令和7年度 第2次試験問題 事例Ⅲ
与件文
【企業概要】
1C社は、1947年に創業、資本金5千万円、従業員数40名、年商約8億円の企業である。現在の主力製品は製紙用、産業用、建築用の紙パイプであり、販売先は包装資材メーカー数社である。
2C社は、製紙メーカーX社から製造技術の指導と原料紙の提供を受けて、上質紙・新聞紙などロール状に巻く製品の芯となる巻き取り用紙パイプの製造から始まり、感熱紙、インクジェット紙など各種製紙用の巻き取り用紙パイプに拡大してきた。原料紙は、現在もX社から安定的に仕入れることができている。
3その後、X社からの要請により、包装資材メーカーを通してX社へ販売されることとなった。さらに、包装資材メーカーが製紙用以外にも紙パイプの用途を広げたことにより、産業用、建築用への事業拡大の契機となった。
4産業用では、粘着テープ、農業用ポリフィルム、包装材など各種フィルムの巻き取り用として使われる。建築用は、紙パイプ内にコンクリートを流し込む型枠材として、またコンクリート施工時に配管用などの穴を開けておくための型枠材として使われており、コンクリート凝固後の抜き取りやすさが顧客から評価されている。
5ペーパーレス化などで紙需要は縮小傾向にある一方、食品用や医療用の製品の需要増加やサステナビリティ意識の高まりにより素材のプラスチックから紙への動きもあって、紙加工品のニーズが高まることが期待されている。C社製品の原料紙は現在ほとんどが再生紙であり、エンドユーザーが使用後は産業廃棄物処理業者を経由して製紙メーカーの原料となることから、C社は循環型社会醸成の一翼を担っているともいえる。C社としても、世界的な持続可能社会指向の中、紙の有効活用として紙パイプ需要の喚起を図ることを課題としている。
6C社経営者は、安定した人材確保のための今後の人件費増加や、さらにエネルギー費・資材高騰が続くと想定される中、製品の高付加価値化、コストダウンによる収益性強化を図ることが重要と考えている。
【生産の現状】
7C社の製造部門は、工場長以下、5つの製造ラインごとにライン長がおり、その下に作業者が配置されている。
8紙パイプ製造の主な工程は、以下の通りである。
①原料紙を帯状にカット
②原料紙に接着剤塗布
③原料紙を成型機にセット
④成型機で巻き取りながら一定の長さのパイプ状に成型
⑤乾燥
⑥仕様の長さに切断加工
⑦検品・梱包
⑧出荷
9生産形態は、顧客から依頼された仕様に基づいた受注生産であり、製品在庫はもたない。
10製紙用、産業用、建築用とも製品多様化が進んでいるとともに、プラスチックなど他素材から紙製品へのシフトが進む中で、C社でも製品アイテム数が増加している。一方で運送業者の2024年問題などによるドライバー不足もあり流通条件の制約が厳しくなっている中、出荷に間に合わせるための製造時間短縮が課題となっている。しかし、製造人員の人材不足もあり出荷に間に合わせるため深夜・早朝残業が増えている。その改善策として、繰り返し受注頻度が比較的多い一部の製品については見込み生産とし、敷地内に新たに倉庫を建設して製品在庫を保有することも検討しているが、経営者は新たな設備投資や資金繰りへの影響も懸念している。
11顧客の発注は、月末に次月の発注予定の提供があり、毎週末に次週の発注が確定される。C社の製造指示については、顧客からの確定した発注情報に基づき工場長が毎週末に次週の週次製造計画を作成しており、その計画を製造現場に設置しているホワイトボードに記載して製造指示を行う。製造リードタイムは2日間である。また、顧客からの仕様変更や特急受注が全受注件数の1割程度あり、突発的な製造計画の変更は紙のメモで作業担当者に指示され、そのたびに工程の混乱の要因となっている。
12各製造ラインにはベテラン作業者を配置していた。作業方法はベテラン作業者の経験と勘によるものが多く、そのベテラン作業者の高齢化が進んでおり、定年退職者が発生している中、技術やスキルの承継が必ずしもうまくいっておらず、原料紙の機械セットに際して立ち上がりロスによるムダも生じている。
13さらに、接着剤の塗布方法や成型機の巻き取り方法の相違による厚さや強度などの品質のバラツキが最近問題となっており、顧客からのクレームが増加している。納品後の顧客からのクレームに対しては、担当ライン長が対応し、作り直して再納品しているが、クレームや不適合品発生の記録、その原因追及、再発防止までは手が回っていない。
14原料紙仕入れは、作業者が不足を確認した際に発注するが、原料紙が不足した際の原料紙待ちによる作業停滞もしばしば発生している。
【新事業について】
15現在、C社では紙パイプの新事業について検討しており、比較的製品単価が高い食品用や医療用の紙パイプ製品への参入を模索している。従来と同じ紙パイプであり設備や工程に互換性はあるが、サイズや強度などについては、新たな顧客が求める厳密な品質基準に対応する必要があるなど、従来製品と異なるところもある。
設問
C社の(a)強みと(b)弱みについて、それぞれ60字以内で述べよ。
