事例Ⅲ|生産・技術

平成28年度 第2次試験問題 事例Ⅲ

中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅲ / 試験時間 14:00〜15:20 / 配点100点

与件文

【C社の概要】

1C社は、調理用のカット野菜を生産、販売している。C社は、2013年に野菜を栽培するX農業法人から分離し、設立された企業である。販売先は総菜メーカーや冷凍食品メーカーが中心で、主に量産される総菜などの原材料となるカット野菜を受注生産し、年商は約2億円である。

2カット野菜とは、皮むき、切断、スライス、整形など生野菜を料理素材として下処理した加工製品である。外食産業や総菜メーカーなど向けの千切り、角切りなどに加工された製品が需要の中心で、最近ではスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで販売されている袋に入ったサラダやカップサラダにも広がっている。国内の野菜需要全体に占めるカット野菜需要の割合は年々増加している。

3カット野菜は、販売先の意向を受けて、野菜の流通を担っている卸売業者や仲卸業者が、野菜の販売方法の一つとして始めたと言われている。またカット野菜は、販売先から要望される通年納品に応えるため、常に一定量の野菜を確保する必要がある。そのため同業者の多くが野菜の調達能力が高い卸売業者や仲卸業者である。

4X農業法人では、市場に出荷できない規格外野菜の有効活用を目的として2000年からカット野菜の加工を始めたが、その後受注量が増加したため、仕入単価の高い市場規格品の使用や他産地からの仕入れも必要となり、原材料費率が大きく増加した。そこで事業収支を明確にし、収益性の向上に努めて加工事業として確立するために分離し、X農業法人の100%出資子会社としてC社が設立された。C社の設立当時作成された社内コスト管理資料(次ページ表1)では、予想されていた以上の原材料費と労務費の上昇によって限界利益がマイナスとなっていることが判明し、この傾向は今でも改善されていない。これは、X農業法人から独立し改善に向けて努力しているものの、いまだに効果的な生産管理が組織的に行われていないことによる。

5工場操業状況は、規格外野菜を主に原料として利用していた時には収穫時期から約半年間の季節操業となっていたが、市場規格品の使用や他産地からの仕入れによって工場操業期間は長くなったものの、C社に受け継がれた後でもまだ約3カ月の休業期間が例年生じている。販売先からは通年取引の要望がある。

6C社の組織は、X農業法人時代の加工部門責任者が社長となり、製造3グループと総務グループで構成されている。社長は、全体の経営管理の他に営業活動も担っている。各製造グループには責任者として正社員の製造リーダー1名が配置され、合計25名のパート社員が3つの製造グループに配置されている。X農業法人時代から同じ製造グループに勤めているパート社員が多く、他の製造グループへの移動はない。総務グループは、正社員1名とパート社員2名で構成されている。

7現在取引関係にある顧客や関連する業界から、C社とX農業法人との関係に注目した新たな取引の要望がある。その中でC社社長が有望と考えている二つの新事業がある。一つは、カット野菜を原料としたソースや乾燥野菜などの高付加価値製品の事業であり、設備投資を必要とする事業である。もう一つは、新鮮さを売りものにしている中小地場スーパーマーケットなどから要望がある一般消費者向けのサラダ用や調理用のカット野菜パックの事業であり、現在の製造工程を利用できる事業である。

8C社社長は、まず現状の生産管理を見直し、早急に収益改善を図ることを第1の目標としているが、それが達成された後には新事業に着手してさらなる収益拡大を目指すことを考えている。

【生産概要】

9C社のカット野菜製造工程は、顧客別に編成・グループ化され、現在3つの製造グループで製造を行っている。各製造グループでは主に素材選別、皮むき、カット、洗浄、計量・パック・検査、出荷の各工程を持っている。各製造グループは、生産高を日常の管理項目として管理してきた。

