事例Ⅲ|生産・技術

令和元年度 第2次試験問題 事例Ⅲ

中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅲ / 試験時間 14:00〜15:20 / 配点100点

与件文

【企業概要】

1C社は、輸送用機械、産業機械、建設機械などに用いられる金属部品の製造業を顧客に、金属熱処理および機械加工を営む。資本金6千万円、従業員数40名、年商約5億円の中小企業である。組織は、熱処理部、機械加工部、設計部、総務部で構成されている。

2金属熱処理とは、金属材料に加熱と冷却をして、強さ、硬さ、耐摩耗性、耐食性などの性質を向上させる加工技術である。多くの金属製品や部品加工の最終工程として、製品品質を保証する重要な基盤技術である。金属材料を加熱する熱処理設備など装置産業の色彩が強く、設備投資負担が大きく、また素材や形状による温度管理などの特殊な技術の蓄積が必要である。このため、一般に金属加工業では、熱処理は内製せず熱処理業に外注する傾向が強い。C社は創業当初から、熱処理専業企業として産業機械や建設機械などの部品、ネジや歯車など他社の金属製品を受け入れて熱処理を行ってきた。

3その後、熱処理加工だけでなく、その前工程である部品の機械加工も含めた依頼があり、設計部門と機械加工部門をもった。設計部門は、発注先から指示される製品仕様をC社社内の機械加工用に図面化するもので、現在2名で担当している。機械加工は、多品種少量の受注生産で、徐々に受注量が増加し、売上高の増加に貢献している。

4約10年前、所属する工業会が開催した商談会で、金属熱処理業を探していた自動車部品メーカーX社との出会いがあり、自動車部品の熱処理を始めた。その後X社の増産計画により、自動車部品専用の熱処理工程を増設し、それによってC社売上高に占めるX社の割合は約20%までになっている。さらに現在、X社の内外作区分の見直しによって、熱処理加工に加え、前加工である機械加工工程をC社に移管する計画が持ち上がっている。

【生産の概要】

5C社の工場は、熱処理工場と機械加工工場がそれぞれ独立した建屋になっている。熱処理工場は、熱処理方法が異なる熱処理炉を数種類保有し、バッチ処理されている。機械加工工場では、多品種少量の受注ロット生産に対応するため、加工技能が必要なものの、切削工具の交換が容易で段取り時間が短い汎用の旋盤、フライス盤、研削盤がそれぞれ複数台機能別にレイアウトされている。

6熱処理は、加熱条件や冷却条件等の設定指示はあるものの、金属材料の形状や材質によって加熱・冷却温度や速度などの微調整が必要となる。そのため金属熱処理技能検定試験に合格し技能士資格をもつベテラン作業者を中心に作業が行われ品質が保持されている。また、機械加工も汎用機械加工機の扱いに慣れた作業者の個人技能によって加工品質が保たれている。

7生産プロセスは、受注内容によって以下のようになっている。
・機械加工を伴う受注:材料調達→機械加工→熱処理加工→出荷検査
・熱処理加工のみの受注:部品受入→熱処理加工→出荷検査

8生産計画は、機械加工部と熱処理部それぞれで立案されるが、機械加工を伴う受注については熱処理加工との工程順や日程などを考慮して調整される。両部門とも受注生産であることから、納期を優先して月ごとに日程計画を作成し、それに基づいて日々の作業が差立てされる。納期の短い注文については、顧客から注文が入った時点で日程計画を調整、修正し、追加される。機械加工受注品に使用される材料の調達は、日程計画が確定する都度発注し、加工日の1週間前までに納品されるように材料商社と契約しており、材料在庫は受注分のみである。

【自動車部品機械加工の受託生産計画】

9C社では、自動車部品メーカーX社から生産の移管を求められている自動車部品機械加工の受託生産について検討中である。

10その内容は、自動車部品専用の熱処理設備で加工しているX社の全ての部品の機械加工であり、C社では初めての本格的量産機械加工になる。受託する金属部品は、寸法や形状が異なる10種類の部品で、加工工程は部品によって異なるがそれぞれ5工程ほどの機械加工となり、その加工には、旋盤、フライス盤、研削盤、またはマシニングセンタなどの工作機械が必要になる。この受託生産に応える場合、機械加工部門の生産量は現在の約2倍になると予想され、現状と比較して大きな加工能力を必要とする。

