事例Ⅲ|生産・技術

令和2年度 第2次試験問題 事例Ⅲ

中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅲ / 試験時間 14:00〜15:20 / 配点100点

与件文

【C社の概要】

1C社は、1955年創業で、資本金4,000万円、デザインを伴うビル建築用金属製品やモニュメント製品などのステンレス製品を受注・製作・据付する企業で、従業員は、営業部5名、製造部23名、総務部2名の合計30名で構成される。

2C社が受注しているビル建築用金属製品の主なものは、出入口の窓枠やサッシ、各種手摺、室内照明ボックスなどで、特別仕様の装飾性を要求されるステンレス製品である。またモニュメント製品は、作家(デザイナー)のデザインに従って製作するステンレス製の立体的造形物である。どちらも個別受注製品であり、C社の工場建屋の制約から設置高さ7m以内の製品である。主な顧客は、ビル建築用金属製品については建築用金属製品メーカー、モニュメント製品についてはデザイナーである。

3創業時は、サッシ、手摺など建築用金属製品の特注品製作から始め、特に鏡面仕上げなどステンレス製品の表面品質にこだわり、溶接技術や研磨技術を高めることに努力した。その後、ビル建築内装材の大型ステンレス加工、サイン(案内板)など装飾性の高い製品製作に拡大し、それに対応して設計技術者を確保し、設計から製作、据付工事までを受注する企業になった。

4その後、3代目である現社長は、就任前から溶接技術や研磨技術を生かした製品市場を探していたが、ある建築プロジェクトで外装デザインを行うデザイナーから、モニュメントの製作依頼を受けたことを契機として、特殊加工と仕上げ品質が要求されるステンレス製モニュメント製品の受注活動を始めた。

5モニュメント製品は受注量が減少したこともあったが、近年の都市型建築の増加に伴い製作依頼が増加している。受注量の変動が大きいものの、全売上高の40%を占め、ビル建築用金属製品と比較して付加価値が高いため、今後も受注の増加を狙っている。

【業務プロセス】

6ビル建築用金属製品、モニュメント製品の受注から引き渡しまでの業務フローは、以下のとおりである。

7受注、設計、据付工事施工管理は営業部が担当する。顧客から引き合いがあると、受注製品ごとに受注から引き渡しに至る営業部担当者を決め、顧客から提供される設計図や仕様書などを基に、製作仕様と納期を確認して見積書を作成・提出し、契約締結後、製作図および施工図を作成して顧客承認を得る。通常、製作図および施工図の顧客承認段階では、仕様変更や図面変更などによって顧客とのやりとりが多く発生する。特にモニュメント製品では、造形物のイメージの摺合わせに時間を要する場合が多く、図面承認後の製作段階でも打ち合わせが必要な場合がある。設計には2次元CADを早くから使用している。

8その後、製作図を製造部に渡すことにより製作指示をする。製作終了後、据付工事があるものについては、営業部担当者が施工管理して据付工事を行い、検査後顧客に引き渡す。据付工事は社外の協力会社に依頼し、施工管理のみ社内営業部担当者が行っている。

9契約から製品引き渡しまでのリードタイムは、平均約2か月である。最終引き渡し日が設定されているが、契約、図面作成、顧客承認までの製作前プロセスに時間を要して製作期間を十分に確保できないことや、複雑な形状など高度な加工技術が必要な製品などの受注内容によって、製作期間が生産計画をオーバーするなど、納期の遅延が生じC社の大きな悩みとなっている。

10C社では、全社的な改善活動として「納期遅延の根絶」を掲げ、製作プロセスを含む業務プロセス全体の見直しを進めている。また、その対策の支援システムとしてIT化も検討している。

【生産の現状】

11製作工程は切断加工、曲げ加工、溶接・組立、研磨、最終検査の5工程である。切断加工工程と曲げ加工工程はNC加工機による加工であり、作業員2名が担当している。溶接・組立工程と研磨工程は溶接機や研磨機を用いた手作業であり、4班の作業チームが受注製品別に担当している。この作業チームは1班5名で編成され、熟練技術者が各班のリーダーとなって作業管理を行うが、各作業チームの技術力には差があり、高度な技術が必要な製作物の場合には任せられない作業チームもある。

12ビル建築用金属製品は切断加工、曲げ加工、溶接・組立までは比較的単純であるが、その後の研磨工程に技術を要する。また、モニュメント製品は立体的で複雑な曲線形状の製作が多く、全ての工程で製作図の理解力と高い加工技術が要求される。ビル建築用金属製品は製作完了後、製造部長と営業部の担当者が最終検査を行って、出荷する。モニュメント製品は、デザイナーの立ち会いの下、最終検査が行われ、この際デザイナーの指示によって製品に修整や手直しが生じる場合がある。

13生産計画は、製造部長が月次で作成している。月次生産計画は、営業部の受注情報、設計担当者の製品仕様情報によって、納期順にスケジューリングされるが、溶接・組立工程と研磨工程は加工の難易度などを考慮して各作業チームの振り分けを行いスケジューリングされる。C社の製品については基準となる工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえない。

14工場は10年前に改築し、個別受注生産に適した設備や作業スペースのレイアウトに改善したが、最近の加工物の大型化によって狭隘な状態が進み、溶接・組立工程と研磨工程の作業スペースの確保が難しく、新たな製品の着手によって作業途中の加工物の移動などを強いられている。

15製造部長は、全社的改善活動のテーマである納期遅延の問題点を把握するため、作業時間中の作業者の稼働状態を調査した。それによると、不稼働の作業内容としては、「材料・工具運搬」と「歩行」のモノの移動に関連する作業が多く、その他作業者間の「打ち合わせ」、営業部担当者などとの打ち合わせのための「不在」が多く発生していた。

設問

第1問 配点 20点 各40字以内

C社の(a)強みと(b)弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。

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解答例

(a)強み鏡面仕上げ等の高い溶接・研磨技術と、設計から製作・据付まで一貫対応できる体制。(39字)

(b)弱み標準化や工数見積りが未確立で作業チーム間の技術力差が大きく、納期遅延が生じる点。(40字)

解説(考え方・プロセス)

事例Ⅲの定石:強み=「QCDで評価される技術・体制」、弱み=「生産現場の問題点(標準化不足・属人化・納期)」。後続設問の論点と整合させて選ぶ。

  • 強み…第3段落「鏡面仕上げなど表面品質へのこだわり、溶接技術・研磨技術」、「設計から製作、据付工事までを一貫受注」。第4・5段落の付加価値の高いモニュメント対応力も。
  • 弱み…第13段落「工程順序や工数見積りなど標準化が確立していない」、第11段落「各作業チームの技術力に差」、第9段落「納期の遅延がC社の大きな悩み」。

選び方のコツ:弱みは第2問(納期遅延の問題点・対応策)・第3問(IT化)と直結する「標準化不足・技術力差・納期遅延」を選ぶと、事例全体で一貫する。

第2問 配点 40点

C社の大きな悩みとなっている納期遅延について、以下の設問に答えよ。

(設問1) C社の営業部門で生じている(a)問題点と(b)その対応策について、それぞれ60字以内で述べよ。
(設問2) C社の製造部門で生じている(a)問題点と(b)その対応策について、それぞれ60字以内で述べよ。
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解答例

設問1 (a)営業の問題点仕様・図面変更で顧客承認に時間を要し、製作前プロセスが長く製作期間を圧迫している点。(42字)

設問1 (b)対応策3次元CADやモックアップで早期に仕様・イメージを摺合わせ承認を迅速化し、製作前期間を短縮する。(48字)

設問2 (a)製造の問題点工程順序や工数見積りが標準化されず、作業チーム間の技術力差で高難度品を任せられない点。(43字)

設問2 (b)対応策標準作業・工数見積りを整備し教育・多能工化で技術力差を解消、レイアウト改善で運搬・移動のムダを削減する。(52字)

