事案の概要データ
| 報道 | 2026年10月28日(Security NEXT) |
|---|---|
| 発覚 | 2026年9月20日(外部からの指摘) |
| 掲載期間 | 2018年から2026年9月20日まで(約8年間) |
| 対象 | 2018年に保有していた個人情報 599人分 |
| 項目 | 氏名、年齢、最終学歴、職業、在勤市町村、身長、趣味、特技、続柄など |
| サイト | 愛知県が運営する婚活情報ポータル「あいこんナビ」 |
| 原因 | イベント主催団体が2018年に掲載申請した際、イベント情報と一緒に非公開情報を申込用ファイルへ誤って添付。県が気づかず承認して掲載された |
| 対応 | 2026年9月20日に非公開情報を削除。対象の関係者へ書面で謝罪 |
| 注意 | 県自身の公表文を確認できておらず、内容は報道にもとづく |
図解:この事故の構造
- 2018年イベント主催団体が掲載申請。申込用ファイルに無関係の個人情報599人分を誤って添付。県が気づかず承認し掲載
- ↓ 約8年間
- 2018年〜2026年9月サイト上で閲覧可能な状態が続く。担当者が交代しても気づかれなかった
- 2026年9月20日外部からの指摘で判明。同日に非公開情報を削除
- 2026年10月28日報道により判明。対象の関係者へは書面で謝罪済み
何が起きたのか
愛知県が運営する婚活情報ポータルサイト「あいこんナビ」に、イベントとは無関係の個人情報が掲載されていたと報じられました。
報道によれば、対象は2018年に保有していた599人分の個人情報。項目は氏名、年齢、最終学歴、職業、在勤市町村、身長、趣味、特技、続柄などです。
原因は、イベント主催団体が2018年に掲載申請をした際、イベント情報と一緒に非公開情報を申込用ファイルへ誤って添付したこと。県はそれに気づかず承認し、そのまま掲載されたとみられています。
2026年9月20日に外部からの指摘で判明し、同日に非公開情報を削除。対象の関係者へ書面で謝罪が行われました。
なお、本記事の時点では県自身の公表文を確認できていません。内容は報道にもとづきます。
8年間、誰も気づかなかった
この事案の核心は、件数ではなく時間です。2018年から2026年9月まで、約8年間掲載され続けていました。
考えてみてください。8年の間に、担当者は何人も入れ替わっています。サイトのリニューアルもあったかもしれません。それでも誰も気づきませんでした。
なぜか。ファイルの中身は、開かないと見えないからです。
サイトに掲載されていたのは「イベントの申込用ファイル」です。見た目には正常な申込書です。誰かがそのファイルを開き、必要な部分より下までスクロールして初めて、無関係の個人情報が見えます。
ExcelやWordのファイルには、こういう危険が3つあります。
①別のシートに情報が残っている。 Excelのシートは、下のタブを見ないと気づきません。前に作った名簿のシートがそのまま残っていることがあります。
②見えない範囲にデータがある。 行や列を非表示にしていても、データは消えていません。印刷範囲の外、スクロールした先にも残ります。
③ファイルの履歴・作成者情報が残る。 変更履歴、コメント、作成者名、保存場所のパス。これらはプロパティに残ります。
そして本件はさらに手前の問題です。そもそも添付するファイルを間違えた、あるいは不要な情報を消さずに添付したということです。
外部から申請されたファイルを、そのまま公開していないか
本件の構造を整理すると、こうなります。
①外部(イベント主催団体)がファイルを提出した → ②県が内容を確認して承認した → ③そのまま公開された
問題は②です。県は承認していますが、ファイルの中身を最後まで見ていませんでした。
この構造は、中小企業にもあります。
・取引先から送られた資料を、自社サイトに掲載する(チラシ、料金表、カタログ)
・お客様から提供された写真や原稿を、SNSや広報誌に載せる
・協力会社が作った資料を、そのまま配布する
