令和3年度 第2次試験問題 事例Ⅲ
与件文
【C社の概要】
1C社は、革製のメンズおよびレディースバッグを製造、販売する中小企業である。資本金は2,500万円、従業員は総務・経理部門5名、製品デザイン部門5名、製造部門40名の合計50名である。
2バッグを製造する他の中小企業同様、C社はバッグメーカーX社の縫製加工の一部を請け負う下請企業として創業した。そして徐々に加工工程の拡大と加工技術の向上を進め、X社が企画・デザインした製品の完成品までの一貫受託生産ができるようになり、X社の商品アイテム数の拡大も加わって生産量も増大した。しかしその後、X社がコストの削減策として東南アジアの企業に生産を委託したことから生産量が減少し、その対策として他のバッグメーカーとの取引を拡大することで生産量を確保してきた。現在バッグメーカー4社から計10アイテムの生産委託を受けており、受注量は多いものの低価格品が主となっている。
3C社では、バッグメーカーとの取引を拡大するとともに、製品デザイン部門を新設し、自社ブランド製品の企画・開発、販売を進めてきた。その自社ブランド製品が旅行雑誌で特集されて、手作り感のある高級仕様が注目された。高価格品であったが生産能力を上回る注文を受けた経験があり、自社ブランド化を推進する契機となった。さらに、その旅行雑誌を見たバッグ小売店数社からC社ブランド製品の引き合いがあり、販売数量は少ないものの小売店との取引も始められた。一方でC社独自のウェブサイトを立ち上げ、インターネットによるオンライン販売も開始し、今では自社ブランド製品販売の中心となっている。現在自社ブランド製品は25アイテム、C社売上高の20%程度ではあるが、収益に貢献している。
【自社ブランド製品と今後の事業戦略】
4C社の自社ブランド製品は、天然素材のなめし革を材料にして、熟練職人が縫製、仕上げ加工する高級品である。その企画・開発コンセプトは、「永く愛着を持って使えるバッグ」であり、そのため自社ブランド製品の修理も行っている。新製品は、インターネットのオンライン販売情報などを活用して企画している。
5C社社長は今後、大都市の百貨店や商業ビルに直営店を開設して、自社ブランド製品の販売を拡大しようと検討している。ただ、製品デザイン部門には新製品の企画・開発経験が少ないことに不安がある。また、製造部門の対応にも懸念を抱いている。
【生産の現状】
6生産管理担当者は、バッグメーカーの他、小売店およびインターネットからの注文受付や自社ブランド製品の修理受付の窓口でもあり、それらの製造および修理の生産計画の立案、包装・出荷担当への出荷指示なども行っている。生産計画は月1回作成し、月末の生産会議で各工程のリーダーに伝達されるが、計画立案後の受注内容の変動や特急品の割込みによって月内でもその都度変更される。
7生産は、バッグメーカーから受託する受注生産が主であり、1回の受注量は年々小ロット化している。生産管理担当者は、繰り返し受注を見越して、受注量よりも多いロットサイズで生産を計画し、納品量以外は在庫保有している。
8バッグ小売店やインターネットで販売する自社ブランド製品は、生産管理担当者が受注予測を立てて生産計画を作成し、見込生産している。注文ごとに在庫から引き当てるものの、欠品や過剰在庫が生じることがある。
9受注後の製造工程は、裁断、縫製、仕上げ、検品、包装・出荷の5工程である。
10裁断工程では、材料の革をパーツごとに型で抜き取る作業を行っており、C社内の製造工程では一番機械化されている。その他に、材料や付属部品などの資材発注と在庫管理も裁断工程のリーダーが担当する。生産計画に基づき発注業務を行うが、発注から納品までの期間が1カ月を超える資材もあり、資材欠品が生じた場合、生産計画の変更が必要となる。
11C社製造工程では一番多くの熟練職人6名が配置されている縫製工程は、裁断された革を組み立てて成形する作業を行う。通常はバッグメーカーからの受託生産品の縫製作業が中心で、裁断済みパーツの部分縫製とそれを組み合わせて製品形状にする全体縫製との作業に大きく分かれ、全体縫製では部分縫製よりも熟練を要する。自社ブランド製品の生産が計画されると、熟練職人は受託生産品の作業から自社ブランド製品の作業へ移る。自社ブランド製品は、部分縫製から立体的形状を要求される全体縫製のすべてを一人で製品ごとに熟練職人が担当し、そのほとんどの作業は丁寧な手縫い作業(手作業)で行われる。自社ブランド製品の縫製工程を担当した熟練職人は、引き続き仕上げ工程についても作業を行い、製品完成まで担当している。各作業者の作業割り当ては、縫製工程のリーダーが各作業者の熟練度を考慮して決めている。縫製工程は、自社ブランド製品の修理作業も担当しており、C社製造工程中最も負荷が大きく時間を要する工程となっている。
12仕上げ工程は、縫製されたバッグメーカーからの受託生産品の裁断断面の処理、付属金物の取り付けなどを行う製造の最終工程を担当し、縫製工程同様手作業が多く、熟練を要する。
13縫製、仕上げ両工程では、熟練職人の高齢化が進み、今後退職が予定されているため、若手職人の養成を行っている。その方法として、細分化した作業分担制で担当作業の習熟を図ろうとしているが、バッグを一人で製品化するために必要な製造全体の技術習熟が進んでいない。
14検品工程では製品の最終検査を行っているが、製品の出来栄えのばらつきが発生した場合、手直し作業も担当する。
15包装・出荷工程は、完成した製品の包装、在庫管理、出荷業務を担当する。
設問
革製バッグ業界におけるC社の(a)強みと(b)弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。