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(a)強み製紙・産業・建築用の幅広い紙パイプ製造技術と用途対応力を持ち、X社から原料紙を安定的に調達できる点。(50字)
(b)弱みベテランの経験と勘に依存し標準化・技術承継が進まず、品質のバラツキやクレーム、原料紙欠品による停滞が生じている点。(57字)
事例Ⅲの定石:強みは「技術・QCDで評価される良い点」、弱みは「生産現場の問題点(属人化・標準化不足・品質・在庫管理)」を拾う。
- 強み…【企業概要】より、製紙→産業→建築用へと用途を広げた幅広い製造技術・対応力、建築用の抜き取りやすさへの評価、X社からの原料紙の安定調達。
- 弱み…【生産の現状】より、経験と勘への依存・標準化不足・技術承継の停滞(立上りロス)、品質のバラツキとクレーム、記録・再発防止ができていない、原料紙欠品による作業停滞。
選び方のコツ:弱みは後続の第2問(コストダウン)・第3問(工程管理)・第4問(新事業の品質対応)の論点と整合する問題点を選ぶと、事例全体で一貫した解答になる。
C社経営者は、収益性強化のため製造に関してのコストダウンに取り組む方針である。そのために特に重要と思われる課題を2つあげ、各課題に対しての改善策とともにそれぞれ60字以内で述べよ。
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課題1作業が経験と勘に依存し標準化されず機械セットに立上りロスが出る点。標準作業の整備と教育で段取りを短縮しロスを削減する。(59字)
課題2品質のバラツキで不良・クレームと作り直しが発生する点。作業条件を標準化し記録・原因分析で再発を防ぎ不良コストを削減する。(60字)
設問の制約:「製造に関してのコストダウン」=生産現場のムダ削減に限定。各解答に「課題+改善策」を1対1で対応させ、60字に圧縮する。
ムダの棚卸し:与件【生産の現状】からコスト増要因を列挙し、製造コストに直結するものを2つ選ぶ。
・機械セットの立上りロス(属人化・標準化不足)
・品質バラツキ→不良・クレーム・作り直し(失敗コスト)
・原料紙欠品による作業停滞
・深夜・早朝残業(人件費)
改善策の方向:いずれも標準化(作業標準・マニュアル化)+教育・多能工化+記録による再発防止が軸。課題と改善策が噛み合うように書く。
C社では、繰り返し受注頻度の多い一部製品の在庫を保有して見込み生産を行うか検討してきたが、経営者は経営上のリスクに鑑み、製品在庫をもたず納期に対応できる工程管理の改善を進めることとした。それを実現するために必要な対応策について、100字以内で助言せよ。
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生産計画を日次など短サイクル化し、進捗をITで見える化・共有する。特急や仕様変更の対応ルールを標準化して混乱を防ぎ、段取り短縮と原料紙の発注点管理で欠品を防止して、在庫を持たずに短納期で対応する。
設問の前提:「製品在庫を持たず(=見込み生産はしない)」「納期に対応できる工程管理」が方針。だから答えは在庫保有ではなく、生産統制・リードタイム短縮で短納期化する方向。
混乱要因を一つずつ潰す:与件の納期阻害要因に対応策をぶつける。
- 週次計画+ホワイトボード/紙メモ → 計画の短サイクル化(日次)と進捗の見える化・情報共有(IT化)
- 特急・仕様変更(全体の1割)で混乱 → 変更対応ルールの標準化
- 立上りロス → 段取り短縮・平準化
- 原料紙欠品による停滞 → 発注点管理など資材管理の徹底
これらで製造リードタイムを安定短縮し、在庫を持たずに納期を守れる、という流れでまとめる。
C社では、新事業展開として食品用や医療用の紙パイプ製品への参入を検討している。それを実現するために必要な社内の取り組みについて、120字以内で助言せよ。
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食品・医療向けの厳密な品質基準に対応する品質保証体制を構築し、検査・記録・トレーサビリティを整備する。作業を標準化し教育・多能工化で品質を安定させ、不良やクレームの記録と原因分析・再発防止の仕組みを設け、高品質を継続できる社内体制を整える。
成功要因の特定:与件【新事業について】に「設備・工程は互換性あり」「ただし厳密な品質基準への対応が必要」とある。つまり設備投資より品質保証が鍵=ここに答えの焦点を当てる。
弱みの裏返しで構成:第1問で挙げたC社の弱み(品質バラツキ・クレーム・記録/再発防止の不足・属人化)を、新事業に必要な水準まで引き上げる取り組みとして書く。
- 品質保証体制…品質基準の設定、検査・記録、トレーサビリティ(医療・食品で必須)。
- 標準化・教育…作業標準化と多能工化で品質を安定。
- 再発防止…不良・クレームの記録、原因分析、是正の仕組み化。
「社内の取り組み」と限定されているので、外部連携より自社の体制整備に絞って答える。