事例Ⅲ|生産・技術

令和6年度 第2次試験問題 事例Ⅲ

中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅲ / 試験時間 14:00〜15:20 / 配点100点

与件文

【企業概要】

1C社は、資本金5,000万円、従業員70名、年商約14億円の搬送機器製造業である。会社組織は、総務部、設計部、製造部、営業部で構成されている。

2搬送機器とは、工場や物流倉庫などで製品・商品や資材などを工程間、設備間で移動させる機器であり、コンベヤ式や昇降式、パイプライン式など、移動する対象の形状や大きさ、移動方法に合わせたさまざまな形態のものがある。

3C社は、工作機械メーカーや物流機器メーカーが設計、製造、据え付けする加工機械などの工場設備や、自動仕分け機などの物流設備に組み込まれるローラコンベヤや、ベルトコンベヤを受託生産している。

4C社社長は、工作機械メーカーX社で、工作機械を設置する顧客企業の依頼を受けて、搬送機器を含む工場設備レイアウト設計を担当し、工場の生産性を高めることを顧客に提案してきた。その経験を生かして2011年にC社を設立した。

5設立当初は賃貸工場で中古機械を活用し、X社が設計するコンベヤの特注品の受託生産からスタートした。その後、C社社長の搬送機能についての有効な提案を受けられることもあり、X社以外の工作機械メーカーや物流機器メーカーの特注品受託生産も獲得するようになった。

6受注量の増加に対応するため、工業団地に用地を取得してNC加工機などの生産設備を導入するとともに、設計要員や製造要員などの技術者を中心に採用し生産拡大を図ってきた。現在の取引先企業数は、工作機械メーカー5社、物流機器メーカー3社であり、そのうちX社からの受注金額が多く全体の6割を超えている。

7X社では、見込生産の搬送機器を中国企業に生産委託していたが、近年現地生産コストが上昇し、さらにコロナ禍以降納品が不安定な状態になったため、生産を国内に移管したことから、C社の受注量は近年さらに増加傾向にある。

【受注、設計のプロセス】

8受注窓口の営業部に引き合いがあると、顧客企業が作成した製品仕様書および製品図面を確認して、見積書を作成し、顧客企業との価格交渉を経て契約をする。見積金額は、過去に製造した搬送機器の契約金額を参考に、営業部員が材料費と社内加工費、その他の経費を合計して算出し、最終契約金額も含め営業部長が決裁している。最近の材料費や人件費の高騰に対応した見直しは一応行われているものの、契約金額は現状のコスト高には対応できていない。契約後、営業部は、受注番号を付与して受注管理システムに受注情報を入力し、顧客企業が作成した製品仕様書および製品図面を設計部に引き渡す。受注番号は、製造部では製造番号として使われる。

9営業部が受注情報を入力すると、設計部では製品仕様書および製品図面に基づいて製作図面を作図し、部品構成表を作成する。部品構成表はデジタルデータとして、製造部での材料と外注品の発注、在庫管理に活用されている。

【生産の現状】

10製造部は、生産管理課、資材管理課、機械加工課、製缶課、組立課で構成されている。

11C社が製造するコンベヤ製品は、ローラやベルトからなる搬送体、搬送体を回転させるモーターを含む駆動部、搬送体と駆動部を支えるフレームの3つの構造体によって構成されている。これらの構造体については、フレームは主に製缶課で、駆動部および搬送体の加工は機械加工課で内製化されており、その他の外注部品やモーターなどの購入品を加えた最終の組立を組立課が行っている。

12設計部で製作図面が完成すると、生産管理課で必要とする各製造工程の工数計画を立て、顧客要求納期を基準として製造番号ごとの大日程計画を策定し、製造部各課に調達指示、生産指示を出す。その大日程計画と設計部で作成された部品構成表に従って、資材管理課では必要材料と外注品の発注を行い在庫管理をする。