10顧客からの注文は、各製造グループに直接入り、各製造グループで各々生産計画を立て、原材料調達から出荷まで行っている。製造グループごとの生産管理によって、同種類の原材料調達における単価の差異、加工ロスによる歩留りの低下、出荷のための輸送費用のロス、製造グループ間での作業員の移動の制限などがみられる。

11製造部門の大きな問題は品質不良であり、前ページの表2に示すような製品クレームが発生している。その原因を製造3グループ全員でブレーンストーミングし、作成した特性要因図が図1である。

12また食品工場としての施設・設備面などの衛生管理、作業方法などの衛生管理、どちらの管理レベルにも課題があり、販売先からの改善要求もある。

表1 C社作成の社内コスト管理資料
構成比(%)
売上高100.0
変動費原材料費66.8
労務費28.1
荷造運賃9.0
水道光熱費5.4
その他変動費2.1
変動費計111.4
限界利益▲11.4
固定費人件費5.8
修繕費2.4
減価償却費5.1
その他固定費2.8
固定費計16.1
営業利益▲27.5
表2 C社の年間クレーム件数
クレーム項目件数構成比(%)
カット形状不均一5450.5
鮮度劣化2119.6
異物混入1110.3
色合い不均一87.5
異臭43.7
その他98.4
107100.0

(図1 C社作成の加工不良に関する特性要因図は割愛。原本PDF参照)「加工不良が多い」を背骨とし、「施設・機械」「人」「原材料」「作業方法」の4要因について、刃物交換・研磨のルールがない、温度管理設備がない、加工スキル不足、規格外の使用、標準作業の不備、製造チーム間の作業員移動がない、などの要因を整理した特性要因図(フィッシュボーン図)。

設問

第1問 配点 20点 各40字以内

カット野菜業界におけるC社の(a)強みと(b)弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。

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解答例

(a)強み親会社X農業法人と連携し、新鮮で良質な野菜を安定的に調達・供給できる体制。(37字)

(b)弱み組織的な生産管理が未確立で、原材料費・労務費が高く限界利益が赤字な点。(35字)

解説(考え方・プロセス)

事例Ⅲの定石:強みは「他社にない経営資源・技術」、弱みは「生産現場の問題点」を与件から拾う。本問は「カット野菜業界における」と限定されている点に注意し、業界内での競争上の強み・弱みを選ぶ。

  • 強み…同業者の多くは野菜調達力の高い卸・仲卸業者(第3段落)で、通年の原料確保が業界の鍵。C社は親会社X農業法人と連携し新鮮・良質な野菜を調達できる(第1・7段落)点が差別化要素。「X農業法人との関係に注目した新たな取引の要望」(第7段落)もこの強みの裏付け。
  • 弱み…第4段落。効果的な生産管理が組織的に行われておらず、原材料費・労務費の上昇で限界利益がマイナス(表1)。これが最大の経営課題(第2問につながる)。

各40字と短いので、強み=「調達・供給力」、弱み=「生産管理未確立による赤字」に一点集中する。

第2問 配点 30点 160字以内

現在C社が抱えている最大の経営課題は、収益改善を早急に図ることである。生産管理面での対応策を160字以内で述べよ。

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解答例(159字)

対応策は、①製造グループ別の個別管理をやめ全社で生産計画・原材料調達・出荷を一元管理し、調達単価差や輸送費のロスを削減する、②標準作業の整備と作業員のグループ間移動・多能工化で歩留り向上と労務費を抑制する、③需要予測に基づく計画的調達で原材料費を低減する。以上で限界利益の赤字を改善し収益を向上させる。

解説(考え方・プロセス)

設問の制約:生産管理面での対応策」=QCD・生産計画・統制の観点に限定(営業や新事業ではない)。最大課題は「収益改善」=表1の限界利益マイナス(原材料費66.8%・労務費28.1%)の解消が直接の狙い。