11また、この機械加工の受託生産の実施を機会に、X社で運用されている後工程引取方式を両社間の管理方式として運用しようとする提案がX社からある。具体的運用方法は、X社からは3カ月前に部品ごとの納品予定内示があり、1カ月ごとに見直しが行われ、納品3日前にX社からC社に届く外注かんばんによって納品が確定する。これら納品予定内示および外注かんばんは、通信回線を使用して両社間でデータを交換する計画である。

12外注かんばんの電子データ化などのシステム構築は、X社の全面支援によって行われる予定となっているが、確定受注情報となる外注かんばんの社内運用を進めるためには、C社内で生産管理の見直しが必要になる。この後工程引取方式は、X社自動車部品の機械加工工程および自動車部品専用の熱処理工程に限定した運用範囲とし、その他の加工品については従来同様の生産計画立案と差立方法で運用する計画である。

13生産設備面では、現在の機械加工部門の工程能力を考慮すると加工設備の増強が必要であり、敷地内の空きスペースに設備を増設するために新工場の検討を行っている。C社社長は、この新工場計画について前向きに検討を進める考えであり、次のような方針を社内に表明している。
1.X社の受託生産部品だけの生産をする専用機化・専用ライン化にするのではなく、将来的にはX社向け自動車部品以外の量産の機械加工ができる新工場にする。
2.これまでの作業者のスキルに頼った加工品質の維持ではなく、作業標準化を進める。
3.一人当たり生産性を極限まで高めるよう作業設計、工程レイアウト設計などの工程計画を進め、最適な新規設備の選定を行う。
4.近年の人材採用難に対応して、新工場要員の採用は最小限にとどめ、作業方法の教育を実施し、早期の工場稼働を目指す。

14現在C社社内では、各部の関係者が参加する検討チームを組織し、上記のC社社長方針に従って検討を進めている。

設問

第1問 配点 20点 80字以内

C社の事業変遷を理解した上で、C社の強みを80字以内で述べよ。

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解答例(72字)

技能士資格を持つベテランによる高度な金属熱処理技術と、後工程から前工程の機械加工へ領域を広げ、設計から熱処理まで一貫対応でき品質を保証できる点。

解説(考え方・プロセス)

設問の指示:事業変遷を理解した上で」がキーワード。=単なる技術力の羅列ではなく、熱処理専業→機械加工・設計へと領域を広げてきた経緯から生まれた強みを押さえる。

事業変遷の整理:

  • 創業当初=熱処理専業(第2段落)。装置産業で特殊技術の蓄積が必要、一般に外注される基盤技術。
  • その後=前工程の機械加工・設計部門を獲得(第3段落)。
  • 結果=設計→機械加工→熱処理→検査の一貫対応(第7段落)。

技術の質:熱処理は技能検定合格の有資格ベテラン、機械加工も熟練の個人技能で品質保持(第6段落)。熱処理は「製品品質を保証する重要な基盤技術」。

これらを「高度な熱処理技術+一貫対応体制+品質保証力」として80字に凝縮する。後続設問(量産化・品質標準化)の論点とも整合する。

第2問 配点 20点 100字以内

自動車部品メーカーX社からの機械加工の受託生産に応じる場合、C社における生産面での効果とリスクを100字以内で述べよ。

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解答例(99字)

効果は、量産受託で機械加工の生産量が倍増し稼働率と売上が向上、量産技術や作業標準化が蓄積される点。リスクは、X社依存が高まり受注変動の影響を受けやすく、能力増強投資の負担が重くなる点である。

解説(考え方・プロセス)

設問の制約:生産面での効果とリスク」。財務や営業ではなく生産(能力・技術・体制)の観点で、効果とリスクを両方書く。

効果(プラス面)の抽出:

