この問題は本試験の過去問ではありません。当サイトが出題傾向の分析に基づいて作成したオリジナル問題です。
第20問
論点:労働安全衛生法
労働安全衛生法および同法に基づく命令について、令和8年5月1日時点 で施行されている内容に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施は、常時50人以上の労働者を使用する事業場では事業者の義務とされており、常時50人未満の労働者を使用する事業場についても、令和7年に公布された改正法により、すでに事業者の義務とされている。
- イ 高年齢労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講ずることは、令和8年4月1日施行の改正により事業者の義務とされ、国が指針を公表することとされた。
- ウ 事業者は、常時使用する労働者に対し、雇入れの際および原則として1年以内ごとに1回、定期に一般健康診断を行わなければならないが、これに要する費用は、受診する労働者本人の負担とすることが原則である。
- エ 時間外・休日労働が一定の時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者に対する医師による面接指導は、本人の申出を受けて行うものとされ、事業者はその結果の記録を作成して5年間保存しなければならない。もっとも、事業者がこの面接指導の結果について医師の意見を聴くことまでは求められていない。
- オ WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で、継続1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業については、体制の整備、悪化防止措置の実施手順の作成およびこれらの関係者への周知が事業者に義務づけられている。
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正解:オ
解答:オ
令和8年度試験の法令基準日は令和8年5月1日であり、改正に関わる肢は、この日に施行されているか否かがすべてを決める。労働安全衛生法は近年の改正が多いだけに、「改正されたと聞いたことがある」という記憶で解くと、かえって誤答する構造になっている。あわせて、健康診断や面接指導といった従来からの制度についても、義務の主体と中身を正確に押さえておきたい。
- ア(×):常時50人以上の労働者を使用する事業場でストレスチェックの実施が事業者の義務とされている点は正しい。誤りは後半で、実施義務を常時50人未満の労働者を使用する事業場に拡大する改正(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律・令和7年法律第33号、令和7年5月14日公布)は、施行期日が「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、令和8年5月1日時点では施行されていない。したがって令和8年度試験では、50人未満の事業場については当分の間の努力義務にとどまる、というのが正しい。改正を先取りした受験生ほど引っかかる肢である。
- イ(×):令和8年4月1日施行の改正で高年齢労働者の労働災害防止措置が設けられたこと、あわせて国が指針を公表することとされたことは、いずれも正しい。誤りは一点で、この措置は事業者の義務ではなく努力義務である。義務と努力義務の入替えが引っかけである。なお、同日施行で個人事業者等に対する安全衛生対策(注文者等が講ずべき措置)も設けられている。
- ウ(×):健康診断について、雇入れの際および原則として1年以内ごとに1回の定期の実施が事業者の義務とされる点は正しい。誤りは末尾の一点で、健康診断の実施が事業者の義務である以上、これに要する費用も原則として事業者が負担する。労働者本人の負担を原則とする点が誤りである。
- エ(×):長時間労働者への医師による面接指導(労働安全衛生法66条の8)について、本人の申出が要件とされる点、および結果の記録を作成して5年間保存しなければならない点は、いずれも正しい。誤りは末尾の一点で、事業者は面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について医師の意見を聴かなければならず、そのうえで必要な措置をとることが求められる。意見聴取が不要であるとする点が誤りである。
- オ(○):本問の正解。令和7年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で、継続1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業について、①熱中症のおそれがある労働者を把握した際の報告先を定めるなどの体制整備、②熱中症の症状の悪化を防止するための措置の実施手順の作成、③これらの関係者への周知、の3点が事業者に義務づけられた。
よって オ。
なぜこの論点を予想したか
過去19年で5回出題で直近はR07だが、令和8年度は改正イベントが集中しており出題価値が高い。ストレスチェックの50人未満義務化(令和7年法律第33号)は施行期日が「公布後3年以内の政令で定める日」で、法令基準日である令和8年5月1日時点では未施行であるため、改正を先取りした受験生ほど誤答する構図になる。加えて令和8年4月1日施行の高年齢労働者の労働災害防止措置、令和7年6月1日施行の熱中症対策の義務化という新規論点もそろっている。
出典
- 厚生労働省 ストレスチェック制度等の在り方に関する検討会(第8回)資料1 https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001543076.pdf
- 厚生労働省 職場における熱中症対策の強化について(基発0520第6号) https://www.mhlw.go.jp/content/001490909.pdf