第5章 ネットワーク

この章のねらい パソコン1台で完結する仕事はもうほとんどありません。社内のパソコン同士、そしてインターネットの向こう側と どうやってデータをやり取りしているのかを扱うのがこの章です。用語(LAN・TCP/IP・IPアドレス・DNS…)は 横文字だらけですが、「だれが・どの層で・何をしているか」という地図さえ持てば、バラバラの暗記が一本につながります。

過去問での出方:経営情報システムのなかでネットワークは最頻出テーマです(本章の対応過去問だけで40問超)。 特に「プロトコルと役割の組み合わせ」(HTTP・SMTP・DNS・DHCP…)は毎年のように出ます。 さらに近年はサブネットマスクからホスト数を計算させる問題(R05 第11問)OSI参照モデルの層と機器の対応(R05 第12問)無線LANの規格・周波数(R04 第1問)が定番です。計算問題は解き方を覚えれば確実な得点源になります。


5-0 この章の地図

ネットワークは「土台となる考え方(層モデル)」→「住所の仕組み(IPアドレス)」→「実際に使う道具(プロトコルと機器)」→ 「ケーブルなしでつなぐ(無線)」という順で理解すると、迷子になりません。

5-1 ネットワークの基礎        … LAN/WAN・OSI参照モデル7層・伝送速度
   │  「どこまでが社内で、通信は何層に分かれているか」の土台
   ▼
5-2 TCP/IPとIPアドレス        … IPv4のクラス・サブネットマスク・
   │                           プライベートアドレス・IPv6・ポート番号
   │  「ネット上の住所」の仕組み(★計算が出る)
   ▼
5-3 主要プロトコルと機器      … HTTP/SMTP/DNS/DHCP・
   │                           ルータ/スイッチ/ハブ・NAT
   │  「実際に使う言葉(規約)と装置」(★毎年の組合せ問題)
   ▼
5-4 無線LANと通信技術        … Wi-Fi規格・周波数帯・Bluetooth・
                               暗号化(WPA)・回線の種類

まずは5-1で「層(レイヤ)で分けて考える」という発想を身につけましょう。ここが全体の背骨になります。


5-1 ネットワークの基礎

ネットワークとは、そもそも何か

ネットワークとは、ひとことで言えば

「複数のコンピュータや機器をケーブルや電波でつなぎ、データをやり取りできるようにした仕組み

です。1台のパソコンだけでは、ファイルの共有もメールも、インターネットの閲覧もできません。 機器同士を「つなぐ」ことで初めて、情報を送り合えるようになります。

LANとWAN ― 「どこまでが自分の範囲か」で分ける

ネットワークは、カバーする範囲の広さで大きく2つに分けます。ここは用語の定番です。

呼び方 読み・正式名 範囲 イメージ
LAN ラン(Local Area Network) 一つの建物・事業所内などの狭い範囲 社内・自宅の中のネットワーク
WAN ワン(Wide Area Network) 離れたLAN同士をつなぐ広い範囲 本社と支社をつなぐ/通信事業者の網
  • LAN=「Local(局所)」。会社や自宅の構内につくる限定的なネットワークです。
  • WAN=「Wide(広域)」。離れた場所のLANとLANを結ぶ、より広いネットワークです。 通信事業者(NTTなど)が提供する回線を借りて構成します。
  【川崎本社のLAN】            【横浜支社のLAN】
  PC─PC─サーバ                  PC─PC─プリンタ
     │                              │
     └────────  WAN  ─────────────┘
        (離れたLAN同士を結ぶ広域網)

⚠️ 混同注意:LANとWANの取り違え H27 第10問では「限られたエリアの限定的ネットワーク=A」「A同士をつなぐ=B」という穴埋めが出ました。 正解は A=LAN、B=WANAとBを逆にした選択肢(A=WAN・B=LAN)が引っかけでした。 「Local=狭い、Wide=広い」と頭文字で覚えれば取り違えません。

💡 関連用語(H27 第10問で一緒に出た) - VAN(付加価値通信網):ただ回線でつなぐだけでなく、コード変換などの付加サービスも提供する通信網。 - VPN(Virtual Private Network):インターネット上に、暗号化された"仮想の専用線"を張る技術(→5-3・第6章)。

