予想問題 企業経営理論 令和8年度予想 第10問

この問題は本試験の過去問ではありません。当サイトが出題傾向の分析に基づいて作成したオリジナル問題です。

第10問

論点:生産性のジレンマとA-Uモデル

W. アバナシーとJ. アッターバックは、ひとつの産業が生まれてか ら成熟するまでに、製品革新から工程革新へと主役が交代していく進化の パターンを示した(A-Uモデル)。このモデルが描く産業の進化の過程と 生産性のジレンマに関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. A-Uモデルにおける産業の進化の順序は、移行期から流動期を経て固定期へと至る。
  2. プロセス・イノベーションとは、製品そのものを新しくつくり替える革新をいう。
  3. ドミナント・デザインは、仕様や評価基準が顧客の間で共有されるようになると定まってくる。それが定まると、競争の焦点はコストから製品の形へと移る。
  4. 工程革新によって生産性を高めれば高めるほど、生産体制がその製品に最適化されて固まり、大きな製品革新はかえって起こしにくくなる。
  5. 固定期に入った産業を再び流動期へと戻すことを脱成熟といい、これを実現するには、垂直統合を解消することが必要となる。
▼ 解答・解説を見る

正解:

解答:エ

A-Uモデルの核心は、ドミナント・デザインの確立を境に製品革新から工程革新へ主役が交代し、その工程革新を突き詰めるほど大きな変化が起こせなくなるという生産性のジレンマにある。段階の順序と、それぞれの「向き」を正確に押さえたい。

  • ア(×):順序が違う。A-Uモデルの段階は、製品そのものが定まらず各社が試行錯誤する流動期から、製品の型が決まって「安く大量に作る」競争へ移る移行期を経て、効率・コスト重視で安定する固定期へと進む。最初にくるのは流動期であり、移行期ではない。
  • イ(×):定義が入れ替わっている。製品そのものを新しくつくり替えるのはプロダクト・イノベーション(製品革新)である。プロセス・イノベーション(工程革新)は作り方・生産工程を新しくするものであり、生産ラインの自動化・効率化などがこれにあたる。
  • ウ(×):前半は正しく、ドミナント・デザインは仕様や評価基準が顧客の間で共有されるようになると定まってくる。誤りは後半で、移行の方向が逆である。ドミナント・デザインが定まると、競争の焦点は「どんな形にするか」から「いかに安く良く作るか」へ、すなわち製品の形からコストへ移る。
  • エ(○):これが生産性のジレンマである。工程を磨き上げて生産性(効率)を高めれば高めるほど、生産体制がその製品に最適化されて固まってしまい、新しい製品革新という大きな変化が起こしにくくなる。効率を追うことと大きく変わることは両立しにくい、という板ばさみであり、記述は正しい。
  • オ(×):前半は正しく、固定期に入って身動きが取れなくなった産業を再び流動期へ戻すことを脱成熟という。誤りは後半で、向きが逆である。脱成熟は、あえて要素技術を統合して産業を揺さぶることで実現するものであり、そのためには一定以上の垂直統合が必要となる。垂直統合を解消するのではない。

よって

なぜこの論点を予想したか

A-Uモデルは直近のR06第9問で出題済みであり、そこでは「使用状況・仕様・評価基準が顧客の間で共有されるとドミナント・デザインが定まる」という定義が正解肢として正面から問われた。したがって同じ切り口を正解肢に据えた再出題は考えにくく、本問ではこの定義を正解肢とはせず、誤答肢ウの前半に正しい記述として置いたうえで、後半で競争の焦点の向きを逆にする形で再利用している。一方、このモデルのもう一つの核心である生産性のジレンマと脱成熟が問われたのは図表問題のH25第18問が最後で、以後13年間出題がない。技術経営は毎年複数問が出る稼ぎ頭の分野であり、R08では未消化のこの側面から問われる余地がある。段階の順序と、各段階で何が主役に変わるかを押さえたい。

#技術経営・イノベーション

← 予想問題の一覧へ戻る