13機械加工課、製缶課、組立課の製造工程では、生産管理課で作成される大日程計画に準じて製造を行うが、詳細の進捗管理など生産統制は製造部長以下、製造部各課長が参加して週1回週末に開催される生産会議で調整される。生産会議では、各製造番号の作業進捗状況の確認、各製造番号の材料や外注品の納品状況の確認などを行い、次週1週間の各工程の週次日程計画表を作成する。週次日程計画表の各作業の工数見積もりは、製造部各課長の経験を基に作成されている。また、顧客からの設計変更や納期変更などが生じた場合など、生産会議には必要に応じて設計担当者が参加し、変更内容を周知して作業順序などの確認を行う。

14近年受注量が増加し、顧客から納期の短縮を要請されることもあり、大日程計画や週次日程計画などの工程管理の混乱が生じている。現在は何とか納期を確保できているが、今後この傾向が顕著になった場合、現在の管理では納期遅延が生じる恐れがあり、製造部ではIT利用も図りながらその対応を検討している。

15生産工程では、製缶工程(製缶課)の残業や休日出勤が多く、納期対応のため週次日程計画表の変更が常態化している。前工程の機械加工工程(機械加工課)や後工程の組立工程(組立課)では、不適合品発生などの特別な場合を除き残業や休日出勤は生じていない。

16製造完了後は製造部で最終検査を行い、顧客企業が指定する場所に納品し、据付は顧客企業が行う。据付後のメンテナンスについては顧客企業が行うが、X社の場合はC社の営業部が担当している。

設問

第1問 配点 20点 80字以内

C社の強みを80字以内で述べよ。

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解答例(75字)

社長が培った工場設備レイアウト設計と搬送機能の提案力、コンベヤ特注品の設計から製缶・機械加工・組立まで内製で一貫対応できる技術力を持つ点が強みである。

解説(考え方・プロセス)

事例Ⅲの定石:強みは「技術・QCDで顧客に評価される良い点」を拾う。後続の第5問(自社企画製品で直接契約・事業拡大)で活かせる強みを意識して選ぶと一貫する。

  • 第4・5段落…社長がX社で培った工場設備レイアウト設計・搬送機能の有効な提案力(生産性向上の提案)。これが受注獲得の源泉。
  • 第11段落…フレーム(製缶課)・駆動部/搬送体(機械加工課)・組立(組立課)を内製で一貫生産できる体制。
  • 第9段落…設計部が製作図面・部品構成表を作る設計力

「提案力(ソフト)」+「設計〜製造の一貫対応力(ハード)」の2軸でまとめると、自社企画への展開可能性が伝わる。

第2問 配点 20点 100字以内

コロナ禍以降増加傾向にある受注量に対応するため、C社製造部では工程改善によって生産能力の向上を図る検討を進めている。どのように工程改善を進めるべきか、100字以内で助言せよ。

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解答例(100字)

残業・休日出勤が集中する製缶工程の能力不足を解消する。作業分析で標準化し設備増強や外注も活用、多能工化で他工程から応援する。工程間の能力をライン全体で平準化し、ボトルネックを解消して生産能力を高める。

解説(考え方・プロセス)

論点の特定:設問は「工程改善で生産能力向上」。生産能力はライン全体のボトルネック工程で決まる(TOC)。よってまずボトルネックを特定する。

ボトルネックの根拠:第15段落に「製缶工程(製缶課)の残業・休日出勤が多く、週次日程の変更が常態化」「前工程の機械加工・後工程の組立は残業なし」とある=製缶工程が能力不足のボトルネック。ここに改善を集中する。

  • 能力増強…作業分析・標準化で工数短縮、設備増強や外注活用で製缶の能力を拡大。
  • 負荷の平準化…多能工化で余力のある機械加工・組立から製缶へ応援、工程間の能力バランスを取る。

「特定の遊休でない工程=製缶」に手を打つのが要。全工程一律の一般論にしないこと。

第3問 配点 20点 100字以内

C社では、受注量の増加や納期短縮要請などの影響で製造部の工程管理が混乱している。どのように工程管理業務を改善するべきか、その進め方を100字以内で助言せよ。

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解答例(99字)

