この問題は本試験の過去問ではありません。当サイトが出題傾向の分析に基づいて作成したオリジナル問題です。
第11問
論点:両利きの経営(深化と探索)
C. A. オライリーとM. L. タッシュマンは、既存事業の深化 (exploitation)と新規事業の探索(exploration)を両立する組織能力 を両利き(ambidexterity)と名づけた。両利きの経営において、既存事 業ユニットと新規事業探索ユニットとの間で分けるべきもの、および共有 すべきものに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 既存事業ユニットと新規事業探索ユニットは経営理念を共有すべきであるが、公平性のため、両ユニットに共通の事業評価基準を構築する必要がある。
- イ 既存事業ユニットと新規事業探索ユニットは構造上分離すべきであるが、両者に異なる文化が生まれないよう、文化の統一を図る必要がある。
- ウ 既存事業ユニットと新規事業探索ユニットは構造上分離するが、上位のビジョンや経営理念は、両ユニットに共通のものとして共有しておく。
- エ 探索ユニットには独立性を与える必要があるが、その独立性を保つため、全社的な資産や組織能力にアクセスする権限は与えない。
- オ 両ユニットのオペレーションを効率的に管理するために、機能横断的なチームを設計して一体で運営する。
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正解:ウ
解答:ウ
両利きの経営の要諦は、深化と探索を担う組織を構造的に分離(structural ambidexterity)しつつ、上位のビジョン・経営理念を共有し、かつ探索ユニットには独立性を与えながら全社資産・組織能力へのアクセスを保証することにある。「何を分け、何を共有するか」の切り分けが問われる。
- ア(×):前半は正しく、経営理念は両ユニットで共有すべきものである。誤りは後半で、深化と探索は性質が異なるため評価指標は別であるべきである。公平性を理由に共通の事業評価基準を構築すると、探索ユニットが既存事業の短期収益基準で測られてしまい、機能不全に陥る。評価基準は「共有するもの」ではなく「分けるもの」である。
- イ(×):前半は正しく、両ユニットは構造上分離すべきものである。誤りは後半で、文化は統一すべきものではない。深化と探索とでは適合する文化が異なるため、別個の文化を許容しつつ、上位のビジョンで統合するのが正しい。「異なる文化が生まれないようにする」という発想は誤りである。
- ウ(○):両ユニットは構造上分離する(structural ambidexterity)が、上位のビジョン・経営理念は両ユニットで共有する。「分けるもの」と「共有するもの」の切り分けを正しく述べており、この共有こそが、別個の文化を許容しながら全体を統合するための要となる。本問の正解。
- エ(×):前半は正しく、探索ユニットには独立性を与える必要がある。誤りは後半で、独立性を与えると同時に、全社的な資産や組織能力にアクセスする権限も与える必要がある。独立性の確保を理由に全社資産から切り離してしまうのは、両利きの経営の中核に反する。
- オ(×):両ユニットのオペレーションを一体で運営するのは、構造分離の趣旨に反する。深化と探索とでは求められる仕事の進め方が異なるため、オペレーションは分けるべきものであり、機能横断的なチームで一体運営すれば、探索が既存事業の論理に呑み込まれてしまう。
よって ウ。
なぜこの論点を予想したか
R03第22問で出題実績のある論点である。過去19年ではR03の1回のみだが、深化と探索の両立は近年の重要トレンドであり、直近の出題R03から間隔が空いている。R07(第1〜12問)でも未出題であり、そろそろ出題される可能性が高い。構造分離と共有の切り分け、とりわけ評価基準と組織文化の扱いが急所となる。
出典
- 中小企業診断士1次試験 令和3年度 企業経営理論 第22問(本試験)