武蔵小杉の20年

人は6万5,000人増えました。働く場所は増えていません。

このページは既存のデータを組み合わせたものです:「武蔵小杉」を単位とする統計は存在しないため、中原区の数値と武蔵小杉駅の乗車人員で再開発の20年をたどります。中原区には武蔵小杉のほか武蔵中原・武蔵新城・元住吉なども含まれるため、区の数字がそのまま武蔵小杉を表すわけではありません。

このページの要点

① 中原区の人口は20年で6万5,383人増えました。2000年19万8,300人 → 2020年26万3,683人(+33.0%)。市内7区でもっとも大きな増加です。

② 武蔵小杉駅は1日21万4,188人。JR11万3,452人+東急10万736人で、単独の駅として市内最大です。

③ ところが昼夜間人口比率は91.7%(1995年)から83.3%(2020年)へ下がりました。8.4ポイントの低下。住む人だけが増えたということです。

人口はどう増えたか

中原区の人口と昼夜間人口比率(1980〜2020年)

国勢調査/棒が夜間人口(住んでいる人)、折れ線が昼夜間人口比率

読み方:1980年から1995年までは19万人前後で横ばいでした。動き出すのは2000年以降です。
2000年19万8,300人、2005年21万543人、2010年23万3,925人、2015年24万7,529人、2020年26万3,683人。
2005年から2010年の5年間だけで2万3,382人増。武蔵小杉のタワーマンション群が竣工した時期にあたります。
折れ線(昼夜間人口比率)は逆方向です。1995年91.7%、2005年90.4%、2015年85.5%、2020年83.3%。住む人が増えたぶん、比率は下がりました。働く場所が同じペースで増えなかったということです。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:国勢調査)をもとに作成

7区のなかでの中原区(2000年→2020年の増加率)

国勢調査人口の20年間の変化率(%)

読み方:中原区の+33.0%は7区でもっとも大きな伸びです。次いで幸区、川崎区。
いっぽう多摩区は最下位。「7区別 人口と人口密度」のページで見たとおり、市内でも南部と北部で動きがはっきり分かれます。
「将来推計人口」で見たとおり、中原区は2050年まで市内でもっとも増える区(2025年比+9.2%)でもあります。20年の伸びは、まだ終わっていません。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

駅と住宅

東横線3駅の乗車人員(2020〜2024年)

武蔵小杉はJR(年度)と東急(暦年)を分けて表示

読み方:武蔵小杉はJRが8万8,994人(2020年度)から11万3,452人(2024年度)へ+27.5%、東急が8万2,403人から10万736人へ+22.2%。
合わせて21万4,188人で、「駅別 乗車人員ランキング」のページで見たとおり単独の駅として市内最大です。
隣の新丸子・元住吉も伸びていますが、規模は8分の1以下。武蔵小杉に集中していることがわかります。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第13章をもとに作成

中原区の住宅は、いつ建ったか(2023年)

居住世帯のある住宅13万6,100戸の建築年次別内訳

読み方:2001年以降に建った住宅が5万2,570戸。中原区の住宅の38.6%にあたります。
年代別に見ると、2006〜2010年1万8,430戸、2011〜2015年1万7,290戸、2016〜2020年1万6,670戸と15年にわたって高い水準が続いています。
「住宅の築年数と旧耐震」のページで見たとおり、中原区の旧耐震住宅は6.4%と7区でもっとも低い。市内でいちばん新しい住宅ストックを持つ区です。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:令和5年住宅・土地統計調査)をもとに作成

地価はどう動いたか

中原区の住宅地の中央値(1993〜2025年)

地価公示(円/㎡)/市全体との比較

読み方:中原区は1995年39万3,500円から2005年27万1,000円まで下がり、そこから回復して2025年42万4,000円。底から56.5%上昇し、1995年の水準を超えました。
市全体は同じ期間に35万9,000円→22万3,000円→29万5,000円で、1995年比ではまだ17.8%低いまま。
中原区だけが、バブル後の水準を回復しています。「駅別 地価ランキング」のページで見たとおり、武蔵小杉は58万円/㎡で市内トップです。

出典:国土交通省「国土数値情報 地価公示データ(L01)」令和7年版をもとに作成

解説:住む街になった

20年で6万5,383人

中原区の人口は2000年の19万8,300人から2020年の26万3,683人へ、20年で6万5,383人(33.0%)増えました。市内7区でもっとも大きな伸びです。

それ以前は動いていません。1980年18万5,283人、1985年18万3,455人、1990年18万7,707人、1995年19万385人。15年間ほぼ横ばいでした。

変化が始まったのは2000年前後です。とくに2005年から2010年の5年間で2万3,382人増。武蔵小杉駅周辺で高層マンションの竣工が相次いだ時期にあたります。

2010年から2020年でもさらに2万9,758人増えました。増加は20年間続いています。

住宅の4割が2001年以降

住宅の建築年次を見ると、この変化がはっきりします。

2023年時点で中原区にある住宅13万6,100戸のうち、2001年以降に建ったものが5万2,570戸、38.6%。

年代別では2001〜2005年1万4,180戸、2006〜2010年1万8,430戸、2011〜2015年1万7,290戸、2016〜2020年1万6,670戸。15年以上にわたって、5年ごとに1万7,000戸前後が建ち続けました。