問題点の棚卸し(第10段落が宝庫):製造グループごとの個別管理により、
同種原材料の調達単価差(→共同調達で改善)
加工ロスによる歩留り低下(→標準化で改善)
出荷輸送費のロス(→出荷の一元化で改善)
作業員のグループ間移動の制限(→多能工化・応援で労務費改善)

組み立て:根本原因は「製造グループ別のバラバラな生産管理」。よって全社的な生産管理の一元化(計画・調達・出荷の集中)を軸に、標準化と多能工化を加えて、原材料費・労務費・運賃の各コストを下げる方向で160字に整理。最後に「限界利益改善→収益向上」と効果で締める。

第3問 配点 20点 120字以内

C社では、クレームを削減する改善活動を計画している。このクレーム改善活動を最も効果的に実施するために、着目するクレーム内容、それを解決するための具体的対応策を120字以内で述べよ。

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解答例(118字)

構成比が最大のカット形状不均一に着目する。対応策は、①カット作業の標準作業を整備しマニュアル化・教育で加工スキルを均一化する、②刃物の交換・研磨ルールを定め機械を整備する、③検査基準を統一する。以上で形状不良を削減しクレームを減らす。

解説(考え方・プロセス)

設問の制約:最も効果的に」=重点指向(パレートの法則)。表2のクレーム構成比から最大項目を1つに絞って着目するのが本問の解法。

着目するクレーム:表2よりカット形状不均一が54件・構成比50.5%で過半を占める。ここを改善すれば最も効果が大きい。

対応策は特性要因図(図1)から:「加工不良が多い」の要因として整理された4要因(施設・機械/人/原材料/作業方法)のうち、形状不均一に直結するものを選ぶ。
作業方法…標準作業の不備→標準化・マニュアル化・教育で加工スキルを均一化。
施設・機械…刃物交換・研磨のルールがない→刃物管理ルールの設定・機械整備
検査…基準統一で流出を防止。

「着目するクレーム+具体的対応策+効果」の構成で、原因(図1)と対策を1対1で対応させると説得力が出る。

第4問 配点 30点 160字以内

C社社長は、経営体質の強化を目指し、今後カット野菜の新事業による収益拡大を狙っている。またその内容は、顧客からの新たな取引の要望、およびC社の生産管理レベルや経営資源などを勘案して計画しようとしている。この計画について、中小企業診断士としてどのような新事業を提案するか、その理由、その事業を成功に導くために必要な社内対応策とともに160字以内で述べよ。

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解答例(158字)

一般消費者向けサラダ用・調理用カット野菜パック事業を提案する。理由は、現在の製造工程を利用でき設備投資が不要で、親会社の新鮮な野菜と中小地場スーパーの要望という機会を活かせるため。社内対応策は、生産管理の一元化と標準化で品質を安定させ、衛生管理を強化し、通年生産体制を整えて高付加価値化と収益拡大を図る。

解説(考え方・プロセス)

設問の構造:どの新事業を提案するか+②その理由+③成功のための社内対応策の3点を必ず書く。「C社の生産管理レベルや経営資源を勘案」が選択の決め手。

2案の比較(第7段落):

  • A案=ソース・乾燥野菜等の高付加価値品…設備投資が必要
  • B案=一般消費者向けサラダ用・調理用カット野菜パック…現在の製造工程を利用でき、地場スーパーから要望あり

選定の論理:C社は限界利益が赤字で生産管理レベルが未成熟・資金的余裕も乏しい。よって、設備投資を要するA案より、既存工程を活かせるB案が現実的。親会社の新鮮野菜という強み(第1問)と、新鮮さを売りにする地場スーパーの需要が合致する点も理由になる。

社内対応策:新事業成功の前提は第2・3問で挙げた生産管理の一元化・標準化による品質安定と、第12段落の衛生管理強化(消費者向けでは特に重要)、第5段落の通年生産体制の確立。第8段落「まず生産管理を見直し収益改善、その後に新事業」という社長方針とも一貫させる。

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