事例Ⅱ|マーケティング・流通

令和7年度 第2次試験問題 事例Ⅱ

中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅱ / 試験時間 11:40〜13:00 / 配点100点

与件文

1B社は資本金200万円、保険適用外のスポーツマッサージ店である。スポーツマッサージは、主としてアスリートを対象にコンディションを整えることを目的としている。事業所は施術を行う1店舗で施術ベッド数は5床である。従業者数は6名で、社長を除く5名は契約社員であり、1名は受付・事務担当、4名は社長とともに施術を行い、それぞれがサッカー、バスケットボール、バレーボール、野球の競技経験があり、スポーツ競技別に専門性を有していて、各競技でのトレーナー経験を持っている。B社社長はこの4名に対し頻繁に施術指導し、社長が求める高い技術水準を維持している。B社の基本施術コースは30分で4,000円、60分で8,000円である。

2周辺には、捻挫、打撲、挫傷などに対応し、保険診療を適用する、地域に密着した接骨院が複数ある。また、施術ベッド数が10床以上ある大規模な接骨院も出店してきた。1顧客当たり15分程度と回転が速く、買い物や仕事の途中、帰り道の顧客を取り込んでいる。60分が3,000円程度でチェーン展開している格安マッサージ店や、カイロプラクティック、独自技術を売りにした整体院もあり、競争環境は厳しい。

3B社はX県の都市部近郊にある駅前通りに面したビルの1階に入居している。周辺には住宅街が広がり、駅から徒歩圏内に大学のキャンパスがある。

4B社社長は、中高生の時に部活動で陸上短距離の選手であった。競技成績が良く、大学でも競技を続けていたが、大学2年生の時にけがで競技を続けることが難しくなった。落胆する日々が続いていた時、けがのケアとともに親身に話を聞いてくれて心のケアもしてくれたのが、部活動を担当していたトレーナーであった。トレーナーと接するうちに、自分もアスリートをサポートする側になりたいと思うようになり、大学卒業とともに、有名スポーツマッサージ店を経営しているZ社へ就職した。Z社では、クオリティの高いマッサージの手技はもとより、テーピングやストレッチなどのトレーナーとして必要な技術や知識を習得し、来店する顧客に施術を行うことでさらに腕を磨いた。また、顧客の声に耳を傾け、顧客の不安や心の痛みの解消も目指した。この結果、来店するトップアスリートの多くから、高いマッサージ技術とともに、「心のしこりも揉みほぐす」という評価を得られることとなった。

5Z社で働いてちょうど10年が経った2022年、トップアスリート中心ばかりではなく、部活動をしている中高生や大学生、一般の顧客にも身に付けた技術で貢献したいと思うようになり、独立を決心した。

6開業に当たっては、チラシ広告などによる地道な活動をはじめ、Webサイトによって認知度を高めようとしたが、あまり成果は見られなかった。現在のWebサイトには、施術者紹介、施術内容、料金体系、店舗アクセスなどの一般的な情報が掲載されている。また、スポーツマッサージという一般的にはアスリート向けと思われている施術を、一般の顧客にも受けてもらえるように、初回限定の15分1,000円のお試しコースを設置した。しかしながら、開業当初はなかなか来店客数が伸びなかった。

7しばらくして、B社社長が独立開業後に知り合った有名トップアスリートが来店するようになった。この有名トップアスリートは、B社社長の高い施術技術力はもとより、顧客の声に耳を傾けるコミュニケーション力を求めて、自身のコンディショニングのために通ってくれるようになった。

8有名トップアスリートがB社について語ったことがメディアで紹介されて一時期評判となった。B社社長がZ社出身という経歴は強く、肩こり、腰痛、けがなどに悩んでいて、保険適用外で料金は高くても本格的な施術を受けたい顧客や、近郊の中高部活生や大学の運動部の学生も来店し始めている。

9その頃、近郊の大学運動部から専属トレーナー契約を結んでくれないかと声がかかった。施術を受けた運動部の学生から評判を聞きつけた大学職員からの打診であった。週3日、トレーナー1名を出すと、店舗で施術できる顧客数が減少してしまうが、専属トレーナー契約による安定収入というメリットと、強豪運動部を要する大学のトレーナーに選ばれているという知名度が得られるため、契約を結ぶこととした。

10一方で、B社には初回限定お試しコースの利用者がいるものの、リピーターにならず、来店頻度が低いという課題が出てきた。初回来店時に情報を登録してもらっているが、必要な顧客情報がうまく蓄積できず、そのため顧客に寄り添った対応がまだ不十分である。また、顧客の予約時間が重なり、予約が取りづらい時間と空きが出る時間が出てしまっている。さらに、価格面や提供サービス面で近隣との競争が激しくなり、顧客が流出するといった事態が生じた。

11B社社長は、自社の強みを活かせるよう、中小企業診断士に助言を求めた。

設問

第1問 配点 15点 150字以内

B社の現状について、3C分析の観点から150字以内で述べよ。

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解答例(150字)

顧客は、料金が高くても本格的な施術を求める層やトップアスリート、近隣大学の運動部・部活生である。競合は保険適用で安価・短時間の接骨院や格安チェーン店、整体院が多く競争は激しい。自社はZ社仕込みの高い施術技術と競技別専門性、心のケアまで行うコミュニケーション力を強みとし評判も高いが、リピート化が弱い。

