2026年10月20日 公表 内部不正・持ち出し 解決済み 影響度:中

宮城県山元町、職員が他人のIDで庁内共有フォルダに不正アクセス 深夜の庁舎侵入・公印の無断使用・印影偽造も 26歳主事を免職

対象組織:宮城県山元町 / 規模:免職1名/管理監督責任で戒告2名
// WHAT HAPPENED

町長事務部局の男性主事(26歳)が、2026年6月から7月までの間、他の職員のIDとパスワードを使って庁内共有フォルダに複数回不正アクセスし、データを閲覧・削除していました。深夜の庁舎への不法侵入、公印(町長印)の無断使用、上司2名の印影の偽造、印紙の偽造も確認され、10月16日付で免職となっています。

事案の概要データ

公表日2026年10月20日(山元町「山元町職員の懲戒処分等を公表します」2件目)
処分年月日令和8年(2026年)10月16日
対象者町長事務部局に所属する主事・26歳・男性
処分内容免職
関係職員の処分町長事務部局 課長級(56歳・男性)戒告/班長(48歳・男性)戒告(いずれも管理監督責任)
行為の時期令和8年6月から7月までの間(勤務時間外)
不正アクセス(1)自身の職員用端末から他の職員のIDとパスワードを使用し、複数回にわたり庁内共有フォルダに不正アクセスしてデータを閲覧・操作
不正アクセス(2)他の職員の職員用端末を無断で使用し、他の職員や自身のIDとパスワードを用いて、複数回にわたり庁内共有フォルダや職員個人専用のフォルダに不正アクセスし、データを閲覧・削除等
庁舎への侵入(深夜)7月の一部の事案では、予め開錠していた庁舎1階の扉から深夜に不法に侵入
庁舎への侵入(休日)休日勤務中の他の職員に庁舎1階の扉を開錠させ、当該職員が退庁した後に不法に侵入
公印の無断使用事務手続きを怠り無断で公印(町長印)を使用し、工事および業務委託の請負業者2社に対し、当該公印を押印した契約書を交付
印影の偽造上司2名の印影を偽造し、このうち1名の偽造印影を用いて、未決裁の文書を決裁済文書として使用
印紙の偽造印紙が貼られた書類から印紙部分を読み取り、加工を施すなどの偽造を行い、偽造した印紙を用いて関係業者から提出された書類を偽造し使用
根拠条文地方公務員法第29条第1項第1号(法令等に従う義務違反)、第2号(職務上の義務違反・職務怠慢)、第3号(全体の奉仕者たるにふさわしくない非行)
IDとパスワードの入手方法公表文に記載なし
共有フォルダの中身公表文に記載なし
動機公表文に記載なし
発覚のきっかけ公表文に記載なし
刑事告訴の有無公表文に記載なし

図解:この事故の構造

図:ITの入口(他人のID)と物理の入口(庁舎の扉)の両方が使われ、最後は紙の上の偽造に行き着いた。
1
町長事務部局の男性主事(26歳)2026年6月から7月までの間、勤務時間外に行為を繰り返した
2
他人のID・他人の端末・庁舎の扉他の職員のIDとパスワードを使用。他の職員の端末を無断使用。深夜は予め開錠した1階の扉から侵入し、休日は勤務中の職員に開錠させた
3
庁内共有フォルダ・職員個人専用フォルダ複数回にわたり不正にアクセスし、データを閲覧・操作・削除等
4
公印(町長印)事務手続きを怠り無断で使用し、工事・業務委託の請負業者2社に押印済みの契約書を交付
5
上司の印影・印紙の偽造上司2名の印影を偽造し、未決裁の文書を決裁済文書として使用。印紙も偽造して業者提出書類を偽造した

何が起きたのか

山元町は2026年10月20日、職員の懲戒処分を公表しました。2件公表されたうちの2件目が、今回の事案です。

対象は町長事務部局に所属する26歳の男性主事。処分は免職で、処分年月日は10月16日です。あわせて、管理監督責任を問うため、課長級(56歳)と班長(48歳)の2名が戒告となっています。

