このページの要点
① 市内50駅のうち、宮前区にあるのは3駅だけ。1駅あたり7万8,083人を受け持ちます。同じ北部の多摩区(2万4,281人)の3.2倍、もっとも少ない川崎区(2万1,262人)の3.7倍です。
② 駅が少ない区ほど、鉄道で通勤する人が少ない。宮前区の鉄道利用率は39.4%で、中原区の59.6%より20.2ポイント低い。代わりに自家用車が11.2%と市内最多です。
③ 事業者別ではJR東日本が19駅・68万5,935人でトップ。次いで東急10駅・40万3,003人。東急は駅数が半分でも、1駅あたりではJRを上回ります(4万300人 対 3万6,102人)。
区によって、駅の密度が違う
区別の駅数と1駅あたり人口(2024年)
棒が駅数、菱形が1駅あたりの人口
1駅あたりの人口で見ると差が際立ちます。宮前区7万8,083人に対し、もっとも少ない川崎区は2万1,262人。3.7倍の開きがあります。同じ北部の多摩区(2万4,281人)と比べても3.2倍です。
宮前区は東急田園都市線の宮崎台・宮前平・鷺沼の3駅のみ。人口23万4,249人を3駅で受け持っています。
いっぽう多摩区は南武線・小田急線・京王相模原線が通り、9駅。同じ北部でも鉄道の便がまったく違います。
出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第13章、住民基本台帳をもとに作成
面積あたりの駅の数(2024年)
10平方キロメートルあたりの駅数/棒が駅密度、菱形が人口密度
もっとも少ないのは宮前区の1.61駅。次いで川崎区2.79駅です。
川崎区は11駅と数が多いのに密度が低いのは、面積39.49km²が市内最大だからです。「土地利用と工業用地」のページで見たとおり、川崎区の多くは臨海部の工業地帯で、住宅地ではありません。
菱形(人口密度)と見比べると、中原区・幸区は駅も人も密、宮前区は人はいるのに駅が少ないという構図が見えます。
出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第13章、社会・人口統計体系をもとに作成
駅が少ない区ほど、鉄道を使わない
横軸が1駅あたりの人口、縦軸が鉄道での通勤・通学の割合(2020年国勢調査)
右端の宮前区は1駅7万8,083人で鉄道利用率39.4%。左のほうの多摩区は1駅2万4,281人で53.5%。
ただし川崎区は例外です。1駅2万1,262人と少ないのに、鉄道利用率は28.4%で市内最低。「通勤の交通手段とクルマ離れ」のページで見たとおり、川崎区は自転車が18.2%と市内で突出しています。臨海部の職場へ自転車で通う人が多いためです。
中原区は1駅3万7,676人と中位ですが、鉄道利用率は59.6%で市内最高。武蔵小杉という結節点があるかどうかで、数字は変わります。
出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第13章、総務省「令和2年国勢調査」をもとに作成
事業者ごとの姿
鉄道会社別の駅数と乗車人員(2024年)
棒が乗車人員、菱形が駅数/私鉄は暦年、JRは年度
1駅あたりで見ると順位が変わります。東急4万300人がトップで、JR3万6,102人を上回ります。東急は駅数が半分でも、1駅の集客力が高い。
もっとも少ないのは京浜急行の1万3,743人。大師線の小さな駅が多いためです。
出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第13章をもとに作成
駅からの距離が、土地の値段を決める
駅距離帯別の地価(住宅地・2025年)
地価公示の中央値(円/㎡)/カッコ内は地点数
そこから先で落ちます。1〜1.5kmが27万1,500円、1.5km以上が21万円。600m〜1kmの57%にとどまります。
「地価公示の推移(区別)」のページで見たとおり、川崎の地価は駅距離でほぼ決まります。駅が少ない区は、駅から遠い土地が多くなり、地価も安くなる。宮前区の住宅地の中央値24万1,500円、麻生区20万8,500円という数字は、この構造から出ています。
出典:国土交通省「国土数値情報 地価公示データ(L01)」令和7年版をもとに作成
解説:3駅で23万人
宮前区の3駅
川崎市内で乗車人員が公表されている駅は50駅あります。これを区ごとに数えると、分布はかなり偏っています。
川崎区11駅、多摩区9駅、高津区8駅、麻生区8駅、中原区7駅、幸区4駅。そして宮前区は3駅です。
宮前区にあるのは東急田園都市線の宮崎台・宮前平・鷺沼の3駅だけ。人口23万4,249人を、この3駅で受け持っています。
1駅あたり7万8,083人。もっとも少ない川崎区(2万1,262人)の3.7倍、同じ北部の多摩区(2万4,281人)の3.2倍です。
面積あたりで見ても、宮前区は10平方キロメートルあたり1.61駅。高津区の4.89駅、中原区の4.75駅と比べると3分の1です。
駅が少ないと、鉄道を使わなくなる
この差は、通勤の仕方に直結します。
「通勤の交通手段とクルマ離れ」のページで見たとおり、鉄道で通勤・通学する人の割合は、中原区59.6%、多摩区53.5%、麻生区48.5%、高津区46.8%、幸区41.2%、宮前区39.4%、川崎区28.4%。
