このページの要点
① 川崎市民の4割は他県へ働きに行く。市に住む就業者71万7,359人のうち、30万765人(41.9%)が他県で働いています。そのほとんどは東京都です。
② 出ていく人は、入ってくる人の1.8倍。市外へ通勤する流出人口38万6,043人に対し、市外から通勤してくる流入人口は21万3,931人。差し引き17万2,112人のマイナスです。
③ 昼夜間人口比率87.3%は政令市20市で最下位。昼になると人口が19万5,865人減ります。1位の大阪市(128.4%)とは41ポイントの差です。
通勤の流れ
川崎市の通勤流動(2020年・15歳以上就業者)
左が「どこに住んでいるか」、右が「どこで働いているか」。帯の太さが人数です
逆向きの流れ(市外から川崎市へ)は、県内の他市町村から12万3,831人、他県から9万100人。出ていく帯のほうが、入ってくる帯よりはっきり太いことが見て取れます。
これが川崎市の「ベッドタウン」としての姿です。夜は156万人が眠り、朝になると19.6万人分が外へ流れ出します。
出典:総務省「令和2年国勢調査 従業地・通学地による人口・就業状態等集計」をもとに作成。「川崎市で働く」には従業地が不詳の2万8,473人を含みます。
昼と夜で、人口はどれだけ変わるか
昼夜間人口比率ランキング(政令指定都市20市・2020年)
昼間人口 ÷ 夜間人口(%)/100%の線より下なら、昼に人が減る街です
逆に上位は大阪市(128.4%)、名古屋市(111.2%)、福岡市(108.8%)。周辺から人を集める「働く街」です。
川崎市の昼間人口は134万2,397人、夜間人口は153万8,262人。その差19万5,865人が、毎朝、市の外へ出ていく計算になります。
出典:総務省「令和2年国勢調査(従業地・通学地集計)」をもとに作成。就業者だけでなく通学者も含んだ人口ベースの数値です。
7区でどう違うか
区別の通勤先の内訳(2020年)
100%積み上げ/その区に住む就業者が、どこで働いているか
逆に川崎区は29.9%と際立って低く、自区内で働く人が51,246人(48.0%)と半数近くを占めます。臨海部の工業地帯という「職場」を抱えているからです。同じ市内で、働き方の地理がまったく違います。
出典:総務省「令和2年国勢調査 従業地・通学地による人口・就業状態等集計」をもとに作成
区別の「働く人 ÷ 住む人」(2020年)
その区で働く就業者 ÷ その区に住む就業者/1.0より大きければ、外から人を集めている区です
残る6区はすべて1.0未満。とくに宮前区と多摩区は0.51で、区で働く人が住む人の半分しかいません。純粋な住宅地です。
ビジネスへの示唆:平日の昼に人がいるのは川崎区と幸区。逆に宮前・多摩・麻生は昼間に人が減ります。飲食・サービス業の立地や営業時間の設計は、この差を踏まえたほうが合理的です。
出典:総務省「令和2年国勢調査 従業地・通学地による人口・就業状態等集計」をもとに作成
解説:働きに出る街の経済
41.9%という数字の重み
川崎市に住む15歳以上の就業者は71万7,359人。そのうち他県で働いているのが30万765人で、41.9%にあたります。他県のほとんどは東京都です。市内で働いているのは33万1,316人(46.2%)、神奈川県内の他市町村が8万5,278人(11.9%)。
つまり川崎市民の10人に4人は、毎朝、県境を越えて働きに行っていることになります。市内で働く人とほぼ拮抗する規模です。
逆方向の流れもあります。市外から川崎市へ通勤してくるのは21万3,931人(県内の他市町村から12万3,831人、他県から9万100人)。それでも出ていく38万6,043人には遠く及ばず、差し引き17万2,112人の流出超過です。
昼になると19.6万人が消える
この流動の結果が、昼夜間人口比率に表れます。川崎市の夜間人口153万8,262人に対し、昼間人口は134万2,397人。比率は87.3%で、政令指定都市20市の最下位です。
下位に並ぶのは相模原市(88.9%)、横浜市(92.5%)、さいたま市(92.9%)。いずれも東京圏の都市です。逆に大阪市(128.4%)、名古屋市(111.2%)、福岡市(108.8%)は、周辺から人を集める側にいます。
この指標は、都市の性格をひとつの数字で示します。100%を超える都市は「働きに来る街」、下回る都市は「働きに出る街」です。川崎市は20市のなかで、もっとも「働きに出る街」だということになります。
商業の流出と、同じ構造
この数字は、「卸売・小売業の年間商品販売額」のページで見た内容と正確に対応しています。あちらでは、川崎市民1人あたりの小売販売額が政令市20市で最下位(75.2万円)でした。所得は20市で2位なのに、買い物は最下位。
理由はここにあります。市民の4割が東京で働いているなら、買い物の相当部分も東京でされるのは自然なことです。通勤の流れと購買力の流れは、同じ経路をたどっています。
「川崎はベッドタウン」という言い方は感覚的なものではなく、昼夜間人口比率87.3%(20市最下位)と1人あたり小売販売額75.2万円(20市最下位)という、2つの統計にはっきり裏づけられた事実です。
ただし川崎区だけは違う
市全体の傾向とは別に、区ごとの姿は大きく異なります。
他県への通勤率がもっとも高いのは麻生区の47.7%。多摩区46.6%、中原区45.4%と続き、小田急線・南武線で都心に出やすい北部ほど高くなります。
いっぽう川崎区は29.9%と際立って低い。自区内で働く人が5万1,246人(48.0%)と半数近くを占めます。臨海部の工業地帯という大きな職場を区内に抱えているためです。実際、川崎区だけが「働く人 ÷ 住む人」で1.38と1.0を超えており、7区で唯一、外から人を集める区になっています。
反対に宮前区と多摩区は0.51。区で働く人が、区に住む就業者の半分しかいません。ほぼ純粋な住宅地です。
中小企業への示唆
1. 平日昼の人口は区で倍違う——飲食店やサービス業の立地を考えるなら、昼間に人がいるのは川崎区と幸区です。宮前・多摩・麻生は昼間に人が減ります。同じ「人口20万人の区」でも、平日ランチの商圏はまったく別物です。
2. 夜と休日に強い商売は北部が向く——住宅地の区は、平日夜と土日に人が戻ります。営業時間を都心型と揃えると、いちばん人がいる時間帯を逃します。
3. 採用は「通勤しなくていい」が武器になる——市民の4割が県境を越えて通勤しているということは、4割の人が毎日の長距離通勤に時間を使っているということでもあります。市内の事業者にとって「通勤10分」は、給与以外の強力な訴求点になり得ます。とくに子育て世代の多い中原区・高津区では効果が期待できます。
4. 購買力を市内に留める余地——通勤とともに出ていく購買力は、商業動態のページで見たとおり年間およそ5,900億円規模と推計されます。テレワークの定着はこの構造を多少なりとも変える可能性があり、次回の国勢調査(2025年)の従業地集計は注目に値します。
データの注意点
サンキー図と区別のグラフは15歳以上の就業者が対象で、通学者は含みません。いっぽう昼夜間人口比率は通学者を含む人口ベースの数値です。対象が異なるため、両者の数字は直接には対応しません。
「川崎市で働く」には、従業地が不詳の2万8,473人を含めています。国勢調査ではこれらの人は住んでいる場所の側に計上されるため、流れの合計を一致させるためにこの扱いとしました。
また「他県」の内訳(東京都が何人か)は、この集計表では取得できません。地理的な条件からほとんどが東京都と考えられますが、統計上の裏づけがある数字ではない点にご留意ください。
2020年10月の調査であり、コロナ禍によるテレワークの影響を含みます。通常年より他県通勤率が低く出ている可能性があります。