この問題は本試験の過去問ではありません。当サイトが出題傾向の分析に基づいて作成したオリジナル問題です。
第31問
論点:デジタル・マーケティングと流通チャネル
デジタル化の進展は、企業と消費者を直接に結びつけ、流通のあり方そのものを変えつつある。デジタル・マーケティングと流通チャネルに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア チャネルの発展段階は、シングルチャネル、マルチチャネル、クロスチャネル、オムニチャネルの順に統合の度合いが高まる。このうちマルチチャネルは、すべてのチャネルを統合し、顧客IDや在庫データを一元化する段階を指す。
- イ D2Cは、メーカーが卸売業者や小売業者といった中間流通を介さず、自社サイトなどを通じて消費者に直接販売する形態である。もっとも、流通段階の数でみれば、D2Cは従来のチャネルより長いチャネルにあたる。
- ウ トリプルメディアのうち、消費者がSNS上で発信するクチコミは、自社が保有するオウンド・メディアに分類される。
- エ メーカーの直販が広がると、既存の卸売業者や小売業者と顧客を奪い合う形になり、流通の異なる段階の間に垂直的コンフリクトが生じやすい。
- オ SPAとは、商品の企画から製造・小売までを他社へ委託し、契約によって流通の各段階を組織化する契約型VMSのことをいう。
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正解:エ
解答:エ
デジタル・マーケティングは用語が新しく見えるが、狙われるのは定義のすり替えである。オムニチャネル=統合、D2C=中間流通を介さない直接販売、アーンド・メディア=クチコミ、SPA=自社での垂直統合、という対応を正確に押さえたい。
- ア(×):前半は正しく、チャネルはシングルチャネル、複数チャネルをバラバラに運営するマルチチャネル、在庫などを一部連携させるクロスチャネル、そしてオムニチャネルの順に統合の度合いが高まる。誤りは後半で、すべてのチャネルを統合し顧客IDや在庫データを一元化してシームレスな購買体験を提供するのはオムニチャネルである。マルチチャネルは、複数チャネルを持つが在庫や顧客データが別々でバラバラに運営される段階を指す。
- イ(×):前半は正しく、D2C(Direct to Consumer)は卸・小売などの中間流通を介さず、自社サイトなどを通じて消費者に直接販売する形態である。誤りは後半で、チャネルの長短は流通段階(中間業者)の数で測る。中間業者を持たないD2Cは、卸売業者を経由する従来のチャネルより短いチャネルにあたる。
- ウ(×):消費者がソーシャルメディア上で発信するクチコミは、信頼・評判を稼いで得るアーンド・メディアに分類される。オウンド・メディアは自社サイト・自社アプリ・自社店舗など、自社が保有する媒体を指す。
- エ(○):メーカーが直販に乗り出すと、これまで自社製品を扱ってきた卸売業者や小売業者と顧客を奪い合う形になり、反発を招きやすい。流通の異なる段階の間で生じるこの対立が垂直的コンフリクトであり、記述は正しい。なお、同じ段階の業者どうしの対立は水平的コンフリクトという。
- オ(×):統合の方向が逆である。SPA(製造小売業)は、商品の企画・製造から小売までを1社で垂直統合し、自社ブランド商品を自社店舗で売る業態であり、資本によって統合する企業型VMSの代表例である。他社と契約で結びつく契約型VMSにあたるのは、フランチャイズ・チェーンやボランタリー・チェーンである。
よって エ。
なぜこの論点を予想したか
流通の潮流(EC・オムニチャネル・D2C)は近年のチャネル戦略の出題の中心であり、R03第31問でオムニチャネル、R05第31問でD2Cと3PL、H30第29問でECとオムニチャネルが問われている。ただしSNS広告のターゲティングはR06第33問、ネット広告とサードパーティ・クッキーはR07第31問で扱われたばかりであり、広告技術の側面からの再出題は考えにくい。狙われるのは用語の定義のすり替えであり、直販の拡大が既存チャネルとの対立を生むという垂直的コンフリクトの視点と、SPA・VMSの区別は、近年正面から問われておらず手薄になりやすい。