・応募作品や投稿を、そのまま掲載する
外から来たファイルは、中身を自分で確認してから公開する。これが原則です。送った側は「公開されるのはこの部分だけ」と思っていますが、ファイル全体が公開されます。
実務の手順としては3つです。①ファイルは必ず開いて、最後までスクロールする。 ②Excelは全シートのタブを確認する。 ③PDFにしてから公開する。 特に③が効きます。PDFに変換すると、別シートや非表示の行は基本的に含まれません(変換方法によるので、変換後のPDFも開いて確認してください)。
もう1つ。掲載したものを定期的に見直す仕組みがあれば、8年にはなりませんでした。「古いお知らせは1年で下げる」といった運用ルールを決めておくと、不要なファイルが残り続けることを防げます。
「身長」「趣味」「続柄」が並ぶ名簿
項目を見てください。氏名、年齢、最終学歴、職業、在勤市町村、身長、趣味、特技、続柄。
これは婚活のプロフィール情報です。普通の顧客名簿とは質が違います。
最終学歴と職業と在勤市町村がそろうと、個人を特定できる可能性が高まります。そこに身長や趣味が加わると、その人がどういう人かが見えてきます。
そして「続柄」。これは家族構成に関わる情報です。親の代理で申し込んでいたのかもしれません。
何より、婚活サービスに登録していたという事実そのものが、本人にとって知られたくないことであり得ます。8年前の情報であっても、本人にとっては同じです。
岡山県の婚活イベント(申込者26人の情報が閲覧可能になり、イベントは中止)と同じ分野で、同じ時期に報じられました。件数は599人と26人で大きく違いますが、1件あたりの重さは変わりません。
重い情報を扱う業務では、公開の手順を厳しくする。見直しの周期を短くする。これは件数の大小とは別の話です。
時系列で見る経過
- 2018年イベント主催団体が掲載申請。イベント情報と一緒に、無関係の個人情報599人分を申込用ファイルへ誤って添付。県が気づかず承認し掲載
- 2018年〜2026年9月約8年間、サイト上で閲覧可能な状態が続く
- 2026年9月20日外部からの指摘で判明。同日に非公開情報を削除
- (その後)対象の関係者へ書面で謝罪
- 2026年10月28日報道により判明(県の公表文は未確認)
解決までの道のり
外部からの指摘を受けた当日に該当情報を削除し、対象の関係者へ書面で謝罪した。
対応の流れ
- 2026年9月20日外部からの指摘を受け、同日に非公開情報を削除
- (その後)対象の関係者へ書面で謝罪
解決できたポイント/残った課題
- 指摘を受けた当日に削除している
- 2018年という古い情報でありながら、対象者を特定して謝罪まで行っている
- ただし、約8年間気づかなかった点と、再発防止策については報じられていない
- 県自身の公表文は確認できておらず、掲載経緯の詳細は不明
中小企業が学ぶべきポイント
- 外から提出されたファイルは、中身を自分で確認してから公開する。送った側は一部だけ公開されると思っている。
- ファイルは必ず開いて最後までスクロールする。Excelは全シートのタブを確認する。
- Excelの非表示の行・列、印刷範囲の外、別シートにデータが残っていないかを見る。
- 公開はPDFに変換してから行う。変換後のPDFも開いて確認する。
- 掲載物に見直しの周期を決める。「古いお知らせは1年で下げる」があれば8年にはならない。
- 変更履歴・コメント・作成者名などのファイルプロパティも残る。
- 婚活・相談など、登録していた事実そのものが知られたくない情報がある。年数がたっても同じ。
出典・参考
本記事は、各組織の公表資料および報道をもとに、要点をわかりやすく整理したものです。 被害件数は「漏えいした可能性のある最大件数」として公表されている場合があり、実際に漏えいが確定した件数とは異なることがあります。 また、調査の進展により内容が変わる場合があります。正確な情報は必ず出典元の公式発表をご確認ください。