. Y 銀行から請求を受けた際には、甲乙間で分のずつ負担をする取り決めが 甲と乙の話し合いによりなされている場合、乙はY 銀行からの支払いの請求に 対して分のの部分のみに応ずればよい。
  4. Y 銀行に対する支払債務を乙が履行する場合、乙が有する不動産を売却又は競 売してその金員をもってY 銀行に返済した上で、さらに債務の残額があるとき には、この残額も支払う義務がある。 ― 20― ◇M5(295―136)
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正解:

解答:エ

〔リード〕乙はY銀行に対し、自己所有不動産に抵当権を設定した「物上保証人」であると同時に、X社の借入債務の「連帯保証人」でもある。連帯保証人には催告の抗弁権・検索の抗弁権がなく(民法454条)、債権者は主債務者に請求せずいきなり連帯保証人に全額請求できる。物上保証としての担保不動産の換価額が債務に満たなければ、連帯保証人として残額についても弁済義務を負う。

  • ア(×):主債務者X社が10年間返済を履行してきており、主債務の消滅時効は完成していない。連帯保証債務は主債務に付従し、乙が「保証債務の消滅時効」を援用して請求を拒める状況にない。誤り。
  • イ(×):乙は連帯保証人であり、検索の抗弁権を有しない。X社資産への執行完了まで請求を拒絶できるとする点が誤り。
  • ウ(×):甲乙間で2分の1ずつ負担する旨の内部的取り決めがあっても、それは保証人間の内部関係にすぎず、債権者Y銀行には対抗できない。乙はY銀行に対し全額の支払義務を負い、2分の1のみで足りるとはいえない。誤り。
  • エ(○):乙が物上保証として不動産を売却・競売し弁済しても、なお債務残額があるときは、連帯保証人として当該残額も支払う義務がある。物上保証人兼連帯保証人の地位を正しくとらえており、最も適切。

よって

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