事案の概要データ
| 報道 | 2026年10月30日(Security NEXT) |
|---|---|
| 攻撃 | 2026年10月27日未明 |
| 判明 | 2026年10月28日 |
| 対象システム | 「デントリネット」(電力・ガス取引監視等委員会の関連サイト) |
| システムの役割 | 小売電気事業者・ガス小売事業者から電力取引報・ガス取引報の提出を受ける |
| 件数 | 未公表 |
| 情報流出 | 有無を含めて調査中 |
| 対応 | サイトを停止。復旧までは事業者からメールで報告を受け付ける |
| 注意 | 省自身の公表文を確認できておらず、内容は報道にもとづく |
図解:この事故の構造
何が起きたのか
経済産業省は、電力・ガス取引監視等委員会の関連サイトがサイバー攻撃を受けたことを明らかにしたと報じられました。
報道によれば、2026年10月27日未明に「デントリネット」が攻撃を受け、翌28日に判明しました。デントリネットは、小売電気事業者やガス小売事業者から、定期的に電力取引報やガス取引報の提出を受けているシステムです。
サイトは停止され、情報流出の有無も含めて調査中とされています。件数は公表されていません。
そして、サイトが復旧するまでは、事業者からの報告をメールで受け付けるとしています。
なお、本記事の時点では省自身の公表文を確認できていません。内容は報道にもとづきます。
注目すべきは「止まったあと」の対応
件数も流出の有無も分かっていない段階なので、被害の評価はできません。この事案で見るべきは、止まったあとどうしたかです。
デントリネットは、事業者が義務として報告を提出する先です。期限があり、出さなければ事業者が困ります。システムが止まれば、全国の小売電気事業者・ガス小売事業者の事務が止まります。
それに対して、「復旧まではメールで受け付ける」と代替手段をすぐ示した。これは正しい対応です。
攻撃を受けたとき、組織は3つのことを同時にやらなければなりません。①止める(被害の拡大を防ぐ)。②調べる(原因と範囲)。③続ける(本来の業務を止めない)。
①と②は技術の話で、担当部署や外部の専門業者がやります。しかし③は現場の判断です。そして、事故のときにいちばん忘れられるのがこれです。
システムを止めた瞬間、「では顧客はどうやって注文するのか」「取引先はどうやって請求書を出すのか」という問題が発生します。ここを決めていないと、復旧を待つしかなくなり、業務が完全に停止します。
「相手に出してもらう仕組み」は止まると困る
中小企業に置き換えてみます。自社が相手に何かを出してもらう仕組みを持っているなら、同じ問題を抱えています。
・Webの受注フォーム(取引先が注文を入れる)
・請求書のアップロード(外注先が請求書を送ってくる)
・予約フォーム(お客様が予約を入れる)
・問い合わせフォーム(見積依頼が届く)
・勤怠の打刻システム(スタッフが出退勤を入れる)
これらが止まったとき、相手は「出せない」状態になります。そして相手は、こちらのシステムが止まっていることを知りません。出したつもりで出ていない、ということが起きます。
やることは2つです。
①代替手段を先に決める。 「フォームが使えないときはこのメールアドレスへ」「電話はこの番号へ」「FAXでも受け付ける」。どれか1つでいいので決めておきます。
②案内文を先に書いておく。 止まってから文章を考えると、焦って1日使います。「現在、○○フォームがご利用いただけません。お手数ですが△△までメールでお送りください。件名に□□とご記入ください」という文を、今のうちに作ってファイルに保存しておく。これだけで、事故のときの初動が数時間速くなります。
そして、その案内をどこに出すかも決めておく。ホームページが止まっているなら、ホームページには出せません。SNS、メール、電話の自動音声、取引先への一斉FAX。使える経路を確認しておいてください。
松屋フーズが券売機のクーポンで対応したのも、同じ構造です。アプリが止まっても、店舗の券売機は動いていました。デジタルが止まったときに戻れる場所を残しておくことが効きます。
行政システムが狙われる意味
2026年10月は、自治体や行政機関のシステムが関わる事案も続きました。アルカディアの配信システムを通じた全国自治体の防災メール、一関市の情報配信サービス、環境省のメールマガジン、そして本件です。
行政のシステムには、事業者や住民の情報が集まります。デントリネットの場合、提出するのは事業者ですから、事業者の担当者情報や取引の数量データが入っている可能性があります(内容は公表されていません)。
これは、事業者側にとっても自分の問題です。自社の情報が、取引先だけでなく行政のシステムにも預けられているということだからです。
前の記事でも書いた「顧客情報を預けている外部サービスの一覧」には、行政への提出先も加えてください。どの制度で、どのシステムに、何を出しているか。補助金の申請システム、電子入札、社会保険の手続き、税の申告。思い出せないほどあるはずです。
一覧があれば、「○○省のシステムに不正アクセス」というニュースが流れたとき、自社が関係あるかを数分で判断できます。
時系列で見る経過
- 2026年10月27日 未明「デントリネット」がサイバー攻撃を受ける(報道)
- 2026年10月28日攻撃が判明
- (判明後)サイトを停止。情報流出の有無も含めて調査を開始。事業者からの報告はメールで受け付けると案内
- 2026年10月30日報道により判明(省の公表文は未確認)
中小企業が学ぶべきポイント
- 攻撃を受けたら、止める・調べる・続けるの3つを同時にやる。忘れられるのは「続ける」。
- 相手に出してもらう仕組み(受注フォーム、請求書アップロード、予約、打刻)は、止まると相手が困る。
- 代替手段(メール、電話、FAX)を先に1つ決めておく。
- 止まったときの案内文を今のうちに書いてファイルに保存しておく。初動が数時間速くなる。
- 案内をどこに出すかも決める。ホームページが止まっていれば、そこには出せない。
- デジタルが止まったときに戻れる場所(店頭、紙、電話)を残しておく。
- 外部サービスの一覧には、行政への提出先(補助金、電子入札、社会保険、税)も加える。
出典・参考
本記事は、各組織の公表資料および報道をもとに、要点をわかりやすく整理したものです。 被害件数は「漏えいした可能性のある最大件数」として公表されている場合があり、実際に漏えいが確定した件数とは異なることがあります。 また、調査の進展により内容が変わる場合があります。正確な情報は必ず出典元の公式発表をご確認ください。