OSI参照モデル ― 通信を「7つの層」に分けて考える ★最重要

通信という複雑な作業を、役割ごとに7つの層(レイヤ)に分けて整理したのが OSI参照モデル(Open Systems Interconnection、ISOが提唱)です。 「郵便物を送る」ときに《手紙を書く人/宛名を書く係/配送する係/道路や車》と役割が分かれているのと同じで、 通信も層ごとに分業していると考えます。

下(第1層)から上(第7層)へ、次のように並びます。

名称 何をする層か 代表例(→5-2・5-3で詳述)
第7層 アプリケーション層 アプリが使う約束事 HTTP・SMTP・DNS
第6層 プレゼンテーション層 データの表現形式・変換 文字コード・暗号化
第5層 セッション層 通信の開始〜終了の管理 接続の確立・切断
第4層 トランスポート層 相手まで確実に届ける TCP・UDP・ポート番号
第3層 ネットワーク層 宛先を見て経路を選ぶ IP・ルータ
第2層 データリンク層 隣の機器へ渡す役 MACアドレス・スイッチ/ブリッジ
第1層 物理層 電気信号・電波そのもの ケーブル・リピータ・ハブ

💡 覚え方(下から上へ)(物理)・(データリンク)・(ネットワーク)・(トランスポート)・(セッション)・(プレゼン)・(アプリ)」。 試験でよく問われるのは下の3〜4層(物理・データリンク・ネットワーク・トランスポート)です。ここを重点的に。

つまずきポイント:「どの機能は、どの層の話か」

OSI参照モデルは、「この作業は第◯層」という対応を問う形で出ます。特に大事なのが次の2点です。

  • IPアドレスを付けてパケットを送り出す=ネットワーク層(第3層)。 TCPのデータに発信元・宛先のIPアドレスを付けてIPパケットを作り、ネットワークに送り出すのは第3層の仕事です。
  • イーサネット(有線LANの基本仕様)=物理層+データリンク層(下位2層)。 「イーサネットはアプリケーション層で規定される」といった記述は上下の取り違えでバツです。

📝 過去問はこう出る(H25 第10問) OSI参照モデル7層とネットワーク接続の正誤問題。正解は 「TCPパケットに発信元のIPアドレスを付けてIPパケットを作り送り出すのは、ネットワーク層に該当する」。 一方、「Bluetoothは物理層を規定していない」(→実際は物理層も規定)、 「イーサネットはアプリケーション層・プレゼンテーション層で規定」(→実際は物理層・データリンク層)は いずれも層の取り違えでバツ。 → H25 第10問

伝送速度の基礎(bpsと単位)

ネットワークの「速さ」は、1秒間に何ビット送れるかで表します。単位は bps(bit per second/ビット毎秒)です。

  • 1 Mbps = 1秒間に約100万ビット、1 Gbps = 約10億ビット。M(メガ)<G(ギガ)の順に大きくなります。
  • 注意:通信は「ビット」、ファイル容量は「バイト」。1バイト=8ビットなので、 「100 Mbpsの回線で1バイトあたり8ビット」という関係を押さえておくと、速度と容量の換算問題に対応できます。

「理論上の速さ」と「実際の速さ」は違う ― 性能指標

回線に書かれた速度(理論値)どおりに、いつも速いわけではありません。ここはR05 第13問で正面から問われました。

用語 読み 意味
帯域幅 たいいきはば 単位時間に伝送可能な最大容量(理論上の上限)
スループット 単位時間の実際のデータ伝送量(実効値)
レイテンシ 転送要求を出してからデータが届くまでの遅延時間
輻輳 ふくそう トラフィック(通信量)集中による混雑。実効速度低下の原因
ジッタ データ到着間隔のゆらぎ。音声・映像の乱れの原因
  • 通信の速さはスループットだけでは決まらず、レイテンシ(遅延)も効く、という視点が大事です。
  • パケットロスやジッタは、テレビ会議の映像・音声の乱れを生みます。

📝 過去問はこう出る(R05 第13問) 性能用語の穴埋め。正解は「A:帯域幅/B:輻輳/C:スループット/D:レイテンシ/E:ジッタ」。 「ping値」は遅延を"測る指標名"であって空欄に入る概念語ではない、という点が引っかけでした。 → R05 第13問


5-2 TCP/IPとIPアドレス

TCP/IPとは ― インターネットの共通言語

TCP/IPは、インターネットで使われるプロトコル(通信の約束事)の集まりです。 中心となる2つの名前をとって、こう呼びます。

  • IP(Internet Protocol)宛先まで届ける役。データをパケット(小包)に分け、IPアドレスを頼りに経路を選んで運びます(ネットワーク層)。
  • TCP(Transmission Control Protocol)確実に届いたか確認する役。届かなければ再送して信頼性を保ちます(トランスポート層)。

IPアドレス ― ネット上の「住所」

IPアドレスは、ネットワークにつながる機器一つひとつに割り振られる住所(番号)です。 これがないと、データを「どこに届けるか」が分かりません。

IPv4(従来から使われている方式)のIPアドレスは、32ビットの数字です。 人が読みやすいように8ビットずつ4つに区切り、10進数で表します。

  192  .  168  .   0  .   1
 ┌──┐   ┌──┐   ┌─┐   ┌─┐
 8bit   8bit   8bit  8bit   … 合わせて 32ビット
(各区切りは 0〜255 の値をとる)
  • IPアドレスは、前半=ネットワーク部(どのネットワークか)と、後半=ホスト部(その中のどの機器か)に分かれます。
  • 郵便に例えると、ネットワーク部=町名・番地ホスト部=各部屋番号のイメージです。

📝 過去問はこう出る(H28 第10問) 正解は「IPv4のIPアドレスは32ビットからなり、ネットワーク部とホスト部から構成される。 CIDR表記では 211.11.0.1/16 のように、"/"以下にネットワーク部のビット数を記す」。 「MACアドレスは64ビット」(→実際は48ビット)などが引っかけでした。 → H28 第10問

サブネットマスクとCIDR表記 ― どこまでがネットワーク部か

「32ビットのうち、どこまでがネットワーク部か」を示すのがサブネットマスクです。 1が並んでいる部分がネットワーク部、0の部分がホスト部を表します。

  • CIDR表記(サイダー表記)/27 のように、ネットワーク部が何ビットかを「/」の後ろに書く省略記法です。 /27 なら「先頭から27ビットがネットワーク部」を意味します。

★計算:サブネットマスクから「使えるホスト数」を求める

これはR05 第11問で出た定番の計算です。手順で覚えれば必ず解けます。

例題:ネットワークアドレス 172.16.16.32/27、サブネットマスク 255.255.255.224 のとき、 ホストとして使えるIPアドレスは最大いくつか。

【ステップ1】ホスト部のビット数を求める
   IPアドレスは全部で 32ビット。ネットワーク部は /27 なので 27ビット。
   ホスト部 = 32 − 27 = 5ビット

【ステップ2】ホスト部で表せるアドレスの総数を求める
   5ビットで表せる組合せ = 2の5乗 = 2×2×2×2×2 = 32個

【ステップ3】使えない2つを引く
   ・すべて0 … ネットワークアドレス(そのネットワーク自体を指す)→ 機器に割当不可
   ・すべて1 … ブロードキャストアドレス(全員宛て)      → 機器に割当不可
   使えるホスト数 = 32 − 2 = 30個  ← 答え

💡 公式化:ホスト部が n ビットなら、使えるホスト数 = 2のn乗 − 2。 (−2は「ネットワークアドレス」と「ブロードキャストアドレス」の分。ここを引き忘れるのが最大のミス)

📝 過去問はこう出る(R05 第11問) /27 のホスト数を問う問題。正解は 30(=2⁵−2)。 「16」(2⁴で計算し−2もしていない)、「32」(−2を忘れた)が典型的な誤答選択肢。 → R05 第11問

IPアドレスのクラス(クラスA・B・C)

IPv4では、ネットワークの規模に応じてアドレスをクラスに分ける考え方があります(基礎知識として)。

クラス ネットワーク部 規模 用途イメージ
クラスA 先頭8ビット 超大規模 巨大組織
クラスB 先頭16ビット 中規模 中堅組織
クラスC 先頭24ビット 小規模 小さなネットワーク
  • クラスAはホスト部が広く(多くの機器を収容でき)、クラスCはホスト部が狭い、という関係です。
  • ※現在は、このクラスの区切りにとらわれず、CIDRで「/○○」と自由にネットワーク部の長さを決める方式が主流です。

プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレス

IPアドレスには、使える場所によって2種類あります。

種類 使える範囲 イメージ
グローバルIPアドレス インターネット全体で通用する(世界で重複しない) 建物の「正式な住所」
プライベートIPアドレス 社内・家庭内のLANの中だけで使う 建物内の「内線番号」
  • プライベートIPアドレスは社内で自由に使えますが、そのままではインターネットに出られません。
  • インターネットに出るときは、後述のNATでグローバルIPアドレスに変換します(→5-3)。

IPv6 ― アドレスが足りなくなった問題への答え

IPv4(32ビット)では、世界中の機器に配るとアドレスが足りなくなりました。 そこで登場したのがIPv6です。

  • IPv6は128ビット。IPv4(32ビット)とは比べものにならないほど桁違いに多いアドレスを扱えます。
  • IPv6はプレフィックス(ネットワークを表す前半)とインタフェースID(機器を表す後半)で構成されます。
  • ⚠️ 重要:IPv4とIPv6には互換性がありません。IPv4機器とIPv6機器はそのままでは直接通信できず、 トンネリングや変換(トランスレータ)の仕組みが必要です(R04 第8問の引っかけ)。

📝 過去問はこう出る(R04 第8問) IPアドレス・ドメインの正誤問題。正解は 「トップレベルドメインは、分野別(gTLD)と国別(ccTLD)に大別される」。 「IPv4とIPv6には互換性があるので直接通信できる」(→互換性はない)、 「NATはドメイン名とIPアドレスを対応づける」(→それはDNSの役割)は誤り。 → R04 第8問

ポート番号 ― 「どのアプリ宛てか」を示す番号

IPアドレスが「どの機器(住所)宛てか」を示すのに対し、ポート番号は 「その機器の中のどのアプリ(サービス)宛てか」を示す番号です。マンションの部屋番号のようなものです。

  • 例:Web(HTTP)は80番、暗号化Web(HTTPS)は443番、メール送信(SMTP)は25番…と、 よく使うサービスには決まった番号(ウェルノウンポート)が割り当てられています。
  • IPアドレス(住所)+ポート番号(部屋)の組で、「どの機器のどのアプリ宛てか」が一意に決まります。

5-3 主要プロトコルと機器

プロトコルとは ― 通信の「共通ルール」

プロトコルとは、機器同士が通信するための共通の約束事(規約)です。 人間同士が「日本語」という共通ルールで話すのと同じで、機器も同じプロトコルを使わないと会話が成立しません。

このテーマは毎年のように「役割とプロトコル名の組み合わせ」で出題されます。 下の表を、「何をする」→「プロトコル名」の向きで言えるようにするのが得点への近道です。

主要プロトコル一覧(★最頻出)

プロトコル 読み 何をするか 層/ポート例
HTTP エイチティーティーピー Web閲覧。ブラウザとWebサーバ間でHTMLをやり取り アプリ層/80
HTTPS HTTPを暗号化したもの(SSL/TLSを利用) アプリ層/443
SMTP エスエムティーピー メールの送信・サーバ間転送 アプリ層/25
POP3 ポップスリー メールの受信(サーバから取り出す) アプリ層/110
IMAP アイマップ メールの受信(サーバ上で管理したまま読む) アプリ層
MIME マイム メールで画像・音声・動画など多様なデータを扱う拡張
DNS ディーエヌエス ドメイン名⇔IPアドレスを対応づける(名前解決) アプリ層/53
DHCP ディーエイチシーピー 機器にIPアドレス等を自動割当 アプリ層
FTP エフティーピー ファイルの転送(アップロード・ダウンロード) アプリ層
SNMP エスエヌエムピー ネットワーク機器の監視・管理 アプリ層
NTP エヌティーピー 機器の時計を協定世界時に同期 アプリ層
SSL/TLS 通信データの暗号化 ―/443等
TCP ティーシーピー 確実に届ける(再送あり・信頼性重視) トランスポート層
UDP ユーディーピー 速さ優先(再送なし・リアルタイム向け) トランスポート層
IP アイピー 経路選択とアドレス指定(宛先へ届ける) ネットワーク層

つまずきポイント:似た者同士を区別する

試験は、役割が似ているプロトコルのすり替えで引っかけてきます。次の対比は必ず押さえましょう。

  • TCP と UDP:TCP=確認・再送あり/信頼性重視。UDP=確認・再送なし/速さ・リアルタイム重視(音声・動画向け)。
  • SMTP と POP3/IMAP:SMTP=送信。POP3・IMAP=受信
  • DNS と DHCP:DNS=名前⇔IPアドレスの変換。DHCP=IPアドレスの自動割当。(ここは超頻出のすり替えポイント)
  • DNS と NAT:DNS=名前解決。NAT=プライベートIP⇔グローバルIPの変換
  • NTP と NNTP:NTP=時刻同期。NNTP=ネットニュース配信(別物)。
  • HTTP と SMTP:Web受信はHTTP。SMTPをWeb用と書いたら誤り。

📝 過去問はこう出る(R07 第5問) 記述とプロトコル名の組み合わせ。正解は 「a=UDP(速さ優先・再送なし)/b=DHCP(IPアドレス自動割当)/c=IP(経路選択とアドレス指定)」。 a を TCP(再送あり→速さ優先ではない)、b を SNMP(監視・管理用)、c を ARP(IP→MAC変換)とした選択肢は誤り。 → R07 第5問

📝 過去問はこう出る(R06 第9問) プロトコルの役割の正誤問題。正解は 「MIMEは、電子メールでテキスト以外の音声・画像・動画などを扱う際に用いられる」。 「DHCPがドメイン名とIPを関連づける」(→DNS)、「DNSがプライベート⇔グローバルIP変換」(→NAT)、 「NNTPが時刻同期」(→NTP)、「SMTPでWebのHTMLを受け取る」(→HTTP)は、すべて役割のすり替えでバツ。 → R06 第9問

📝 過去問はこう出る(H30 第9問) 4つの記述とプロトコルの組み合わせ。正解は 「①SMTP(メール送信・サーバ間転送)/②DHCP(IPアドレス自動割当)/③SNMP(機器の監視・制御)/④NTP(時刻を協定世界時に同期)」。 ①をIMAP(受信用)とした選択肢は不一致でバツ。R04 第7問(HTTP・POP3・MIME・SSL/TLS)、H20 第8問(TCP/IP・HTTP・FTP・SMTP・POP)も同じ「役割⇔プロトコル」型です。 → H30 第9問R04 第7問H20 第8問

DNS・DHCP・NAT ― インターネットを支える3つの基盤機能

初心者がとくに混同しやすい3つを、「入力→出力」で整理します。

機能 何を→何に 一言で
DNS ドメイン名(例:london3.jp)→ IPアドレス 名前を住所に翻訳する電話帳
DHCP (接続してきた機器へ)→ IPアドレス等を自動配布 住所を自動で貸し出す受付
NAT プライベートIP ⇔ グローバルIP 内線番号を外線番号に変換する交換機

📝 過去問はこう出る(H23 第12問) a〜cと機能名の組み合わせ。正解は 「a=DNS(名前とIPの対応)/b=DHCP(IP自動割当)/c=NAT(グローバル⇔プライベート変換)」。 この3つの区別はネットワーク分野で最頻出です。 → H23 第12問

💡 LAN接続に必要な設定項目(H26 第12問) パソコンをLANにつなぎインターネットを使うには、最低限 ①自分のIPアドレス ②サブネットマスク ③デフォルトゲートウェイ(ルータ)のIPアドレス ④DNSサーバのIPアドレス の4つが必要です。DHCPはこの4つを"自動で"設定してくれるだけで、必要な項目自体は変わりません。 なおMACアドレスは機器(NIC)に固定された固有値なので、利用者が設定する項目ではありません。 → H26 第12問

ネットワーク機器 ― どの層で働くかで役割が決まる ★頻出

ネットワーク機器は、OSI参照モデルのどの層で中継するかで役割がはっきり分かれます。ここはR05 第12問の核心です。

機器 動く層 何をするか
リピータ/ハブ 第1層(物理層) 弱まった電気信号を増幅して中継。単純な中継役
ブリッジ/スイッチ(L2) 第2層(データリンク層) MACアドレスを見て、必要な相手だけにフレームを中継
ルータ 第3層(ネットワーク層) IPアドレスを見て、異なるネットワーク間の経路を選択して中継
ゲートウェイ 第4層以上(トランスポート層〜) プロトコルが異なるネットワーク同士を接続・変換
アクセスポイント 無線LANで端末の接続要求を受け、ネットワークへ中継
  【層で見た中継装置】
  第4層〜 : ゲートウェイ(違うプロトコル同士をつなぐ・変換する)
  第3層   : ルータ(IPアドレスで経路を選ぶ=ネットワーク同士をつなぐ)
  第2層   : スイッチ/ブリッジ(MACアドレスで宛先だけに送る)
  第1層   : リピータ/ハブ(信号を増幅してそのまま流すだけ)
  • 上の層まで見る機器ほど「賢い」(多くの情報を判断材料にする)と考えると、順番を覚えやすくなります。
  • ルータ=第3層(IPアドレスで経路選択)は最頻出。これが分かれば選択肢を一気に絞れます。

📝 過去問はこう出る(R05 第12問) LAN構成装置と役割の組み合わせ。正解は 「a=リピータ(物理層)/b=ブリッジ(データリンク層)/c=ルータ(ネットワーク層)/ d=ゲートウェイ(トランスポート層以上)/e=アクセスポイント(無線)」。 R01 第12問も「ルータ=第3層(ネットワーク層)」が正解を絞る鍵でした。 → R05 第12問R01 第12問

⚠️ 混同注意:ハブの種類 - リピータハブ:受け取った信号を全ポートにそのまま流す(物理層)。無駄が多く、現在はほぼ使われません。 - スイッチングハブ宛先(MACアドレス)を見て必要なポートだけに送る(データリンク層)。現在の主流。

NAT ― 内と外をつなぐ「住所の変換」

NAT(Network Address Translation)は、社内で使うプライベートIPアドレスを、 インターネットで通用するグローバルIPアドレス変換する仕組みです。 これにより、数少ないグローバルIPアドレスで、社内の多くの機器がインターネットにアクセスできます。

  • ⚠️ NATはDNSではありません。DNSは「名前⇔IPアドレス」の変換、NATは「プライベートIP⇔グローバルIP」の変換です。
  • 複数機器で1つのグローバルIPを共有するために、ポート番号も併用する方式をNAPT(IPマスカレード)と呼びます。

(セキュリティの入り口)VPN・ファイアウォール・DMZ

社外から社内へ安全につなぐ仕組みも、ネットワーク分野で頻出です(詳細は第6章)。

用語 何をするか
VPN インターネット上に暗号化された仮想専用線を張り、社外から社内へ安全に接続
ファイアウォール 通信を検査し、ルールに合わないパケットを遮断(防火壁)
DMZ(非武装地帯) 公開サーバ(Webサーバ等)を内部LANから隔離して置く緩衝地帯

📝 過去問はこう出る(H30 第10問/R02 第10問) H30 第10問の正解は「A:VPN/B:ファイアウォール/C:DMZ/D:ルータ」。 R02 第10問では「SSL/TLS=暗号化プロトコル」「VPN=仮想専用ネットワーク」が正しい記述。 「IDSが暗号化の仕組み」(→IDSは侵入検知)、「DMZがIPアドレスを自動割当」(→それはDHCP)は誤り。 → H30 第10問R02 第10問


5-4 無線LANと通信技術

無線LAN(Wi-Fi)とは

無線LANは、ケーブルの代わりに電波でつなぐLANです。配線なしで機器を自由に置けるため、中小企業でも広く使われます。 規格の名前はIEEE802.11 で始まり、末尾のアルファベット(a/b/g/n/ac…)で世代を表します。

規格 使う周波数帯 特徴
IEEE802.11b/g 2.4GHz帯 障害物に強いが、電子レンジ等と干渉しやすい
IEEE802.11a/ac 5GHz帯 高速。他の家電と干渉しにくい
IEEE802.11n 2.4GHz/5GHz 両対応 どちらの帯域も使える。11acと5GHz帯で通信可能
  • ⚠️ 周波数帯の取り違えに注意11gは2.4GHz帯の規格です(「5GHz帯」と書いたら誤り)。 電子レンジは2.4GHz帯を使うため、2.4GHz帯の無線LAN(b/g)は電子レンジの干渉を受けやすいのです。

📝 過去問はこう出る(R04 第1問) 無線通信技術の正誤(組合せ)。正解は aとc。 「a:11nは11acと通信可能(両者は5GHz帯を共有でき上位互換)」、 「c:Bluetoothは周波数ホッピングで電波干渉を軽減できる」が正しい。 「b:11gは5GHz帯を利用するので」(→11gは2.4GHz帯)、「d・e:Bluetoothが5GHz帯を使う」(→Bluetoothは2.4GHz帯専用)は誤り。 → R04 第1問

アクセス制御方式:CSMA/CA と CSMA/CD

複数の機器が同時に電波(信号)を出すと、データがぶつかって壊れます(コリジョン=衝突)。 これを避ける仕組みがアクセス制御方式で、有線と無線で方式が違う点が問われます。

方式 使う場面 考え方
CSMA/CD 有線LAN(イーサネット) 衝突を検出(Detection)したら、再送する
CSMA/CA 無線LAN 送信前にランダムな時間待ち、衝突を回避(Avoidance)する
  • 無線は「衝突したかどうかの検出が難しい」ため、先に待って衝突を避ける(CA=Avoidance)方式を使います。
  • ⚠️ CD(有線)とCA(無線)の取り違えは定番の引っかけです。「Avoidance=Avoid(避ける)=無線」と覚えましょう。

📝 過去問はこう出る(R02 第9問) 無線LANの用語の正誤問題。正解は 「CSMA/CAは、送信前にしばらく待ってからコリジョンを回避する」。 「マルチSSID=複数APに同一SSID」(→実際は1台のAPに複数のSSIDを設定する機能)、 「暗号化規格LTE」(→LTEは携帯電話の規格。無線LANの暗号化はWPA/WPA2)は誤り。 → R02 第9問

SSIDと無線LANの暗号化(WPA)

  • SSID:無線LANのアクセスポイントの識別名(ネットワークの名前)。同じSSIDを設定した機器同士が通信します。
  • 暗号化方式:電波は傍受されやすいため、通信を暗号化します。歴史的に次の順で強くなりました。
  • WEP(古い・脆弱で現在は非推奨)→ WPAWPA2AES暗号を利用し強固)→ WPA3。
  • ⚠️ WEPは脆弱。安全なのはWPA2/AESの組み合わせです。「WEPが安全」「LTEが無線LANの暗号化規格」は誤り。
  • WPS:暗号設定を簡単にする補助機能であって、認証・暗号化方式そのものではありません(混同注意)。

📝 過去問はこう出る(H28 第11問) 無線LANルータの設置・設定の穴埋め。正解は 「A:スイッチングハブ(LAN端子を分岐)/B:ブリッジ(2台目はルータ機能を止めて使う)/ C:WPA-AES(安全な認証・暗号化)/D:チャネル(近隣と重ならないよう変更)」。 WEPやWPS-PSKを暗号化方式として選ぶと不適でした。 → H28 第11問

Bluetoothとその他の近距離無線

  • Bluetooth:機器同士を近距離でつなぐ無線技術(イヤホン・キーボード等)。2.4GHz帯専用で、 周波数を細かく切り替える周波数ホッピングにより電波干渉を軽減します(→R04 第1問)。
  • ほかに、かざすだけで通信するNFC(交通系ICカード等)などがあります。

WAN側の回線 ― インターネットへの入口

社内LANをインターネット(WAN側)につなぐには、回線終端の装置が必要です。

  • ONU(光回線終端装置):光ファイバーの光信号を、機器が扱える電気信号に変換します。
  • モデム:CATV回線などとLANの橋渡しをします。
  • ONU/モデムに無線機能がないときは、無線LANルータを追加してWi-Fi環境をつくります(→H28 第11問)。

この章のまとめ(試験直前チェック)

  • LAN=狭い範囲(構内)/WAN=離れたLANをつなぐ広域網(LとWの取り違えに注意)
  • OSI参照モデルは7層。下から 物理・データリンク・ネットワーク・トランスポート・セッション・プレゼン・アプリ
  • IPアドレスでパケットを送り出す=ネットワーク層(第3層)/イーサネット=物理・データリンク層
  • ☐ 性能:帯域幅(理論最大)/スループット(実効)/レイテンシ(遅延)/輻輳(混雑)/ジッタ(ゆらぎ)
  • IPv4=32ビット(ネットワーク部+ホスト部)/MACアドレス=48ビットIPv6=128ビット
  • IPv4とIPv6に互換性はない(そのままでは直接通信できない)
  • ☐ サブネット計算:使えるホスト数 = 2のn乗 − 2(nはホスト部のビット数。−2を忘れない)
  • プライベートIP(社内だけ)⇔ グローバルIP(世界で通用)、変換はNAT
  • ポート番号=どのアプリ宛てか(HTTP:80/HTTPS:443/SMTP:25 など)
  • ☐ プロトコル:HTTP=Web/SMTP=送信/POP3・IMAP=受信/MIME=画像等/FTP=ファイル転送/SNMP=監視/NTP=時刻同期
  • TCP=確実(再送あり)/UDP=速い(再送なし・リアルタイム)
  • DNS=名前⇔IP/DHCP=IP自動割当/NAT=プライベート⇔グローバル(3つの区別は最頻出)
  • ☐ 機器:リピータ/ハブ=物理層/スイッチ/ブリッジ=データリンク層/ルータ=ネットワーク層/ゲートウェイ=上位層
  • ☐ 無線:11g/bは2.4GHz(電子レンジと干渉)/11a/acは5GHzCSMA/CA=無線・CSMA/CD=有線
  • ☐ 無線の暗号:WEPは脆弱/WPA2-AESが安全、SSID=アクセスポイントの名前

この章に対応する主な過去問

年度・問 論点 リンク
H25 第10問 OSI参照モデル7層とネットワーク接続 問題
H27 第10問 LAN・WAN・VAN・VPN 問題
R05 第13問 ネットワークの性能指標 問題
R05 第11問 サブネットマスクと利用可能ホスト数 問題
H28 第10問 IPアドレス(IPv4/IPv6)・MACアドレス 問題
R04 第8問 IPアドレスとドメイン 問題
R07 第5問 通信プロトコル(UDP・DHCP・IP) 問題
R06 第9問 通信プロトコルの役割 問題
H30 第9問 通信プロトコル(SMTP・DHCP・SNMP・NTP) 問題
R04 第7問 通信プロトコル(HTTP・POP3・MIME・SSL/TLS) 問題
H20 第8問 プロトコルと機能の対応 問題
H23 第12問 DNS・DHCP・NAT 問題
H26 第12問 LAN接続に必要な設定項目 問題
H26 第10問 サーバ・機器とプロトコルの組合せ 問題
R05 第12問 LAN構成装置とOSI参照モデルの層 問題
R01 第12問 ネットワーク機器とOSI参照モデルの階層 問題
R04 第1問 無線通信技術(無線LAN規格・周波数) 問題
R02 第9問 無線LAN(SSID・CSMA/CA・暗号化) 問題
H28 第11問 無線LANルータの設置・運用 問題
H30 第10問 社外からの安全なアクセス(VPN・FW・DMZ) 問題
R02 第10問 通信の暗号化・セキュリティ用語 問題

次章予告 ▶ 第6章「Web・インターネットと情報セキュリティ」 本章で土台をつくったネットワークの上で動く、Webの仕組み(URL・ドメイン・HTML)と、 安全に使うための情報セキュリティ(暗号化・認証・ファイアウォール・マルウェア対策など)を掘り下げます。 本章で顔を出したVPN・DMZ・SSL/TLSが、ここで本格的に主役になります。