賃金・労働時間(神奈川県)

男女差は縮まりました。年齢差は広がりました。

このページも「神奈川県」の数字です:賃金構造基本統計調査は都道府県単位までしか公表されていません。川崎市だけの数値は e-Stat では取れないため、神奈川県の数字を東京都・全国とならべています。川崎市民の41.9%は東京で働くため(通勤・通学の流動)、実際に受け取る賃金は県の数字と東京の数字のあいだにあると考えるのが自然です。

このページの要点

① 所定内給与額は男性38万7,900円、女性29万9,100円(2024年・月額)。全国(男36万3,100円)を上回りますが、東京都(男44万800円)の88%にとどまります。

② 女性は男性の77.1%。1985年の63.8%から13.3ポイント改善しました。ただしいまも4分の3です。

③ 年功カーブは50年で急になりました。55〜59歳と25〜29歳の賃金比は1975年の1.40倍から2008年の1.72倍へ。若い人の賃金だけが伸びていません。

50年で賃金はどう動いたか

所定内給与額の推移(1975年〜2024年・神奈川県)

月額(円)/棒が男女の給与、折れ線が女性÷男性の比率

読み方:男性は1975年の14万4,400円から1995年の34万8,500円へ2.4倍に伸びたあと、30年近く横ばいです。2024年は38万7,900円で、1995年比わずか+11.3%。
女性は9万6,200円から29万9,100円へ3.1倍。男性より伸びています。
折れ線(女性÷男性)は1985年の63.8%が底で、そこから77.1%まで13.3ポイント改善しました。
1995年以降の30年、日本の賃金が伸びていないことが、そのまま見えます。

出典:総務省「社会・人口統計体系 都道府県データ」(原典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)をもとに作成

地域による差(2024年)

所定内給与額(月額・円)/神奈川県を濃い色で表示

読み方:東京都が男性44万800円で突出しています。神奈川県(38万7,900円)は東京都の88.0%。差は5万2,900円です。
全国平均(36万3,100円)は上回っており、大阪府(38万2,200円)とほぼ同水準、愛知県(36万3,000円)より上です。
川崎市民の41.9%は東京で働きます。その人たちが受け取っているのは東京都の水準に近い賃金です。「政令指定都市20市 データ比較」のページで見た川崎市の納税者1人あたり所得20市2位は、この構造から生まれています。

出典:総務省「社会・人口統計体系 都道府県データ」をもとに作成

年齢で、差が広がった

年齢階級別の所定内給与額(1975年〜2008年・神奈川県・男性)

月額(円)/折れ線は55〜59歳 ÷ 25〜29歳の比率

読み方:1975年、55〜59歳の賃金は25〜29歳の1.40倍でした。2008年には1.72倍。年功カーブが急になっています。
中身を見ると、55〜59歳は16万9,000円から44万2,000円へ2.6倍。いっぽう25〜29歳は12万円から25万8,000円へ2.2倍にとどまります。
とくに2000年から2008年は、25〜29歳が25万8,000円のまま横ばい。この8年、若手の賃金はまったく上がりませんでした。
「就職氷河期世代」が受けた影響が、この線に表れています。この統計は2008年までしか年齢別が取れませんが、その後も構図は大きく変わっていません。

出典:総務省「社会・人口統計体系 都道府県データ」をもとに作成

従業員規模による差(1975年〜2008年・神奈川県)

所定内給与額(月額・円)/10〜99人規模と100〜999人規模の比較

読み方:意外なことに、10〜99人と100〜999人の差はほとんどありません。1975年は99.3%、1995年には100.2%と逆転すらしています。
差が開いたのは2000年代です。2005年に93.0%まで広がり、2008年に97.0%へ戻りました。
ただしこの統計には「1,000人以上」の規模が含まれていません。一般に賃金差が大きいのは1,000人以上の企業との比較です。「中小企業と大企業に差がない」と読むのは誤りです。ここで言えるのは、10〜99人と100〜999人のあいだには大きな差がないということだけです。

出典:総務省「社会・人口統計体系 都道府県データ」をもとに作成

初任給と労働時間

新規学卒者の初任給(2024年・神奈川県)

所定内給与額(月額・円)

読み方:大学卒は男性26万2,900円、女性24万1,300円。初任給の時点で2万1,600円の差があります(女性は男性の91.8%)。
高校卒は男性20万8,400円、女性20万2,200円。学歴による差は、高卒と大卒で男性5万4,500円。
興味深いのは高専・短大卒です。女性23万4,500円に対し男性22万500円で、女性のほうが1万4,000円高い。看護・医療技術系など、女性の比率が高く専門性の高い職種が含まれるためと考えられます。

出典:総務省「社会・人口統計体系 都道府県データ」をもとに作成

労働時間の推移(1975年〜2024年・神奈川県・男性)

1か月あたりの実労働時間(時間)/所定内と超過の積み上げ

読み方:合計の労働時間は1975年の月189時間から2024年の175時間へ、14時間(7.4%)減りました。
中身を見ると、減ったのは主に超過労働(残業)です。1990年の月25時間がピークで、2024年は14時間。44%減っています。
所定内労働時間は175時間から161時間へ8.0%減。週休二日制の定着による変化です。
賃金は30年横ばい、労働時間は減った。時間あたりで見れば、賃金はわずかに改善しているといえます。

出典:総務省「社会・人口統計体系 都道府県データ」をもとに作成

解説:30年動かなかった数字

1995年から、ほぼ横ばい

神奈川県の男性の所定内給与額は、1975年の14万4,400円から1995年の34万8,500円へ、20年で2.4倍になりました。

ところが、そこから先が動きません。2005年35万5,700円、2015年36万4,600円、2019年36万7,600円。2024年でようやく38万7,900円——1995年比でわずか+11.3%です。29年で1割強しか増えていません。

女性は9万6,200円から29万9,100円へ3.1倍。男性より伸びていますが、1995年の22万8,100円と比べると+31.1%。こちらも29年での伸びとしては大きくありません。

「日本の賃金が30年上がっていない」という話は、神奈川県の数字でそのまま確認できます。

男女差は13.3ポイント縮まった

明確に改善した指標もあります。男女の賃金差です。

女性の賃金は男性の何%か。1975年は66.6%、1985年に63.8%まで下がって底を打ち、そこから一貫して改善しました。1995年65.5%、2005年68.6%、2015年73.7%、そして2024年77.1%。

1985年から39年で13.3ポイントの改善です。

ただしいまも4分の3にとどまります。「職業構成と雇用形態」のページで見たとおり、川崎市の管理的職業従事者は男性2.7%に対し女性0.6%。「女性の年齢別就業率」で見たとおり、25〜29歳で90.3%の女性の労働力率が35〜39歳で76.7%に落ちます。賃金差の残り23ポイントは、この2つと直結しています。

なお2024年の男女比77.1%は、東京都76.8%、全国75.8%、大阪府75.1%、愛知県73.7%と比べてももっとも高い水準です。

東京とは5万2,900円の差

地域で比べると、東京都の高さが際立ちます。

2024年の男性の所定内給与額は、東京都44万800円、神奈川県38万7,900円、大阪府38万2,200円、全国36万3,100円、愛知県36万3,000円。

神奈川県は東京都の88.0%。差は5万2,900円、年収にすればおよそ63万円です。

ここで思い出したいのが、「通勤・通学の流動」のページで見た川崎市民の41.9%が他県(ほぼ東京)で働いているという事実です。

その人たちが受け取っているのは、神奈川県の水準ではなく東京都の水準に近い賃金です。「政令指定都市20市 データ比較」のページで見た川崎市の納税者1人あたり所得459.3万円(20市2位)、「1人あたり市税額」で見た市民税13万4,643円(20市2位)。川崎の所得の高さは、東京で稼いだお金が川崎に住んでいることから生まれています。

若手の賃金だけ上がらなかった

年齢別に見ると、もうひとつの構造が見えます。

55〜59歳の賃金を25〜29歳で割った比率は、1975年の1.40倍から2008年の1.72倍へ広がりました。年功カーブが急になったということです。

中身を見ると理由がはっきりします。55〜59歳は16万9,000円から44万2,000円へ2.6倍。25〜29歳は12万円から25万8,000円へ2.2倍。伸びの差が、そのままカーブの角度になりました。

とくに深刻なのが2000年から2008年です。25〜29歳の賃金は25万8,000円のまま、8年間まったく動きませんでした。同じ期間、55〜59歳は43万円から44万2,000円へ伸びています。

この8年に25〜29歳だった人は、いま45歳から53歳。いわゆる就職氷河期世代です。「職業構成と雇用形態」のページで見た正規雇用率の話とあわせて読むと、この世代が受けた影響の大きさがわかります。

なお、年齢別・規模別のデータは2008年までしか取れません。それ以降は都道府県別の内訳が公表されていないためです。

10〜99人と100〜999人に、大きな差はない

企業規模による賃金差はどうでしょうか。

意外なことに、10〜99人と100〜999人のあいだには、ほとんど差がありません。1975年は99.3%(10〜99人が100〜999人の何%か)、1985年99.0%、1995年には100.2%と逆転すらしています。

差が開いたのは2000年代です。2000年97.2%、2005年93.0%、2008年97.0%。もっとも開いた2005年でも7ポイントです。

ただし、これを「中小企業と大企業に差がない」と読むのは誤りです。この統計には1,000人以上の規模が含まれていません。一般に賃金差が大きいのは、まさにその1,000人以上との比較です。

ここで言えるのは、従業員10人の会社と500人の会社のあいだには、思われているほどの賃金差はないということだけです。「事業所の規模と中小企業比率」のページで見たとおり、川崎市の事業所の98.0%は従業者100人未満。大半の事業所は、この「差の小さい」領域で競い合っています。

残業は44%減った

労働時間は、確実に減っています。

男性の1か月あたり実労働時間は、1975年の189時間から2024年の175時間へ、14時間(7.4%)減りました。

減ったのは主に残業です。超過実労働時間は1990年の月25時間をピークに、2024年は14時間。44%減っています。所定内労働時間も175時間から161時間へ8.0%減りました。

賃金は30年横ばい、労働時間は減った。時間あたりの賃金で見れば、わずかながら改善しているといえます。ただし残業代が減ったぶん、手取りは増えていない可能性があります。

中小企業への示唆

1. 賃金の比較対象は東京都——神奈川県38万7,900円ではなく、東京都44万800円が実際の競合水準です。川崎の求職者は、東京の求人と比べて判断します。県平均を根拠に給与を設計すると、応募が来ません。

2. 規模の差は思われているほど大きくない——10〜99人と100〜999人で3〜7%。「うちは小さいから給与で勝てない」は、この範囲では思い込みです。勝負を分けるのは、給与の絶対額よりも通勤時間・柔軟性・仕事の裁量です。

3. 女性の賃金は77.1%。ここに採用の余地がある——「女性の年齢別就業率」のページで見たとおり、川崎では30代の女性およそ7,100人が仕事を離れています。男性水準に近い賃金を提示できれば、この層は動きます。大企業が横並びで動けない領域です。

4. 若手の賃金は市場が動き始めている——2024年の大卒初任給は26万2,900円。2020年からの4年で上昇局面に入りました。年功カーブを前提にした賃金表は、初任給から崩れます。若手の水準を先に決め、そこから積み上げる設計が必要です。

5. 残業では埋められない——超過労働は44%減。「残業代で稼げる会社」という訴求は、もう通用しません。基本給での勝負になります。

データの注意点

この統計は都道府県単位までしかありません。川崎市だけの賃金は e-Stat では取得できません。神奈川県の数値は、横浜市・相模原市・県西部を含む県全体のものです。

金額は「所定内給与額」の月額です。残業代、賞与、通勤手当などは含みません。年収ではありません。

2019年と2020年のあいだで、統計の区分が変わっています。2019年までと2020年からは別の項目として公表されているため、このページでは2つをつないで表示しています。接続部分(2019年36万7,600円 → 2020年36万2,400円)は連続していますが、厳密には同一系列ではありません。

年齢別・企業規模別のデータは2008年までです。それ以降、都道府県別のこれらの内訳は公表されていません。初任給と労働時間の新系列は2020年からです。

企業規模の区分は10〜99人と100〜999人の2つだけです。1,000人以上の規模は、この統計には含まれていません。

対象は常用労働者です。パート・アルバイトの扱いは調査の定義によります。