  • 機械加工の生産量が現在の約2倍になる(第10段落)=稼働率・売上の向上
  • C社初の本格的量産機械加工=量産技術・作業標準化のノウハウ蓄積(社長方針2・3)。

リスク(マイナス面)の抽出:

  • X社割合が約20%(第4段落)からさらに増え特定顧客への依存度上昇=受注変動・打ち切りの影響大。
  • 加工設備の増強・新工場投資が必要(第13段落)=設備負担・固定費増。能力不足リスクも。

効果とリスクを対にして、生産面に限定して簡潔にまとめる。

第3問 配点 40点

X社から求められている新規受託生産の実現に向けたC社の対応について、以下の設問に答えよ。

(設問1) C社社長の新工場計画についての方針に基づいて、生産性を高める量産加工のための新工場の在り方について120字以内で述べよ。
(設問2) X社とC社間で外注かんばんを使った後工程引取方式の構築と運用を進めるために、これまで受注ロット生産体制であったC社では生産管理上どのような検討が必要なのか、140字以内で述べよ。
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解答例

設問1X社専用ラインに固定せず汎用性を持たせ将来の他社量産にも対応する。作業を標準化・マニュアル化し、生産性を高める工程レイアウトと省人化設備を選定する。少人数で稼働できるよう作業を設計し教育する。(96字)

設問23カ月前内示と外注かんばんに基づき、確定情報で都度引き取られる方式に対応する必要がある。月単位のロット計画から、内示で資材・能力を準備し、かんばんで生産を統制する仕組みへ転換する。後工程引取の対象工程と従来方式との切り分けや、平準化生産・仕掛品管理も検討する。(130字)

解説(考え方・プロセス)

設問1:新工場の在り方(社長方針に沿って・120字)

必ず社長方針1〜4を反映:①X社専用化せず将来の他社量産にも対応できる汎用性、②スキル依存をやめ作業標準化、③一人当たり生産性を高める工程・レイアウト設計と最適設備選定、④採用は最小限で教育による早期稼働。方針を漏れなく拾うのがコツ。

設問2:後工程引取方式への生産管理上の検討(140字)

論点:従来は月単位の受注ロット生産(第8段落)。これを外注かんばんによる後工程引取方式(第11・12段落)に変える際に必要な検討を挙げる。

  • 計画方式の転換…3カ月前内示で資材・生産能力を事前準備し、納品3日前のかんばんで生産を確定・統制
  • 運用範囲…後工程引取はX社部品の機械加工・専用熱処理に限定、その他は従来方式(第12段落)→両方式の切り分け・並行運用
  • その他…平準化生産、仕掛品・在庫管理、進捗・現品管理の整備。

140字と長めなので、計画転換+運用範囲の切り分け+平準化・仕掛管理を盛り込み多面的にまとめる。

第4問 配点 20点 120字以内

新工場が稼働した後のC社の戦略について、120字以内で述べよ。

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解答例(116字)

標準化と高生産性を実現した量産機械加工力に、強みである熱処理・設計の一貫対応を結合し、X社以外の自動車部品や他分野の量産受注を開拓する。X社依存を低減して取引先を分散し、高品質な一貫加工で高付加価値化と収益拡大を図る。

解説(考え方・プロセス)

設問の方向:新工場稼働戦略(今後どう成長するか)。社長方針1「将来的にX社以外の量産機械加工もできる新工場」が答えの軸。

強みの活用(第1問と接続):新たに獲得する標準化・高生産性の量産加工力を、既存の強み=熱処理+設計の一貫対応・品質保証と組み合わせる。

戦略の柱:

  • 新規顧客・新分野の開拓…X社以外の自動車部品や他業界の量産受注を取り込む。
  • X社依存リスクの低減…取引先の分散で経営安定(第2問のリスクの裏返し)。
  • 高付加価値化…一貫対応と品質で差別化し収益性を高める(第6段落の経営課題)。

新たな量産力×既存の強みでX社依存を脱し新市場を開拓」という成長+リスク分散の戦略でまとめる。

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