経験頼みの工数見積りを実績データで標準化し、生産管理システムで全工程の進捗・負荷を見える化する。週次会議に頼らず日次で計画を更新し、設計変更や納期変更も即時共有して、計画と統制を連動させ混乱を防ぐ。

解説(考え方・プロセス)

設問の区別:第2問は「生産能力(工程改善)」、本問は「工程管理(計画・統制)」。混乱の管理面の原因に対策をぶつける。第14段落で「ITも図りながら対応を検討」とあり、IT活用が方向性のヒント。

混乱要因を一つずつ潰す:

  • 第13段落…工数見積りが各課長の経験頼み実績データに基づく標準工数で精度向上。
  • 第13・14段落…生産統制が週1回の生産会議頼みで進捗が遅れがち→生産管理システムで進捗・負荷を見える化し、日次など短サイクルで計画更新。
  • 第13段落…設計変更・納期変更が会議待ち→情報を即時共有して計画に反映。

「計画(大日程・週次)と統制(進捗管理)を連動させIT化する」が軸。

第4問 配点 20点 120字以内

C社の顧客企業との契約金額は、最近の材料費や人件費の高騰に対応した見直しは行われているものの、現状のコスト高には対応できていない。今後、顧客企業と価格交渉を円滑に行うための社内の事前対策を120字以内で助言せよ。

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解答例(118字)

製品ごとに材料費・加工費・経費を実際原価で正確に把握する原価管理の仕組みを整え、見積りを過去契約額頼みから標準原価に基づく方式へ改める。原価や材料費高騰の根拠資料を準備し、提案した搬送機能の付加価値も示して、適正価格を交渉できるようにする。

解説(考え方・プロセス)

設問の限定:価格交渉を円滑に行うための社内の事前対策」=交渉そのものでなく、交渉を有利にするための社内の準備(原価把握・根拠づくり)を答える。

問題の根本:第8段落で見積りは「過去の契約金額を参考に営業部員が材料費・加工費・経費を合計」「コスト高に対応できていない」=正確な原価が把握できていないことが価格転嫁できない原因。

  • 原価管理の整備…製品(製造番号)ごとに材料費・社内加工費・経費を実際原価で把握し、標準原価に基づく見積方式に変更。
  • 交渉の根拠資料…材料費・人件費高騰のデータを準備し、価格転嫁の妥当性を示す。
  • 付加価値の提示…強みである搬送機能の提案・一貫対応の価値を見える化し、値引き圧力に対抗。
第5問 配点 20点 120字以内

C社社長は、小規模の工場施設や物流施設の新設や更新を計画している企業と直接契約し、自社企画の製品を設計、製造することで事業を拡大したいと考えている。この新しい事業展開を成功させるにはどのように推進するべきか、120字以内で助言せよ。

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解答例(119字)

社長が培った設備レイアウト設計と搬送機能の提案力を核に、小規模施設向けの標準化した自社企画製品を開発する。設計から内製一貫の体制を活かし短納期・低コストで提供し、据付やメンテも担う直接営業体制を整え、X社依存から脱却し収益基盤を拡大する。

解説(考え方・プロセス)

戦略の方向:これまでの受託生産(B to B、メーカー経由)から、エンドユーザー企業と直接契約し自社企画製品を売る転換。成功には自社の強みを新事業にどう活かすかを示す。

強み(第1問)の転用:社長の工場設備レイアウト設計・搬送機能の提案力設計〜製造の内製一貫体制は、施設新設・更新を計画する企業への提案・短納期・低コストに直結する。

  • 製品開発…小規模施設向けに標準化・モジュール化した自社企画品を用意(特注一辺倒からの転換)。
  • 営業体制…直接契約のための提案営業・据付・メンテまで担う体制整備(X社はメンテをC社が担当した実績あり)。
  • 効果…X社依存(受注の6割超)からの脱却=取引先分散・収益基盤の拡大
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