解説(考え方・プロセス)

着眼点:3C=Customer(顧客・市場)/Competitor(競合)/Company(自社)の3要素を漏れなく書く。150字を3等分(各40〜50字)で配分するイメージ。

  • 顧客…第7・8・9段落。高くても本格施術を望む層、トップアスリート、近隣大学の運動部・部活生。立地(駅前・住宅街・大学近接)も需要の背景。
  • 競合…第2段落。保険適用で安価・短時間(15分)の接骨院、格安チェーン(60分3,000円)、カイロ・整体院。競争環境は厳しい。
  • 自社…第1・4・8段落。Z社仕込みの高い施術技術、競技別の専門性を持つ施術者、「心のしこりも揉みほぐす」コミュ力、メディアでの評判。一方で第10段落のリピート化の弱さも触れる。

自社は強みだけでなく課題(弱み)にも触れると、第2〜4問(課題解決)への布石になり一貫性が出る。

第2問 配点 25点 100字以内

B社の営業時間は、平日9時から21時までである。このうち、顧客が施術を受ける時間は18時から21時までに集中していて、混雑時間と空き時間ができている。B社は、この問題を、ターゲット層を意識した価格戦略によって解決したいと考えている。どのように対応すべきか、100字以内で助言せよ。

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解答例(95字)

日中の空き時間帯に、時間に余裕のある主婦やシニア、大学生を対象としたオフピーク割引料金を設定する。これにより需要を平準化して混雑時間の集中を緩和し、新規顧客層を開拓して稼働率と収益を高める。

解説(考え方・プロセス)

設問の制約:ターゲット層を意識した価格戦略によって解決」と手段が指定されている。価格以外の施策(例:新メニュー追加だけ)に逃げず、必ず価格戦略で答える。

問題の構造:営業は9〜21時だが来店は18〜21時に集中=ピーク(夕方以降)とオフピーク(日中9〜18時)がある。これは需要の時間的偏り=価格でならす典型論点。

解答の組み立て:
・誰に=日中に来られる層(住宅街の主婦・シニア、近隣大学の学生)をターゲット化。
・何を=オフピーク(日中)割引などの時間帯別料金。
・効果=需要の平準化、混雑緩和、空き時間の稼働率向上、新規顧客開拓。

第3問 配点 30点 150字以内

B社は現在、顧客の氏名、年齢、連絡先、受けた施術コースのみを登録している。今後、顧客に寄り添い、長期的な関係性を構築するために、B社の強みを活かして、どのような顧客情報を新たに蓄積し、どのように活用すべきか、150字以内で助言せよ。

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解答例(128字)

競技種目や運動歴、けがや不調の履歴、施術内容と経過、目標やコンディションを新たに蓄積する。これを基に競技別の専門性を活かした個別施術を提案し、強みである心のケアを伴うきめ細かな対応を行う。来店後のフォロー連絡でリピートを促し、顧客と長期的な関係を構築する。

解説(考え方・プロセス)

設問の制約:B社の強みを活かして」「どのような情報を蓄積(=何を)」「どのように活用(=どう使う)」の3点を必ず押さえる。

強みとの紐づけ:B社の強みは競技別の専門性心のケア(傾聴・コミュ力)。だから蓄積すべき情報も、現状の氏名・年齢・連絡先・コースに加え、これらの強みを発揮できるデータを選ぶ。

  • 蓄積(何を)…競技種目・運動歴、けが/不調の履歴、施術内容と経過、目標・コンディション、来店動機や悩み。
  • 活用(どう)…競技別の専門施術の提案、心のケアを伴う個別対応、経過に応じたフォロー連絡。

これにより第10段落の課題「リピーターにならない・寄り添い不十分」を解消し、長期的な関係(CRM)につなげる、という効果まで書くと完成度が上がる。

第4問 配点 30点 100字以内

コンディショニング不良に悩む、未来のアスリートを目指す中高や大学の部活生をさらに呼び込むために、B社社長はWebサイトに動画を掲載しようと考えている。どのような内容の動画にすべきか、100字以内で助言せよ。

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解答例(94字)

競技別の専門性を活かし、けが予防やコンディショニングのためのストレッチ・テーピング・セルフケア方法を実演する動画とする。部活生の悩みに応える実用的な内容で専門性と信頼を訴求し、来店を促す。

解説(考え方・プロセス)

3点をつなぐ:①ターゲット(中高・大学の部活生)→②そのニーズ(コンディショニング不良の悩み・けが)→③B社の強み(競技別専門性・トレーナー経験・施術技術)を結びつけて動画内容を設計する。

内容の方向性:売り込みではなく、部活生の役に立つ実用コンテンツにするのがコツ。
・競技別のセルフケア/ストレッチ/テーピング/けが予防法
・コンディショニングのコツの実演・解説

効果:専門性と信頼を訴求して認知・好感を高め、来店動機につなげる。第6段落で「Webサイトの一般的情報では成果が出なかった」ことの裏返しとして、強みが伝わる動画にする点を意識する。

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