この問題は本試験の過去問ではありません。当サイトが出題傾向の分析に基づいて作成したオリジナル問題です。
第11問
論点:中小受託取引適正化法(取適法)の適用基準
「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」(令和 7年法律第41 号)により、下請代金支払遅延等防止法は「製造委託等に係る中小受託 事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(中小受託取引適正化法。以 下「取適法」という。)に改められ、令和8年1月1日から施行されている。取適法は、 ①取引の内容と②委託事業者・中小受託事業者の規模の2つの観点から、その適用対 象を定めている。 取適法の適用対象等に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 改正により資本金基準は撤廃され、適用対象は従業員基準のみによって定められることとなった。
- イ 適用対象となるためには、委託事業者が資本金基準と従業員基準の両方を満たす必要がある。
- ウ プログラムの作成、運送、保管、情報処理に係る委託については、委託事業者の基準は資本金5,000 万円超または従業員100 人超である。
- エ 新たに適用対象取引に追加された「特定運送委託」は、製造委託・修理委託と同一の区分に置かれ、その従業員基準は300 人超である。
- オ 委託事業者には、4つの義務と12 の遵守事項(禁止行為)が課されている。
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正解:エ
解答:エ
取適法は、①取引の内容と②資本金基準又は従業員基準の2つから適用対象を定める。改正の核心は「従来の資本金基準に加え、従業員基準(300人、100人)が追加され、規制及び保護の対象が拡充される」点であり、資本金基準は維持されていること、いずれかの基準に該当すれば適用対象となることが要点。
- ア(×):資本金基準は撤廃されていない。公取委リーフレットは「従来の資本金基準に加え、従業員基準(300人、100人)が追加され、規制及び保護の対象が拡充されます」と明示しており、資本金基準に従業員基準が上乗せされた関係にある。「撤廃」は改正の理解を逆にした誤り。
- イ(×):適用対象は「資本金基準又は従業員基準」から定められ、「いずれかの基準に該当すれば適用対象」となる。両方を満たすことを要するとすれば対象はかえって狭まり、規制・保護の対象を拡充するという改正の趣旨と正反対になる。
- ウ(×):区分が逆。プログラムの作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理に「限る」ものは、製造委託・修理委託・特定運送委託と同じ区分に置かれ、委託事業者の基準は資本金3億円超/資本金1,000万円超3億円以下/従業員300人超である。資本金5,000万円超・従業員100人超は、これら4つを「除く」情報成果物作成委託・役務提供委託の区分の基準であり、両区分を入れ替えた誤り。
- エ(○):「特定運送委託」(製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託)は本改正で新規に追加された対象取引である。これは製造委託・修理委託等と同一の区分に位置づけられ、その区分の委託事業者の基準は資本金3億円超/資本金1,000万円超3億円以下/従業員300人超であるから、従業員基準は300人超となる。設問のとおり。
- オ(×):リーフレットは「委託事業者には、4つの義務と11の遵守事項が課されています」とする。11項目のままで数は変わらない。「⑪協議に応じない一方的な代金決定」が新設された一方、旧法の「割引困難な手形の交付」が「②支払遅延」に統合された(=支払手段として手形払等を用いることが禁止された)ため、差引きで項目数は不変。「12」は誤り。
参考(あわせて狙われる改正点)
- 改称は2本:下請代金支払遅延等防止法→中小受託取引適正化法/下請中小企業振興法→受託中小企業振興法(振興基準の根拠法)。中小企業基本法からは「下請」の語が消滅した。
- 用語:親事業者→委託事業者/下請事業者→中小受託事業者/下請代金→製造委託等代金。
- 4つの義務:①発注内容等を明示する義務(書面又は電磁的方法)/②書類等を作成・2年間保存する義務/③支払期日を定める義務(検査をするかどうかを問わず、受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内)/④年率14.6%の遅延利息を支払う義務。
- 書面交付義務は中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず電磁的方法によることが可能。
- 製造委託の対象物品に金型以外の型等を追加。
- ⑦報復措置の情報提供先に「事業所管省庁」が追加され、事業所管省庁に指導・助言権限が付与された(面的執行の強化)。
よって エ。
なぜこの論点を予想したか
下請法は過去19年で14回の最頻出。R02→R04→R06の偶数年サイクルでR08が当たり年。令和8年1月1日施行で法令基準日(令和8年5月1日)をクリアし、新法「取適法」として問われる初年度。とりわけ従業員基準の追加による適用対象の拡大は改正の核心であり、出題可能性が高い。
出典
- 公正取引委員会『中小受託取引適正化法』 https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html
- 公正取引委員会『取適法リーフレット No.01』(令和7年8月) https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf