令和5年度 第2次試験問題 事例Ⅲ
与件文
【企業概要】
1C社は資本金3,000万円、従業員60名(うちパート従業員40名)の業務用食品製造業である。現在の組織は、総務部4名、配送業務を兼務する営業部6名、最近新設した製品開発部2名、製造部48名で構成されている。パート従業員は全て製造部に配置されている。
2C社は地方都市に立地し、温泉リゾート地にある高級ホテルと高級旅館5軒を主な販売先として、販売先の厨房の管理を担う料理長(以下、販売先料理長という)を通じて依頼がある和食や洋食の総菜、菓子、パン類などの多品種で少量の食品を受託製造している。
3高級ホテルの料理人を経験し、ホテル調理場の作業内容などのマネジメントに熟知した現経営者が、ホテル内レストランメニューの品揃えの支援を行う調理工場を標ぼうして1990年にC社を創業した。近年、販売先のホテルや旅館では、増加する訪日外国人観光客の集客を狙って、地元食材を使った特色のあるメニューを提供する傾向が強まっているが、その一方で材料調達や在庫管理の簡素化などによるコスト低減も目指している。そのためもあり、C社の受注量は年々増加してきた。
42020年からの新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受け、C社の受注量は激減していたが、最近では新型コロナウイルス感染も落ち着き、観光客の増加によって販売先のホテルや旅館の稼働率が高くなり、受注量も回復してきている。
【生産の現状】
5C社の製造部は、生産管理課、総菜製造課、菓子製造課、資材管理課で構成されている。総菜製造課には5つの総菜製造班、菓子製造課には菓子製造とパン製造の2つの班があり、総菜製造班は販売先ごとに製造を行っている。各製造班にはベテランのパートリーダーが各1名、その下にはパート従業員が配置されている。製造部長、総菜製造課長、菓子製造課長(以下、工場管理者という)は、ホテルや旅館での料理人の経験がある。
6C社の工場は、製造班ごとの加工室に分離され、食品衛生管理上交差汚染を防ぐようゾーニングされているが、各加工室の設備機器のレイアウトはホテルや旅館の厨房と同様なつくりとなっている。
7(図「主な総菜のフローダイアグラム」は割愛。原本PDF参照)受注量が最も多い総菜の製造工程は、食材の不用部トリミングや洗浄を行う前処理、食材の計量とカットや調味料の計量を行う計量・カット、調味料を入れ加熱処理する調理があり、鍋やボウル、包丁など汎用調理器具を使って手作業で進められている。
8C社の製造は、販売先から指示がある製品仕様に沿って、工場管理者3名と各製造班のパートリーダーがパート従業員に直接作業方法を指導、監督して行われている。
9C社が受託する製品は、販売先のホテルや旅館が季節ごとに計画する料理メニューの中から、その販売先料理長が選定する食品で、その食材、使用量、作業手順などの製品仕様は販売先料理長がC社に来社し、口頭で直接指示を受けて試作し決定する。また納入期間中も販売先料理長が来社し、製品の出来栄えのチェックをし、必要があれば食材、製造方法などの変更指示がある。その際には工場管理者が立ち会い、受託製品の製品仕様や変更の確認を行っている。毎日の生産指示や加工方法の指導などは両課長が加工室で直接行う。
10販売先料理長から口頭で指示される各製品の食材、使用量、作業手順などの製品仕様は、工場管理者が必要によってメモ程度のレシピ(レシピとは必要な食材、その使用量、料理方法を記述した文書)を作成し活用していたが、整理されずにいる。
11受託する製品の仕様が決定した後は、C社の営業部員が担当する販売先料理長から翌月の月度納品予定を受け、製造部生産管理課に情報を伝達、生産管理課で月度生産計画を作成し、総菜製造課長、菓子製造課長に生産指示する。両製造課長は月度生産計画に基づき製造日ごとの作業計画を作成しパートリーダーに指示する。パートリーダーは、月度生産計画に必要な食材や調味料の必要量を経験値で見積り、長年取引がある食品商社に月末に定期発注する。食品商社は、C社の月度生産計画と食材や調味料の消費期限を考慮して納品する。食材や調味料の受入れと、常温、冷蔵、冷凍による在庫の保管管理は資材管理課が行っているが、入出庫記録がなく、食材や調味料の在庫量は増える傾向にあり、廃棄も生じる。また製造日に必要な食材や調味料は前日準備するが、その時点で納品遅れが判明し、販売先に迷惑をかけたこともある。
12販売先への日ごとの納品は、宿泊予約数の変動によって週初めに修正し確定する。朝食用製品については販売先消費日の前日午後に製造し当日早朝に納品する。夕食用製品については販売先消費日の当日14:00までに製造し納品する。
【新規事業】
13現在、C社所在地周辺で多店舗展開する中堅食品スーパーX社と総菜商品の企画開発を共同で行っている。X社では、各店舗の売上金額は増加しているが、総菜コーナーの売上伸び率が低く、X社店舗のバックヤードでの調理品の他に、中食需要に対応する総菜の商品企画を求めている。C社では、季節性があり高級感のある和食や洋食の総菜などで、X社の既存の総菜商品との差別化が可能な商品企画を提案している。C社の製品開発部は、このために外部人材を採用し最近新設された。この採用された外部人材は、中堅食品製造業で製品開発の実務や管理の経験がある。
14この新規事業では、季節ごとにX社の商品企画担当者とC社で商品を企画し、X社が各月販売計画を作成する。納品数量は納品日の2日前に確定する。納品は商品の鮮度を保つため最低午前と午後の配送となる。X社としては、当初は客単価の高い数店舗から始め、10数店舗まで徐々に拡大したい考えである。
15C社社長は、この新規事業に積極的に取り組む方針であるが、現在の生産能力では対応が難しく、工場増築などによって生産能力を確保する必要があると考えている。
設問
C社の生産面の強みを2つ40字以内で述べよ。
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①料理人経験者と熟練パートによる多品種少量の手作り技術。②高級店向けの対応力。
設問の制約:「生産面の強みを2つ」「40字以内」。短いので2要素を体言止めで端的に。生産(QCD・技術・人材)に絞り、販売面は書かない。
- 強み1(人材・技術)…第3・5・8段落より、ホテル料理人経験のある工場管理者とベテランの熟練パートによる多品種少量の手作り対応力。
- 強み2(製品対応力)…第2段落の高級ホテル・旅館向けの和食・洋食の総菜、菓子、パン類など多様で高品質な受託製造の対応力。
これらは第4問(製品企画開発)・第5問(新規事業)で活かす強みとして一貫させる。
C社の製造部では、コロナ禍で受注量が減少した2020年以降の工場稼働の低下による出勤日数調整の影響で、高齢のパート従業員も退職し、最近の増加する受注量の対応に苦慮している。生産面でどのような対応策が必要なのか、100字以内で述べよ。
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対応策は、①口頭指示のレシピや作業手順を文書化・標準化し、②教育と多能工化で技能を承継する。③汎用器具中心の手作業を見直し設備化・工程改善で生産性を高める。これらで人手不足下でも受注増に対応する。
設問の制約:「生産面の対応策」。問題は受注増×人材(熟練パート)減少のギャップ。つまり標準化・多能工化・生産性向上で限られた人員の生産能力を高めるのが定石。
与件の問題点に対応策をぶつける:
- 第9・10段落…製品仕様が口頭指示でレシピが整理されていない → レシピ・作業手順の文書化と標準化。
- 第5・12段落…ベテランパート依存・退職 → 教育・多能工化(OJT)で技能承継。
- 第7段落…汎用調理器具による手作業 → 設備化・工程改善で省人化・生産性向上。
「標準化→教育(多能工化)→省人化」の3点を100字に収め、人手不足下での受注増対応という効果で締める。
C社では、最近の材料価格高騰の影響が大きく、付加価値が高い製品を販売しているものの、収益性の低下が生じている。どのような対応策が必要なのか、120字以内で述べよ。
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対応策は、①食材・調味料の入出庫記録と在庫管理を徹底し、発注を経験値依存から計画的な適正発注に改め、過剰在庫と廃棄を削減する。②レシピ標準化で歩留りを高め、③工程改善で作業の無駄を省く。これらで材料費・ロスを抑え収益性を改善する。
設問の焦点:「材料価格高騰」下で「収益性低下」をどう抑えるか。=材料費・在庫ロスの削減と歩留り向上が解答軸。
原価を押し上げる与件の問題点を潰す:
- 第11段落…入出庫記録がなく在庫が増え廃棄が生じる、必要量を経験値で見積り定期発注 → 在庫管理(入出庫記録)の徹底・適正発注で過剰在庫・廃棄を削減。
- 第10段落…レシピが整理されていない → 標準化で使用量を適正化し歩留り向上。
- 第7段落…手作業中心 → 工程改善でムダ削減。
材料費・廃棄ロスの削減=原価低減で収益性改善、という因果で120字にまとめる。
C社社長は受注量が低迷した数年前から、既存の販売先との関係を一層密接にするとともに、他のホテルや旅館への販路拡大を図るため、自社企画製品の製造販売を実現したいと思っていた。また、食品スーパーX社との新規事業でも総菜の商品企画が必要となっている。創業から受託品の製造に特化してきたC社は、どのように製品の企画開発を進めるべきなのか、120字以内で述べよ。
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新設の製品開発部に外部人材の知見を活かし、料理人経験を持つ管理者の技術と既存レシピを標準化・データベース化して開発基盤を整える。販売先料理長やX社の声、季節性・高級感の強みを反映した自社企画品を試作・評価する体制を構築し継続的に開発する。
設問の前提:C社は「受託品製造に特化」してきた=自社で企画開発した経験がない。だから問われるのは企画開発体制・基盤づくりのプロセス。
使える経営資源を組み立てる:
- 第13段落…製品開発部(新設)+外部人材(製品開発の実務・管理経験)を中核に据える。
- 第5・10段落…料理人経験のある管理者の技術とレシピを標準化・データベース化して開発の基盤に。
- 第3・13段落…強み(季節性・高級感)を反映し、販売先料理長やX社のニーズを取り込み試作・評価する仕組みを構築。
「組織(開発部+外部人材)→技術・情報の整備→試作評価の継続」という体制づくりの流れで書くのがポイント。
食品スーパーX社と共同で行っている総菜製品の新規事業について、C社社長は現在の生産能力では対応が難しいと考えており、工場敷地内に工場を増築し、専用生産設備を導入し、新規採用者を中心とした生産体制の構築を目指そうとしている。このC社社長の構想について、その妥当性とその理由、またその際の留意点をどのように助言するか、140字以内で述べよ。
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構想は妥当である。理由は専用設備で量産性を高め、既存の受託製造ラインと分離して品質と納期を守り生産能力を確保できるためである。留意点は、①新規採用者への標準化された教育・技能承継、②X社の短い納品リードタイムや配送に対応する生産計画、③段階的拡大に応じた投資規模の見極めである。
設問の構造:「①妥当性(妥当/否)」+「②理由」+「③留意点」の3点を必ず全て書く。基本は妥当と肯定し、理由+留意点を厚めに。
妥当性と理由
第15段落で社長自身が「現生産能力では難しい」と判断。新規事業は専用設備で量産し、季節性のある総菜を既存の高級受託ラインと分離すれば、双方の品質・納期を守りつつ能力を確保できる → 妥当。
留意点(リスクへの配慮)
- 新規採用者中心の体制 → 第2問同様、標準化された教育・技能承継が必須(属人化を避ける)。
- 第14段落…X社は納品2日前確定・午前午後の最低2配送と短納期・多頻度 → 対応する生産計画・配送体制。
- 第14段落…数店舗から10数店舗へ段階的拡大 → 過大投資を避け投資規模を段階に合わせる。
配点30点の大設問。3要素をバランスよく入れ、留意点を複数挙げて多面的に得点する。