1駅あたりの人口と並べると、右下がりの関係が見えます。1駅で受け持つ人が多い区ほど、鉄道の利用率が低い。
宮前区は代わりに自家用車が11.2%と市内でもっとも高くなっています。麻生区の11.6%と並び、北部の2区だけが1割を超えます。
「住宅の築年数と旧耐震」のページで見たとおり、宮前区は1970〜80年代に開発された戸建て住宅地が中心です。当時の郊外開発は、車の利用を前提にしていました。
川崎区と中原区は、例外の方向が逆
この関係から外れる区が2つあります。
川崎区は1駅あたり2万1,262人と市内でもっとも少ないのに、鉄道利用率は28.4%で市内最低です。
理由は「通勤の交通手段とクルマ離れ」のページで見たとおり。川崎区は自転車が18.2%と市内で突出しています。次に高い幸区(13.3%)を5ポイント近く上回ります。
「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおり、川崎区の昼夜間人口比率は116.2%で7区唯一の100超。区内に働く場所があるから、電車に乗る必要がないのです。
逆に中原区は1駅あたり3万7,676人と中位ですが、鉄道利用率は59.6%で市内最高。武蔵小杉というJR・東急の結節点があり、都心へのアクセスが良い。「武蔵小杉の20年」のページで見たとおり、この区は都心へ通う人が住む街として成長しました。
東急のほうが「濃い」
事業者別に見ると、規模と密度が一致しません。
乗車人員ではJR東日本が19駅・68万5,935人でトップ。市内全体の46.0%を占めます。次いで東急10駅・40万3,003人(27.0%)、小田急11駅・25万5,967人、京浜急行8駅・10万9,942人、京王2駅・3万6,996人。
ところが1駅あたりで計算すると、東急が4万300人でトップ。JRの3万6,102人を上回ります。
「駅別 乗車人員ランキング」のページで見たとおり、東急には溝の口(14万418人)、武蔵小杉(10万736人)という大駅があります。駅数が半分でも、1駅の集客力が高い。
もっとも少ないのは京浜急行の1万3,743人。大師線の港町・鈴木町・東門前といった小さな駅が多いためです。
駅から1.5kmで、4割落ちる
鉄道の便は、土地の値段に直接表れます。
住宅地の地価(中央値)を駅からの距離で分けると、300〜600mが36万4,000円、600m〜1kmが36万8,000円、1〜1.5kmが27万1,500円、1.5km以上が21万円。
興味深いのは、600m〜1kmまではほとんど差がないことです。徒歩10分程度までは同じ扱いで、そこから先で急に落ちます。1.5km以上は600m〜1kmの57%です。
「駅別 地価ランキング」のページで見たとおり、宮前区の住宅地の中央値は24万1,500円、麻生区は20万8,500円。駅が少ない区は、駅から遠い土地が多くなり、そのぶん安くなるという関係が成り立ちます。
中小企業への示唆
1. 宮前区は「駅前商圏」が3つしかない——宮崎台・宮前平・鷺沼。この3駅を外すと、徒歩客はほとんど期待できません。代わりに駐車場つきの店舗が成り立つ数少ない区でもあります。
2. 川崎区は自転車商圏——鉄道28.4%、自転車18.2%。駅前ではなく「自転車で5〜10分」の距離感で商圏を描くべきです。駐輪場の有無が来店を左右します。
3. 東急沿線は1駅の集客力が高い——1駅平均4万300人。同じ「駅前」でも、東急の駅のほうが通行量が多い傾向があります。「駅別 地価ランキング」で見たとおり、地価も東横線3駅が上位を独占します。
4. 駅から1.5km以上なら賃料が4割安い——21万円 対 36万8,000円。倉庫・作業場・バックオフィスのように客が来ない用途なら、コストを大きく落とせます。ただし従業員の通勤は不利になります。
5. 高津区・中原区は駅密度が高い——10km²あたり4.89駅・4.75駅。徒歩圏の商売がもっとも成立しやすい区です。「飲食店の数と密度」のページで見たとおり、中原区の飲食店は956店で市内2位です。
データの注意点
「川崎市の鉄道網」を直接示す統計はありません。このページは駅の乗車人員・人口・面積・通勤手段・地価という別々の統計を突き合わせたものです。
駅がどの区にあるかは、統計に直接書かれていません。地価公示の各地点に記録された最寄り駅名から多数決で判定し、該当のない8駅(京急川崎・港町・鈴木町・川崎新町・尻手・武蔵溝ノ口・若葉台・黒川)は所在地から手で補いました。区境に近い駅では、判定が実態とずれる可能性があります。
無人駅は含まれていません。鶴見線の各駅(武蔵白石・浜川崎・昭和・扇町・大川)と南武支線の小田栄、川崎新町は乗車人員が公表されていないため、駅数には数えていますが乗車人員はゼロ扱いです。
乗車人員は私鉄が暦年、JRが年度です。集計期間が違うため、合算した数値は目安です。
人口は住民基本台帳(2024年1月1日現在、外国人を含む総数)、面積は総面積(2024年)です。通勤の交通手段は2020年国勢調査で、コロナ禍の在宅勤務の影響を含みます。
1駅あたりの人口は区の人口を区内の駅数で割ったものです。実際には区境をまたいで駅を使う人が多いため、目安の数字としてご覧ください。