解説(考え方・プロセス)

設問の枠組み:大テーマは「納期遅延」。原因を営業部門(設問1)と製造部門(設問2)に切り分け、各々「問題点+対応策」を1対1で書く。

設問1:営業部門

第7・9段落が根拠。「製作図・施工図の顧客承認段階で仕様変更・図面変更のやりとりが多発」「モニュメントはイメージの摺合わせに時間」→製作前プロセスが長引き製作期間を圧迫(第9段落)。対応策は2次元CAD(第7段落)に対し3次元CAD・モックアップ等で早期に合意形成し承認を迅速化する方向。

設問2:製造部門

根拠は複数。
・第13段落「工程順序・工数見積りの標準化が未確立
・第11段落「作業チーム間の技術力差、高度品を任せられない班」
・第14・15段落「レイアウトが狭隘で運搬・歩行などモノの移動のムダ
対応策は標準化+教育・多能工化+レイアウト改善(運搬距離短縮)。問題点と対応策を噛み合わせる。

第3問 配点 20点 120字以内

C社社長は、納期遅延対策として社内のIT化を考えている。C社のIT活用について、中小企業診断士としてどのように助言するか、120字以内で述べよ。

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解答例(118字)

受注・設計・製作・据付の進捗や生産計画をデータベースで一元管理し、営業部と製造部で情報共有する。3次元CADで仕様変更に対応し、工数見積りや工程順序を標準化してシステムに蓄積する。これにより製作前後の打合せを効率化し、納期遅延を防止する。

解説(考え方・プロセス)

設問の前提:目的は「納期遅延対策としてのIT化」。IT導入自体が目的ではなく、納期遅延の原因をITで解消する助言にする。

原因とITの紐づけ:第2問で挙げた遅延要因に、ITソリューションを一つずつ当てる。

  • 営業・製造の情報連携不足、打合せ多発(第7・15段落)→進捗・生産計画のDB一元管理と部門間情報共有
  • 仕様・図面変更のやりとり(第7段落)→3次元CADで早期合意・変更対応
  • 標準化未確立(第13段落)→工数見積り・工程順序を標準化しシステムに蓄積

情報共有→計画精度向上→リードタイム短縮→納期遵守」という効果まで結ぶ。第10段落でも「IT化を検討」とあり、これに応える形でまとめる。

第4問 配点 20点 120字以内

C社社長は、付加価値の高いモニュメント製品事業の拡大を戦略に位置付けている。モニュメント製品事業の充実、拡大をどのように行うべきか、中小企業診断士として120字以内で助言せよ。

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解答例(119字)

強みの溶接・研磨技術と一貫対応力を活かし、デザイナーとの企画段階からの連携を強化する。製作図の理解力と高度な加工技術を教育・多能工化で全社に展開し、対応できる作業チームを増やす。納期遵守と高品質を実現して評価を高め、都市型建築の受注拡大を図る。

解説(考え方・プロセス)

設問の方向:「付加価値の高いモニュメント事業の充実・拡大」=成長戦略。強みを活かし弱みを補強して受注増につなげる構成にする。

機会と強みの確認:第5段落「都市型建築の増加で製作依頼が増加、付加価値が高く受注増を狙う」=機会。強みは溶接・研磨技術と一貫対応力(第3段落)。

制約(弱み)の克服:モニュメントは「全工程で製作図の理解力と高い加工技術が要求」(第12段落)、しかし「技術力差で任せられない班」(第11段落)、デザイナーとのイメージ摺合わせに時間(第7段落)。

  • 連携強化…デザイナーと企画・設計段階から協働し手戻りを減らす。
  • 技術力の底上げ…教育・多能工化で高難度に対応できるチームを増やす。
  • QCD向上…納期遵守と高品質で評価を高め、受注を拡大する。

「強み活用+弱み補強+機会取り込み」で一貫した成長戦略にまとめる。

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