このページの要点
① 鉄道・電車だけで通勤・通学する人は45.8%。政令指定都市20市で1位です。2位以下を引き離し、最下位の浜松市(2.7%)とは17倍の差があります。
② 自家用車は8.2%で20市の最下位。1位の浜松市(68.9%)の8分の1。川崎は、日本の大都市でもっとも車を使わない街です。
③ 10年で鉄道シフトがさらに進みました。2010年の41.7%から2020年の45.8%へ4.1ポイント上昇。いっぽう自家用車は8.7%から8.2%へ、オートバイは3.0%から2.1%へ下がっています。
川崎の人は、どうやって通っているか
通勤・通学の交通手段(2010年と2020年・川崎市)
自宅外通勤・通学者70万9,406人(2020年)の内訳
10年前と比べると、鉄道が+4万9,738人(+4.1ポイント)と大きく伸びました。逆に減ったのはオートバイの−4,637人だけです。
自家用車は5万7,656人から5万8,211人へ、10年でわずか555人しか増えていません。通勤・通学者が4万8,469人増えたなかで、車で通う人はほとんど増えなかったということです。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:国勢調査)をもとに作成
政令指定都市20市のなかで
2020年/自宅外通勤・通学者に占める割合/川崎市を濃い色で表示
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:令和2年国勢調査)をもとに作成
鉄道と自家用車は、きれいに反比例する
横軸が鉄道・電車の割合、縦軸が自家用車の割合(%・2020年)
川崎市(赤い点)は右下の端。鉄道でもっとも右、自家用車でもっとも下。20市のなかで最も「鉄道の街」だといえます。
対極にあるのが左上の浜松市(鉄道2.7%、自家用車68.9%)。同じ政令指定都市でも、暮らし方はまったく違います。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成
7区でどう違うか
区別の交通手段(2020年)
それぞれの区の自宅外通勤・通学者を100%としたときの内訳
もっとも低いのは川崎区の28.4%。ただし川崎区は自転車が18.2%と7区で突出しています。臨海部の工場へ自転車で通う——他区とは通勤の形がまったく違います。
自家用車の割合が高いのは麻生区11.6%、宮前区11.2%。駅から離れた住宅地が多い北部の特徴です。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成
持っている台数はどうか
軽自動車等と原動機付自転車の台数(2010年〜2024年・川崎市)
軽自動車等には軽自動車・小型特殊自動車を含む
いっぽう軽自動車等は17万5,594台から18万408台へ2.7%増加。2012年に底を打ち、そこから増えています。
つまり「クルマ離れ」といっても、減ったのは原付であって軽自動車ではありません。近距離の足がバイクから自転車・電動アシストへ移った——そう読むのが自然です。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成
解説:日本でいちばん車を使わない大都市
鉄道1位、自家用車最下位
2020年、川崎市に住む70万9,406人が自宅を出て通勤・通学していました。そのうち鉄道・電車だけを使う人が32万5,260人、45.8%。政令指定都市20市で1位です。
いっぽう自家用車を使う人は5万8,211人、8.2%で20市の最下位。1位の浜松市は68.9%ですから、8分の1にとどまります。
この2つの数字は、川崎という街の性格をこれ以上ないほど簡潔に表しています。日本の大都市で、もっとも車を使わない街。
理由は地形と鉄道網です。川崎市は多摩川に沿って北西から南東へ細長く伸び、そこをJR南武線が縦に貫きます。横方向にはJR東海道線・京浜東北線、東急東横線・目黒線、東急田園都市線、京急線、小田急線。市内のほぼどこからでも、駅まで歩けるという都市構造になっています。
鉄道と車は、きれいに反比例する
20市を散布図に置くと、驚くほどきれいな右下がりの線が現れます。鉄道の割合が高い都市ほど、自家用車の割合が低い。
右下の端が川崎市(鉄道45.8%、自家用車8.2%)。左上の端が浜松市(鉄道2.7%、自家用車68.9%)。同じ「政令指定都市」でも、暮らしの前提がまったく違うことがわかります。
この関係は、どちらが原因でどちらが結果か一概には言えません。鉄道があるから車を使わないのか、車を使わない人が鉄道沿線に住むのか。おそらく両方でしょう。
10年で、さらに鉄道へ寄った