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(a)強み熟練職人による手作りの高級自社ブランド品の企画・製造力と、自社ECによる販売力。(40字)
(b)弱み熟練職人の高齢化と技術承継の遅れ、受注変動による生産計画変更や欠品・過剰在庫。(39字)
事例Ⅲの定石:強みは「技術・QCDで評価される良い点」、弱みは「生産現場の問題点」。後続設問(第3・4問が自社ブランド強化・直営店)と整合するよう選ぶ。
- 強み…第3・4段落。熟練職人による手作りの高級自社ブランド品(旅行雑誌で特集、生産能力超の注文)、自社ECサイトでの販売が自社ブランドの中心。「永く愛着を持って使える」コンセプトと修理対応も評価点。
- 弱み…第13・6・8・10段落。熟練職人の高齢化・技術承継の遅れ(製造全体の習熟が進まない)、受注変動・特急で生産計画が都度変更、見込生産での欠品・過剰在庫、資材リードタイム長期による欠品。
各40字なので、強みは「高級ブランド品+EC」、弱みは「技術承継+生産計画/在庫」に要素を絞って圧縮する。
バッグメーカーからの受託生産品の製造工程について、効率化を進める上で必要な(a)課題2つを20字以内で挙げ、それぞれの(b)対応策を80字以内で助言せよ。
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課題1(a)小ロット化への生産対応の効率化。(16字)
対応策1(b)繰り返し受注の見込み多めの生産をやめ、受注情報を基に適正ロットで生産する。段取り改善で小ロットでも効率を保ち、過剰在庫を抑制する。(65字)
課題2(a)計画変更による工程の混乱の防止。(16字)
対応策2(b)生産計画の立案サイクルを短縮し受注変動や特急品を計画に反映する。資材は発注点管理で欠品を防ぎ、進捗を共有して計画変更による混乱を抑える。(68字)
設問の制約:対象は「受託生産品の製造工程」の効率化。課題は20字(端的に)、対応策は80字(具体策)。課題と対応策を1対1で対応させる。
効率を阻害する要因を列挙(与件):
- 第7段落…受注は年々小ロット化、繰り返し受注を見越して受注量より多いロットで生産=過剰生産・在庫。
- 第6・10段落…計画立案後の受注変動・特急品割込み、資材欠品(リードタイム1か月超)で生産計画が都度変更。
対応策の方向:
- 課題1(小ロット対応)…適正ロット生産+段取り改善で、小ロットでも効率を維持し過剰在庫を削減。
- 課題2(計画変更の混乱)…生産計画の短サイクル化・変動の織り込み+資材の発注点管理+進捗共有で混乱を防止。
「課題=現状の問題、対応策=それを潰す施策」が噛み合うよう書く。
C社社長は、自社ブランド製品の開発強化を検討している。この計画を実現するための製品企画面と生産面の課題を120字以内で述べよ。
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企画面の課題は、企画・開発経験が少ない製品デザイン部門を強化し、EC情報や顧客ニーズを活かす企画力を高めること。生産面の課題は、熟練職人に依存せず若手の技術育成と作業標準化を進め、製品化できる生産能力を確保し増産に対応することである。
設問の指示:「製品企画面」と「生産面」の2つの課題を分けて書く。社長の不安・懸念がそのまま課題(第5段落)になっている。
企画面(第5・4段落):製品デザイン部門は新製品の企画・開発経験が少ないのが不安。EC販売情報や顧客ニーズを活用して企画力を強化する必要。
生産面(第5・11・13段落):製造部門の対応に懸念。自社ブランドは熟練職人が一人で全工程を担当し負荷大、高齢化・技術承継の遅れ。開発強化=増産には若手育成・標準化による生産能力確保が課題。
構成:本問は「課題を述べよ」なので、対応策ではなく課題(あるべき状態とのギャップ)に焦点を当てる。第4問(手作り高級か分業標準化か)への布石になる設問。
C社社長は、直営店事業を展開する上で、自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出すか、それとも若手職人も含めた分業化と標準化を進めて自社ブランド製品のアイテム数を増やすか、悩んでいる。
C社の経営資源を有効に活用し、最大の効果を得るためには、どちらを選び、どのように対応するべきか、中小企業診断士として140字以内で助言せよ。
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熟練職人の手作りで高級感を出す方を選ぶ。理由は、高品質な手作り高級品が旅行雑誌で評価されC社の強みであるため。対応策は、熟練職人を高付加価値の自社ブランド製造に集中させ、受託品は若手の分業・標準化で対応する。技術承継を計画的に進め、直営店で世界観を訴求し差別化を図る。
設問の構造:「どちらを選ぶか」+「どのように対応するか」を必ず両方。「経営資源を有効活用し最大効果」が判断基準=C社の強みを最大に活かす選択をする。
選択の根拠:第3・4段落。C社の強み・収益源は熟練職人の手作りによる高級自社ブランド品(雑誌特集・高評価)。分業標準化でアイテム数を増やす案は高級感という独自性を損なう。直営店(百貨店・商業ビル)で売るなら高級路線が整合。よって手作りの高級感を選ぶ。
対応策(両立の工夫):
- 熟練職人を自社ブランド(高付加価値)に集中させ、受託生産品は若手の分業・標準化で対応=負荷の大きい縫製工程を整理。
- 第13段落の弱みに対応し技術承継を計画的に進める。
- 直営店でブランドの世界観・修理対応を訴求し差別化。
「選ぶ+理由+対応策+効果」を140字に収める。第3問で挙げた生産面の課題(技術承継)の解決と一貫させる。