事案の概要データ
| 公表日 | 2026年10月23日「個人情報を含む情報を記録した外付けハードディスクの紛失について」 |
|---|---|
| 公表主体 | 東京都水道局(経理部管理課) |
| 発覚日 | 令和8年10月2日(金) |
| 発覚の経緯 | 「職員がHDDの空き容量を確認するため、施錠管理されたキャビネットを解錠したところ」、HDD4台の収納箱だけが残り、「いずれもHDD本体が入っていないことが発覚した」 |
| 発覚から公表まで | 21日 |
| 紛失したもの | 外付けハードディスク4台 |
| 記録されていた情報 | 「当局が所有する用地の管理、活用に関する資料等」 |
| 個人情報の件数 | 1,932名分(大部分は氏名のみ。一部、住所や電話番号等あり) |
| 内訳 | 企業・国・自治体関係者 1,037名、地域住民等 895名 |
| 最後に存在を確認した日 | 公表文に記載なし |
| どう無くなったか | 公表文に記載なし(発覚の経緯のみ記載) |
| 暗号化・パスワード保護の有無 | 公表文に記載なし |
| 捜索状況 | 「その後、執務室内の捜索等を継続して行っているが、現時点で発見できていない」 |
| 警察への届出 | 公表文に記載なし |
| 二次被害 | 「なお、記録情報について、現時点で流出等の二次被害は確認されていません」 |
| 原因 | 公表文に記載なし |
| 再発防止策 | 「今後、このようなことがないよう、再発防止とより一層の個人情報等の適切な管理を徹底してまいります」「今回の事故を受けて、改めて記録媒体の管理を厳正に行うよう、職員に対し周知徹底した」 |
| 対象者への対応 | 「個人情報の該当者に対して連絡を取り、紛失について謝罪及び説明を行った」 |
| 問い合わせ先 | 水道局経理部管理課 03-5320-6388(直通) |
図解:この事故の構造
何が起きたのか
東京都水道局は2026年10月23日、個人情報を含む情報を記録した外付けハードディスク4台を紛失したと公表しました。
発覚は令和8年10月2日(金)。公表文によれば、職員がHDDの空き容量を確認するため、施錠管理されたキャビネットを解錠したところ、HDD4台の収納箱だけが残り、「いずれもHDD本体が入っていないことが発覚した」とのことです。
記録されていたのは「当局が所有する用地の管理、活用に関する資料等」。個人情報は1,932名分で、大部分は氏名のみ、一部に住所や電話番号等が含まれます。内訳は企業・国・自治体関係者1,037名、地域住民等895名です。
水道局は執務室内の捜索を継続していますが、現時点で発見できていません。記録情報について、流出等の二次被害は確認されていないとしています。
いつ無くなったのか、最後に存在を確認したのはいつか、暗号化されていたのか、警察に届け出たのか——これらはいずれも公表文に書かれていません。
「収納箱だけが残っていた」という状況
この事案で印象的なのは、発覚のしかたです。箱はある。中身がない。しかも4台とも。
施錠されたキャビネットの中で、です。
公表文は、この状況についてそれ以上の説明をしていません。鍵は誰が持っていたのか。いつから無かったのか。4台が同時に無くなったのか、別々なのか。何も書かれていません。
書けない事情は想像できます。分かっていないからです。 最後に存在を確認した日が記録されていなければ、「いつの間にか無くなっていた」としか言えません。
そして、これが紙や記録媒体の管理で最も多い状態です。静岡県の生徒指導要録621人分(本サイト掲載)も、いつ無くなったか特定されていません。
ここから中小企業が持ち帰るべきことは、「鍵をかけること」と「管理すること」は違うという点です。
施錠されたキャビネットは、確かに施錠されていました。それでも中身は無くなりました。鍵は、持っている人には何の障害にもなりません。 そして、持っている人が複数いて、誰が持っているかの記録がなければ、絞り込みもできません。
必要なのは、鍵に加えて3つの記録です。
①何が入っているかの一覧。 キャビネットの扉の内側に貼った紙で十分です。「外付けHDD 4台(No.1〜4)、用地関係資料」。
②出し入れの記録。 日付、何を、誰が、戻したか。ノート1冊です。
③鍵を持っている人の一覧。 名前と本数。退職・異動時に回収したらチェックを入れます。