公表文に書かれた行為は、大きく4つに分かれます。

①他人のIDとパスワードでの不正アクセス。 令和8年6月から7月までの間、勤務時間外に、自身の職員用端末から他の職員のIDとパスワードを使用し、複数回にわたり庁内共有フォルダに不正アクセスしてデータを閲覧・操作しました。

②他人の端末を使った不正アクセス。 他の職員の職員用端末を無断で使用し、他の職員や自身のIDとパスワードを用いて、庁内共有フォルダや職員個人専用のフォルダに不正アクセスし、データを閲覧・削除等しました。

③庁舎への不法侵入。 7月の一部の事案では、「予め開錠していた庁舎1階の扉から、深夜に不法に侵入」。休日には「休日勤務中の他の職員に庁舎1階の扉を開錠させ、当該職員が退庁した後に不法に侵入」しています。

④公印・印影・印紙の偽造。 事務手続きを怠り無断で公印(町長印)を使用し、請負業者2社に押印済みの契約書を交付。上司2名の印影を偽造し、そのうち1名の偽造印影で未決裁の文書を決裁済文書として使用。さらに、印紙が貼られた書類から印紙部分を読み取って加工し、偽造した印紙で業者提出書類を偽造しました。

IDとパスワードをどう入手したか、共有フォルダに何が入っていたか、動機、発覚のきっかけ、刑事告訴の有無——これらは公表文に書かれていません。

「扉を開けさせる」は、ITの対策では止まらない

この事案で最も目を引くのは、庁舎1階の扉の記述です。

「予め開錠していた庁舎1階の扉から、深夜に不法に侵入」。日中のうちに鍵を開けておいて、夜に入っています。

「休日勤務中の他の職員に庁舎1階の扉を開錠させ、当該職員が退庁した後に不法に侵入」。これは他人を使って鍵を開けさせているということです。頼まれた職員には、何も悪いことをした認識がありません。

ここが、内部不正の難しさです。どちらも、ITのセキュリティ対策では止まりません。 パスワードを複雑にしても、ウイルス対策ソフトを入れても、ログを取っても、「夜に鍵が開いていた」は防げません。

中小企業の事務所に置き換えると、これは非常に身近な話になります。最後に帰る人が戸締まりをする。合鍵を誰が持っているか分からない。シャッターの鍵は裏の引き出しに入っている。 よくある状態です。

やるべきことは3つあります。①鍵を持っている人の一覧を紙で作る(名前と本数)。②退職時に鍵を回収したか、一覧にチェックを入れる。③夜間や休日に誰が入ったかを残す(入退館の記録、または防犯カメラ)。

③がなければ、「誰かが夜に入ったらしい」と気づいても、誰が入ったかを示せません。逆に言えば、記録があることを全員が知っているだけで、相当な抑止になります。

「他人のIDとパスワードを使用し」が成立してしまう状態

この事案は、もう1つ重要な事実を示しています。他人のIDとパスワードが、使える状態にあったということです。

公表文は入手方法を書いていません。しかし、他人のIDとパスワードを使えたという結果だけは確定しています。考えられるのは、だいたい次のどれかです。

付箋やメモに書いてあった。 モニターの縁、キーボードの裏、引き出しの中。中小企業でも非常に多いパターンです。

共有していた。 「この端末の共有アカウント」「部署共通のパスワード」。業務の都合で共有され、そのまま残っているケースです。

推測できた。 名字+生年、社名+1234、初期パスワードのまま。

画面を見られた。 隣で入力しているところを見た。

どれであっても、対策は同じ方向を向きます。①IDは1人1つにする(共有アカウントを廃止する)。②パソコンから離れるときは画面をロックする(WindowsならWindowsキー+L、Macならcontrol+command+Q)。③パスワードを紙に書くなら、鍵のかかる場所に入れる。

特に①です。IDが共有されていると、ログを取っていても「誰がやったか」が分かりません。 共有アカウントは、事故が起きた後の調査を不可能にします。本サイトではこれまでにも、再発防止策の1行目に「共有アカウントの廃止」を掲げた企業の事案を扱いました。それが1行目に来るのは、偶然ではありません。

