第28問
以下は、雑貨を販売するA店を経営するX氏と中小企業診断士(以下、「診断士」 という。)との間で行われた会話である。この会話と下表に基づき、下記の設問に答 えよ。 A店のある月の損益計算書 売上高 200 万円 売上原価 150 万円 固定費 人件費 20 万円 その他の経費 25 万円 営業利益 5万円 X 氏:「最近の物価高を反映して、アルバイト従業員の賃金を上げようと考えて います。うちの店の従業員はすべてアルバイトなので、時給を上げた分、 そのまま人件費の増加になります。健全な経営をするために、どのような ことを考えることが必要でしょうか。」 診断士:「営業利益が出せるように計画を立てることを考えましょう。人件費が増 加するということは、損益分岐点売上高が上がることになります。時給は どのくらい上げる予定ですか。」 X 氏:「時給は10 %上げようと考えています。店を運営する作業は変わらない のでシフトは変えないため、総労働時間数は変わらない予定です。営業赤 字にならないように、損益分岐点売上高を下回らない売上高を確保するこ とが必要なのですね。」 診断士:「はい、ただし、店舗の人時生産性を高めて損益分岐点売上高を下げるこ とも検討してください。」
設問1
会話の中の下線部①の損益分岐点売上高について、人件費を10 %上げた際の A店の損益分岐点売上高として最も適切なものはどれか。ただし、ここでは売上 原価率、固定費のその他の経費は一定で変化しないものとする。
- ア 8万円
- イ 180 万円
- ウ 188 万円
- エ 208 万円
- オ 220 万円
設問2
会話の中の下線部②の人時生産性を高める取り組みに関する記述の組み合わせ として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。 a 従業員を教育してスキルアップを図り、総従業員数は変えずに、同じ仕事量 をするのにかかる作業時間を短くする。 b IT 機器を導入して作業の自動化を図り、総従業員数は変えずに、1人当た りの作業時間を短くする。 c 品揃えSKU 数を増やして、総作業時間を変えずに、1SKU 当たりの管理作 業時間を減らす。 d 従業員数を増やして、総作業時間を変えずに、1人当たりの作業時間を短く する。
- ア aとb
- イ aとd
- ウ bとc
- エ bとd
- オ cとd
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正解: 設問1 ウ 設問2 ア
解答:設問1=ウ、設問2=ア
設問1(解答:ウ)
売上原価を変動費とみなし、人件費とその他経費を固定費として損益分岐点売上高(BEP)を求める。BEP=固定費 ÷ 限界利益率。
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変動費率(売上原価率)=150万 ÷ 200万 = 0.75 → 限界利益率=1 − 0.75 = 0.25。
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人件費を10%引上げ:20万 × 1.1 = 22万円。
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固定費合計=人件費22万 + その他経費25万 = 47万円。
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BEP=47万 ÷ 0.25 = 188万円。
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ア(×):8万円。値が小さすぎ、限界利益率での割戻しをしていない。
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イ(×):180万円。人件費引上げ前(固定費45万)のBEP=45÷0.25=180万円であり、引上げ後ではない。
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ウ(○):188万円。引上げ後の固定費47万を限界利益率0.25で割った値で正しい。
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エ(×):208万円。根拠のない値。
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オ(×):220万円。根拠のない値。
設問2(解答:ア)
人時生産性=産出(粗利益・付加価値や仕事量)÷ 総労働時間。これを高めるには、同じ産出をより少ない労働時間で達成する(分母を減らす/効率化する)ことが基本。
- a(○):教育でスキルアップし、総従業員数を変えずに同じ仕事量を短い作業時間で行う。投入労働時間が減り人時生産性が向上する。
- b(○):IT機器導入で自動化し、総従業員数を変えずに1人当たり作業時間を短縮。投入時間が減り人時生産性が向上する。
- c(×):SKU数を増やすと管理対象が増え、総作業時間を変えずに1SKU当たり管理時間を減らしても、産出(粗利)が比例して増える保証はなく、人時生産性向上に直結しない。むしろ作業負荷増のおそれ。
- d(×):従業員数を増やして総作業時間を変えずに1人当たり時間を短縮するのは、単なる人員配分の変更で総投入時間は不変。産出が増えなければ人時生産性は向上しない。
人時生産性を高める取り組みは a と b。よって ア。