第10問
次の輸入関税と生産補助金の効果に関する文章を読んで、経済厚生分析の説明と して、最も不適切なものを下記の解答群から選べ。 下図は、輸入競争財市場(たとえば農産物)を描いたものである。いま、当該財の 国内需要曲線がDD で、国内供給曲線がS1S2で描かれている。ここで、自国は 「小国」であり、当該財の国際価格をPf とする。自由貿易下での消費量はQ1、生産 量はQ2であり、輸入量は(Q1-Q2)に等しい。 ここで、当該財の輸入にT の関税を賦課した場合、国内価格はPd(=Pf +T)に 上昇する。この結果、消費量はQ3に減少し、生産量はQ4に増加する。他方、生 産補助金を交付することで輸入関税の場合と同じ生産量Q4を実現することも可能 である。このとき、生産補助金の交付により、国内供給曲線はS1S2からS3S4に 平行移動する。 ― 14― ◇M1(557―16)
- ア 生産者に対する補助金交付額は、四角形S1HIS3に相当する。
- イ 生産補助金交付時の経済余剰の損失は、三角形EFG になる。
- ウ 生産補助金交付時の生産者余剰は、三角形PfIS3に当たる。
- エ 輸入関税下における経済余剰の損失は、三角形EFG と三角形HIJ の和に なる。
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正解:イ
解答:イ(最も不適切なもの)
〔リード〕小国の輸入競争財市場における関税と生産補助金の比較がテーマ。本問は「最も不適切なもの」を選ぶ点に注意する。
ポイントは両政策の死荷重(経済余剰の損失)の違いである。 ・輸入関税は国内価格を Pd(=Pf+T)に引き上げるため、(i)生産が過大になる「生産の歪み」三角形と、(ii)消費が過小になる「消費の歪み」三角形の2つの死荷重が生じる。 ・生産補助金は供給曲線を S₁S₂ から S₃S₄ へ下方シフトさせ生産量 Q₄ を実現するが、国内消費者が直面する価格は国際価格 Pf のままなので消費は歪まない。したがって死荷重は「生産の歪み」三角形のみで、関税より損失が小さい。
各選択肢の検討:
- ア(適切):生産補助金の交付額は、補助単価×生産量に相当する四角形 S₁HIS₃ で表される。正しい。
- イ(不適切=正解):生産補助金では消費は国際価格 Pf のまま歪まないため、死荷重は「生産の歪み」三角形のみであり、消費の歪みを含む三角形EFGには一致しない。三角形EFGを生産補助金の経済余剰の損失とする記述は誤り。これが最も不適切。
- ウ(適切):生産補助金交付時、生産者は実質的に Pd まで価格を受け取れるが、消費者価格は Pf のまま。生産者余剰の純増分は三角形 PfIS₃ で表され、整合的。
- エ(適切):輸入関税下の死荷重は「生産の歪み」三角形と「消費の歪み」三角形の和、すなわち三角形EFGと三角形HIJの和になる。関税の厚生損失の標準的説明であり正しい。
よって、最も不適切なものは イ。