この3つがあれば、今回のような状況でも「最後に出したのは誰か」「いつまであったか」が分かります。無くなったことより、無くなった時期が分からないことのほうが、対応を難しくします。
暗号化されていたかが書かれていない
公表文には、HDDが暗号化されていたかどうかの記載がありません。 これは、読む側にとって最も知りたい情報の1つです。
なぜなら、暗号化されていれば、紛失しても中身は読めないからです。パスワードをかけていれば、拾った人が中を見ることはできません。
逆に、暗号化されていなければ、USBケーブルで別のパソコンにつなぐだけで、1,932名分の氏名と一部の住所・電話番号が読めます。
書かれていないということは、暗号化されていなかった可能性も、確認できていない可能性もあります。どちらにせよ、公表文としては不足です。
本サイトでは、紛失事案を扱うたびに同じことを書いてきました。「暗号化していれば防げたケースが大半です」。これはサイトの分類説明にも書いている一文です。
中小企業がいまできることは、具体的です。
①USBメモリと外付けHDDに、パスワードをかける。 WindowsならBitLocker To Go、Macならディスクユーティリティの暗号化。どちらもOSの標準機能で、追加費用はかかりません。設定は5分程度です。
②そもそも持ち出さない。 クラウドストレージに置けば、USBメモリに入れて運ぶ必要がありません。
③持ち出すなら、台帳をつける。 誰が、いつ、何を入れて持ち出し、いつ戻したか。
そして、公表するときは暗号化の有無を書いてください。 「暗号化していたため、第三者が内容を閲覧することは困難です」と書ければ、対象者の不安は大きく減ります。書けないということは、守れていなかったということです。
なお、水道局は発覚(10月2日)から公表(10月23日)まで21日かかっています。この間に捜索を続け、対象者を特定し、個人情報の該当者に連絡を取り、謝罪と説明を行ったうえで公表しています。「探してから公表する」か「見つかる前に公表する」かは判断が分かれますが、対象者への連絡を先に済ませた点は記録しておきます。
時系列で見る経過
- (時期不明)外付けハードディスク4台が、施錠管理されたキャビネットから無くなる(最後に存在を確認した日は公表文に記載なし)
- 令和8年(2026年)10月2日(金)職員がHDDの空き容量を確認するためキャビネットを解錠したところ、収納箱だけが残り、HDD本体4台がいずれも入っていないことが発覚
- 2026年10月2日以降執務室内の捜索等を継続(現時点で発見できていない)
- (公表前)個人情報の該当者に対して連絡を取り、紛失について謝罪および説明を実施
- (公表前)改めて記録媒体の管理を厳正に行うよう、職員に対し周知徹底
- 2026年10月23日「個人情報を含む情報を記録した外付けハードディスクの紛失について」を公表(発覚から21日)
中小企業が学ぶべきポイント
- 施錠されたキャビネットでも中身は無くなる。鍵をかけることと管理することは違う。
- 鍵は、持っている人には障害にならない。誰が持っているかの記録がなければ絞り込めない。
- キャビネットの扉の内側に「何が入っているか」の一覧を貼る。
- 出し入れの記録をノート1冊でつける(日付・何を・誰が・戻したか)。
- 鍵を持っている人の一覧を作り、退職・異動時の回収にチェックを入れる。
- 無くなったことより、無くなった時期が分からないことのほうが対応を難しくする。
- USBメモリと外付けHDDはOSの標準機能で暗号化できる。追加費用はかからず5分で終わる。
- クラウドストレージを使えば、そもそも持ち出さなくて済む。
- 公表するときは暗号化の有無を書く。書けないということは守れていなかったということ。
- 対象者への連絡を済ませてから公表する、という順番もある。
出典・参考
- 個人情報を含む情報を記録した外付けハードディスクの紛失について(東京都水道局・2026年10月23日)
- 東京都水道局で個人情報を含む外付けHDD4台が施錠されたキャビネットから紛失(ScanNetSecurity)
本記事は、各組織の公表資料および報道をもとに、要点をわかりやすく整理したものです。 被害件数は「漏えいした可能性のある最大件数」として公表されている場合があり、実際に漏えいが確定した件数とは異なることがあります。 また、調査の進展により内容が変わる場合があります。正確な情報は必ず出典元の公式発表をご確認ください。