この問題は本試験の過去問ではありません。当サイトが出題傾向の分析に基づいて作成したオリジナル問題です。
第16問
論点:コンティンジェンシー理論
コンティンジェンシー理論(条件適合理論)は、組織構造は環境や技術な どの条件に適合してこそ高い業績を生む、という考え方である。コンティ ンジェンシー理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア コンティンジェンシー理論は、環境が異なれば有効な組織のかたちも異なるとして、唯一最善の組織構造があるとする古典的管理論の前提を退けた。もっとも環境への適合は、個々の組織が自らの構造を主体的に変えることによってではなく、多様に生まれた組織形態のうち環境に適合したものが選択され保持されることを通じて達成されると考える。
- イ バーンズとストーカーのいう機械的管理システムでは、職務が細分化・専門化されて責任の範囲が詳細に規定され、コミュニケーションは指揮命令を中心とする垂直的なものとなり、上司への服従が強調される。こうした管理システムは、変化の激しい環境に適合する。
- ウ 変化の激しい環境には、権限や知識が現場にも分散し、職務が状況に応じて流動的に再定義され、水平的なコミュニケーションによる助言や相談が活発に行われる有機的管理システムが適合する。
- エ コンティンジェンシー理論において、組織構造を左右するコンティンジェンシー要因として想定されているのは環境の不確実性のみであり、技術はこれに含まれない。
- オ 同じ環境条件のもとに置かれた組織どうしの構造が似通っていくのは、各組織がその環境に最も効率的に適合する構造を選び取った結果であり、ディマジオとパウエルはこれを制度的同型化と呼んだ。
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正解:ウ
解答:ウ
コンティンジェンシー理論の核心は「どんな環境にも通用する唯一最善の組織のかたちは存在しない」という発想であり、その適合は、組織が自ら構造を変えて環境に合わせることによって達成されると考える(適応論)。同じマクロ組織論でも、環境が組織を選ぶと考える個体群生態学モデル(淘汰論)や、正当性を求めて組織が似ていくと考える制度論とは、発想が異なる。
- ア(×):前半は正しい。コンティンジェンシー理論は「唯一最善の組織構造は存在せず、環境が違えば最適な組織も違う」とする考え方であり、これは古典的管理論を乗り越えた点にこそ意義がある。誤りは後半で、そこに書かれているのは個体群生態学モデル(組織エコロジー)の淘汰の論理である。個々の組織は構造慣性ゆえに簡単には変われず、多様に生まれた組織形態のうち環境にたまたま適合したものが選択・保持される、というのが淘汰論であり、コンティンジェンシー理論は逆に、組織の側が主体的に自らを適合させると考える適応論である。
- イ(×):機械的管理システムの特徴(職務の細分化・専門化、責任の詳細な規定、垂直的なコミュニケーション、上司への服従の強調)は、いずれも正しい。誤りは末尾の一点で、機械的管理システムが適合するのは安定した環境である。変化の激しい環境に適合するのは有機的管理システムのほうである。
- ウ(○):バーンズ&ストーカーの2モデルのうち、有機的管理システムの説明として適切である。有機的管理システムは、権限・知識が分散し、職務は流動的で再定義され、コミュニケーションは水平的で、上司への服従よりタスクへのコミットメントが強調される。これが不確実性の高い(変化の激しい)環境に適合する。本問の正解。
- エ(×):コンティンジェンシー要因は環境の不確実性に限られない。ウッドワードが注目した生産技術のように、技術もコンティンジェンシー要因である。「環境の不確実性のみ」と限定する点が誤りである。
- オ(×):ディマジオとパウエルが同型化(強制的・模倣的・規範的)を論じたという人名と概念の対応は正しい。誤りは、似ていく理由を効率的な環境適合に求めている点である。制度論のいう同型化は、効率がよいからだけではなく、社会から正当(まっとう)であると認められること=正当性の獲得を主たる駆動因とする。同じ「組織が似ている」という現象でも、コンティンジェンシー理論の環境適合による説明とは別のメカニズムである。
よって ウ。
なぜこの論点を予想したか
コンティンジェンシー理論は「ご無沙汰の論点」ではなく、組織論でもっとも安定して問われる定番である。バーンズ&ストーカーはR02第16問・R05第15問・R07第15問、ガルブレイスの情報処理モデルはH19第12問・R01第13問・R06第14問、ウッドワードはR02第15問とR07第15問で問われており、R06・R07と2年続けて顔を出しているため、R08でも出題される可能性は高い。そのぶん狙い目というより落とせない論点である。ただし直近2年で問われたウッドワードの技術類型(R07第15問の正解肢)とガルブレイスの情報処理の振り分け(R06第14問)をそのまま繰り返しても復習にならないため、本問ではこの2つを外し、コンティンジェンシー理論が「組織が自ら構造を変えて環境に合わせる」適応論であることを、淘汰論(個体群生態学モデル)や制度論(同型化)との対比で確かめる形に構成した。