「住宅の築年数と旧耐震」のページで見たとおり、中原区の旧耐震住宅(1980年以前)は6.4%で7区最低。宮前区の17.4%と比べると2.7倍の差があります。市内でいちばん新しい住宅ストックを持つ区になりました。

駅は市内最大になった

武蔵小杉駅の1日平均乗車人員は、JRが11万3,452人(2024年度)、東急が10万736人(2024年)。合わせて21万4,188人です。

「駅別 乗車人員ランキング」のページで見たとおり、これは単独の駅として市内最大。JR川崎駅(19万4,391人)を上回ります。

2020年からの4年でJRは+27.5%、東急は+22.2%。コロナ後の回復としても大きな伸びです。

隣の新丸子(1万3,132人)、元住吉(2万9,676人)と比べると、武蔵小杉が飛び抜けていることがわかります。

ところが昼夜間人口比率は下がった

ここまでは「発展した街」の話です。ところが、別の数字を見ると違う面が出てきます。

中原区の昼夜間人口比率は、1995年91.7%、2005年90.4%、2015年85.5%、2020年83.3%。25年で8.4ポイント下がりました。

「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおり、この指標は100を超えると「昼に人が集まる街」、下回ると「昼に人が出ていく街」を意味します。

中原区は7区のなかで下落幅がもっとも大きい区でした。人口が33%増えたのに、昼間人口はそこまで増えなかったということです。

つまり武蔵小杉は「住む街」として成長しました。「働く街」としてではありません。

ただし雇用がないわけではありません。「研究開発・知識サービスの集積」のページで見たとおり、中原区の情報通信業の従業者は1万7,205人で、区の従業者10万3,933人の16.6%。これは市全体(6.6%)の2.5倍で、市内の情報通信業従事者の48%が中原区で働いています。

それでも人口の伸びには追いつきませんでした。増えた6万5,383人の多くは、東京へ通っています。

地価だけが、バブル前の水準に戻った

もうひとつ、中原区だけに起きたことがあります。

住宅地の地価(中央値)は1995年39万3,500円/㎡から2005年27万1,000円まで下がり、そこから回復して2025年42万4,000円。底から56.5%上昇し、1995年の水準を上回りました。

「地価公示の推移(区別)」のページで見たとおり、川崎市全体では住宅地の中央値が1993年40万6,000円→2025年29万5,000円で、いまも27.3%低いままです。

市内で1995年の水準を回復したのは中原区だけということになります。「駅別 地価ランキング」で見たとおり、武蔵小杉は58万円/㎡で市内トップです。

これから20年

「将来推計人口」のページで見たとおり、中原区の人口は2025年の26万4,595人から2045年の28万9,266人まで増え続ける見通しです(+9.2%)。市内7区でもっとも大きな伸びです。

「土地利用と工業用地」で見たとおり、川崎市の用途地域は38年で1.5%しか増えていません。土地が増えないなかで、人だけが増え続けます。

「飲食店の数と密度」のページで見たとおり、中原区の飲食店は956店で市内2位ですが、人口1万人あたりでは37.6店。川崎区の53.6店には遠く及びません。人口に対して、店はまだ少ない。

中小企業への示唆

1. 中原区は「住む人」の市場——昼夜間人口比率83.3%。平日昼の来街者は期待できません。夕方・夜・週末に振り切った設計が必要です。

2. 店はまだ足りていない——人口1万人あたり飲食店37.6店(川崎区53.6店)。人口の伸びに商業が追いついていない状態が続いています。

3. 賃料は市内最高水準——住宅地42万4,000円/㎡、武蔵小杉駅周辺は58万円/㎡。固定費は市内で最も重い。回転率か客単価で取り返す設計が要ります。

4. 情報通信業が1万7,205人——市内の同業従事者の48%が中原区。B to Bなら、この集積が使えます。

5. 新しい住宅ばかり=リフォーム需要は薄い——旧耐震6.4%で7区最低。耐震改修・建て替えの営業先としては、宮前区・多摩区のほうが向いています。

データの注意点

「武蔵小杉」という単位の統計はありません。このページは中原区の数値と武蔵小杉駅の乗車人員を組み合わせたものです。中原区には武蔵中原・武蔵新城・元住吉・向河原なども含まれます。

人口は国勢調査(5年ごと、各年10月1日現在)です。住民基本台帳とは数値が異なります。

駅の乗車人員は私鉄が暦年、JRが年度です。集計期間が違うため、合算した21万4,188人は目安の数字です。

地価の中央値は、その年に存在した地点にもとづきます。標準地は毎年見直されるため、同じ地点を追い続けた数字ではありません。中原区は1995年10地点、2025年23地点です。

昼夜間人口比率は国勢調査によるもので、2020年はコロナ禍の在宅勤務の影響を含みます。