印影の偽造と「未決裁の文書を決裁済として使用」

4つ目の行為、印影の偽造は、ITの事故とは違う種類の問題です。しかし中小企業にとっては、こちらのほうが切実かもしれません。

公表文はこう書いています。「上司2名の印影を偽造し、このうち1名の偽造印影を用い、未決裁の文書を決裁済文書として使用した」。

つまり、承認を取っていない書類を、承認済みに見せたということです。手口は印影の偽造です。印鑑の画像を作れば、紙の上では区別がつきません。

さらに、公印(町長印)を事務手続きを怠って無断使用し、請負業者2社に契約書を交付しています。相手方の業者は、正式な契約書を受け取ったと考えていたはずです。

中小企業で同じことが起きると、何が困るか。契約が成立してしまうことです。社長の承認を取っていない発注書や契約書が、社長印つきで相手に渡れば、相手は正当な契約と考えます。後から「社内手続きを経ていない」と言っても、簡単には覆りません。

対策は、デジタル化の方向にあります。①社印・代表者印を、鍵のかかる場所で管理し、使用台帳(日付・書類名・使った人・承認者)をつける。② 契約書は電子契約に移す。 電子契約は、誰がいつ承認したかの記録が自動で残るので、「印影を作る」という手口が通りません。

電子契約は難しそうに見えますが、1件あたり数百円で使えるサービスが揃っています。印鑑を押す代わりに承認の記録が残る、というだけの違いです。

時系列で見る経過

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解決までの道のり

庁内共有フォルダへの不正アクセスと公印・印影・印紙の偽造が確認され、2026年10月16日付で当該職員を免職。管理監督責任として課長級・班長の2名を戒告とし、10月20日に公表した。

対応の流れ

  • 2026年6月〜7月他人のIDとパスワード、他人の端末、深夜の庁舎侵入による不正アクセスが行われた
  • (調査)行為の内容を特定。不正アクセス、公印の無断使用、印影の偽造、印紙の偽造が確認される
  • 2026年10月16日地方公務員法第29条第1項第1号・第2号・第3号に基づき、当該職員を免職
  • 2026年10月16日管理監督責任を問い、町長事務部局の課長級(56歳)・班長(48歳)を戒告
  • 2026年10月20日「山元町職員の懲戒処分等の公表基準」に基づき、処分内容を公表

解決できたポイント/残った課題

  • 行為の内容を、不正アクセス・庁舎侵入・公印の無断使用・印影の偽造・印紙の偽造まで具体的に公表している
  • 当該職員の処分だけでなく、管理監督責任として上司2名の処分も同時に公表している
  • 根拠となる地方公務員法の条文を号単位で明示している
  • 一方で、IDとパスワードの入手方法、共有フォルダの中身、動機、発覚のきっかけは公表されていない
  • システム面・物理面の再発防止策は、公表文の町長コメント(法令順守および綱紀粛正の徹底)にとどまる
  • 刑事告訴の有無についての記載はない

中小企業が学ぶべきポイント

  1. 内部不正は、ITの対策だけでは止まらない。鍵と入退館の記録が同じくらい重要になる。
  2. 鍵を持っている人の一覧を紙で作り、退職時の回収にチェックを入れる。
  3. 夜間・休日に誰が入ったかの記録を残す。記録があることを全員が知っているだけで抑止になる。
  4. 他人のIDとパスワードが使える状態なら、ログを取っていても「誰がやったか」は示せない。
  5. IDは1人1つにし、共有アカウントを廃止する。
  6. 席を離れるときは画面をロックする(Windowsキー+L/control+command+Q)。
  7. 社印・代表者印は鍵のかかる場所で管理し、使用台帳(日付・書類名・使った人・承認者)をつける。
  8. 印影は偽造できる。承認の記録が残る電子契約に移すほうが確実。

出典・参考

ご注意
本記事は、各組織の公表資料および報道をもとに、要点をわかりやすく整理したものです。 被害件数は「漏えいした可能性のある最大件数」として公表されている場合があり、実際に漏えいが確定した件数とは異なることがあります。 また、調査の進展により内容が変わる場合があります。正確な情報は必ず出典元の公式発表をご確認ください。

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