2010年と2020年を比べると、変化の方向ははっきりしています。
鉄道は27万5,522人から32万5,260人へ+4万9,738人、割合は41.7%から45.8%へ+4.1ポイント。この10年で増えた通勤・通学者4万8,469人を上回る増加です。
逆に自家用車は5万7,656人から5万8,211人へ、10年でわずか555人しか増えていません。割合では8.7%から8.2%へ低下。オートバイは1万9,712人から1万5,075人へ4,637人減、3.0%から2.1%へ下がりました。
「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおり、この10年で川崎市の人口は増え続けました。増えた人は、ほぼ全員が鉄道を選んだということです。
川崎区だけ、自転車の街
区別に見ると、市内でも形が違います。
鉄道の割合がもっとも高いのは中原区の59.6%。武蔵小杉という結節点を持ち、東急・JRの複数路線が交わる区です。次いで多摩区53.5%、麻生区48.5%、高津区46.8%。
もっとも低いのは川崎区の28.4%。ところが川崎区は自転車が18.2%と7区で突出しています。次に高い幸区(13.3%)より5ポイント近く高い。
理由は「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおりです。川崎区の昼夜間人口比率は116.2%——7区で唯一100を超え、区内に働く場所がある。臨海部の工場や駅周辺の事業所へ、自転車で通う人が多いのです。
逆に自家用車の割合が高いのは麻生区11.6%、宮前区11.2%。駅から離れた戸建て住宅地が広がる北部の特徴です。「住宅の築年数と旧耐震」のページで見たとおり、この2区は1970〜80年代に開発された住宅地が中心。当時の郊外開発は車の利用を前提にしていました。
減ったのは原付、軽自動車ではない
保有台数を見ると、「クルマ離れ」という言葉が指すものがはっきりします。
原動機付自転車は2010年の8万5,183台から2024年の6万7,480台へ、20.8%減りました。1万7,703台の減少です。
いっぽう軽自動車等は17万5,594台から18万408台へ、2.7%増えています。2012年の17万3,216台を底に、そこから増加に転じました。
つまり川崎で起きているのは「車が減っている」ことではありません。減ったのは原付です。近距離の足が、原付から自転車や電動アシスト自転車へ移った。「クルマ離れ」ではなく「バイク離れ」と呼ぶほうが正確です。
軽自動車が増えているのは、通勤には使わなくても週末や買い物には車を使う世帯が一定数いるためと考えられます。通勤の手段(8.2%)と保有の実態(18万台)は別の話です。
中小企業への示唆
1. 客は車で来ない——通勤で自家用車を使うのは8.2%、20市最下位。駐車場を前提にした集客モデルは、川崎では効率が悪い。とくに中原区(自家用車4.5%)では顕著です。逆に駅からの徒歩動線が生死を分けます。
2. 商圏は「駅」で切る——鉄道45.8%+2種類17.0%。市民の6割以上が日常的に駅を使います。チラシ、看板、店舗立地——行政区ではなく駅勢圏で考えるのが実態に合います。
3. 川崎区は自転車商圏——18.2%が自転車通勤。自転車で5〜10分という距離感が、この区の商圏の単位です。駐輪場の有無が来店を左右します。
4. 北部だけは車前提でよい——麻生区11.6%、宮前区11.2%。駐車場つきの店舗が意味を持つのは北部です。同じ市内でも、出店条件を分けて考えるべきです。
5. 配送は自転車・小型車で組める——原付が2割減り、自転車が伸びています。ラストワンマイルの配送を電動アシスト自転車やリヤカーで設計する余地は、川崎では他都市より大きいといえます。
データの注意点
交通手段の区分は相互に排他的です。「鉄道・電車」は鉄道だけを使う人を指し、「電車+バス」の人は「2種類を利用」に入ります。したがって実際に鉄道を使う人は45.8%より多く、6割を超えると考えられます。
2020年の内訳を合計すると68万5,298人で、総数70万9,406人との差2万4,108人(3.4%)は交通手段が不詳の人です。
対象は「自宅外」で通勤・通学する人です。自宅で仕事をする人は含まれません。2020年10月の調査で、コロナ禍による在宅勤務の影響を受けている可能性があります。
「軽自動車等台数」には普通乗用車が含まれません。軽自動車・小型特殊自動車の合計です。市区町村別の普通乗用車の保有台数は、この統計では取れませんでした。「クルマ離れ」の全体像を見るには不十分である点にご留意ください。
台数は各年3月末現在です。事業用の車両も含みます。