このページの要点
① 2024年の入込観光客数は1,704万3,000人。神奈川県内で4位です。1位横浜市6,182万6,000人、2位藤沢市2,040万1,000人、3位箱根町2,031万人。
② ところが94.1%が日帰りです。宿泊は101万1,000人にとどまります。数は多いが、泊まらない。
③ 観光客消費額は公表されていません。県内33市町村のうち、消費額が「−」なのは横浜市と川崎市を含む9市町村だけです。
5年でどう戻ったか
川崎市の入込観光客数(2020〜2024年)
棒が宿泊・日帰りの内訳(千人)、折れ線が宿泊率
2021年からの3年で42.1%増。コロナ禍からの回復がはっきり出ています。
注目したいのは宿泊客数です。61万1,000人(2020年)から101万1,000人(2024年)へ65.5%増。日帰り客の伸び(16.8%)を大きく上回ります。
宿泊率は4.3%から5.9%へ。わずかですが、泊まる人の割合が増えています。
出典:神奈川県「令和6年 入込観光客調査」第5表をもとに作成
県内でどの位置にいるか
市町村別の入込観光客数(2024年)
上位20市町村/棒が宿泊・日帰りの内訳(千人)
1位は横浜市6,182万6,000人で県全体の29.7%。2位藤沢市2,040万1,000人、3位箱根町2,031万人、5位鎌倉市1,594万3,000人。
藤沢(江の島)、箱根、鎌倉といった名の通った観光地と肩を並べています。ただし中身は違います。
出典:神奈川県「令和6年 入込観光客調査」第2表をもとに作成
泊まる人の割合
入込観光客数に占める宿泊客の割合(%・2024年)/入込100万人以上の市町村
川崎市は5.9%で10位。入込客数では4位なのに、宿泊率では下位に落ちます。
いっぽう宿泊客数そのものは101万1,000人で県内3位。横浜市980万4,000人、箱根町398万4,000人に次ぎます。母数が大きいため、率が低くても人数は多いという構図です。
「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおり、川崎市は東京と横浜に挟まれています。泊まるなら東京か横浜、という選択になりやすい立地です。
出典:神奈川県「令和6年 入込観光客調査」第2表をもとに作成
観光客消費額(2024年)
消費額が公表されている市町村のみ/横浜市・川崎市は「−」で公表なし
川崎市と横浜市の棒はありません。県の調査で消費額が算出されていないためです。県内33市町村のうち、消費額が「−」なのは9市町村——横浜市、川崎市、大和市、座間市、綾瀬市、寒川町、二宮町、中井町、開成町。
県全体の消費額は4,888億8,810万円ですが、入込客数で県内1位と4位の2市が抜けています。この数字は県内観光の全体像ではありません。
出典:神奈川県「令和6年 入込観光客調査」第2表をもとに作成
解説:数はある、泊まらない、測られていない
年1,704万人は県内4位
2024年、川崎市を訪れた観光客は1,704万3,000人(延べ)でした。神奈川県内33市町村のうち4位です。
1位は横浜市の6,182万6,000人。2位藤沢市2,040万1,000人、3位箱根町2,031万人、そして川崎市。5位が鎌倉市1,594万3,000人です。
藤沢(江の島)、箱根、鎌倉と肩を並べる数字です。県全体2億805万5,000人の8.2%を占めます。
「川崎に観光地はない」という印象を持つ方も多いかもしれませんが、統計上は県内有数の集客があります。
ただし94.1%が日帰り
中身を見ると、性格の違いがはっきりします。
川崎市の内訳は宿泊101万1,000人、日帰り1,603万1,000人。日帰り率94.1%です。
宿泊率で見ると5.9%で10位。厚木市21.4%、箱根町19.6%、横浜市15.9%、湯河原町15.7%と比べると、明らかに低い。
「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおり、川崎市は東京と横浜に挟まれた位置にあります。泊まるなら東京か横浜——そういう選択になりやすい立地です。
ただし宿泊客数そのものは101万1,000人で県内3位。横浜市980万4,000人、箱根町398万4,000人に次ぎます。率は低くても、人数では上位ということになります。
宿泊が5年で65.5%増えた
5年の推移を見ると、宿泊の伸びが目立ちます。
入込観光客数は2020年1,433万人、2021年1,199万5,000人で底を打ち、2022年1,508万2,000人、2023年1,572万6,000人、2024年1,704万3,000人。2021年からの3年で42.1%増です。
そのうち宿泊客数は61万1,000人(2020年)から101万1,000人(2024年)へ、65.5%増。日帰り客の伸び(16.8%)を大きく上回っています。
宿泊率も4.3%から5.9%へ、1.6ポイント上がりました。「泊まる街」への変化が、わずかですが始まっています。
「駅別 乗車人員ランキング」のページで見たとおり、市内50駅の乗車人員も2020年から2024年で20.5%回復しました。人の動きが戻ったことが、複数の統計に共通して出ています。
消費額が測られていない
このページでもっとも重要な注意点は、川崎市の観光客消費額が公表されていないことです。
県の第2表では、川崎市の「観光客消費額計」「宿泊費」「飲食費」「その他消費額」がすべて「−」になっています。
同じ扱いなのは横浜市、大和市、座間市、綾瀬市、寒川町、二宮町、中井町、開成町と川崎市の9市町村。入込客数で県内1位の横浜市と4位の川崎市が、そろって抜けています。
県全体の観光客消費額は4,888億8,810万円と発表されていますが、この2市を含まない数字だということになります。
消費額が算出されている市町村では、藤沢市1,138億円、鎌倉市976億円、箱根町917億円と続きます。川崎市がここに並んだらどうなるかは、わかりません。
「小売業の年間商品販売額」のページで見たとおり、川崎市民1人あたりの小売販売額は政令指定都市20市で最下位でした。「飲食店の数と密度」で見たとおり、飲食店の密度も20市で17位。観光客が来ても、市内で使われている金額は多くない可能性があります。ただしこれは推測で、データはありません。
中小企業への示唆
1. 年1,704万人が来ている——県内4位。「川崎には観光客が来ない」という前提は、統計上は誤りです。ただし何を目当てに来ているかは、この統計ではわかりません。
2. 商売の設計は「日帰り」前提で——94.1%が日帰り。宿泊を前提とした商品(夜のコース、翌朝の需要)は成立しにくい。滞在時間が短い客に、短時間で売る設計が要ります。
3. 宿泊は伸びている——5年で65.5%増、101万1,000人。県内3位の規模です。ビジネス需要が中心と考えられますが、宿泊客向けの商売には追い風です。
4. 「川崎大師の1月」は数字で確認できる——「駅別 乗車人員ランキング」のページで見たとおり、川崎大師駅の1月の乗車人員は年平均の182.3%。初詣の集客は、駅の統計から裏づけが取れます。
5. 消費額のデータがないことを前提に——補助金申請や事業計画で「観光消費額」を根拠にしたい場合、川崎市の数字は存在しません。入込客数か、駅の乗車人員で代替する必要があります。
データの注意点
川崎市の観光客消費額は公表されていません。県の第2表で「−」となっています。理由は調査の実施状況によるものと考えられますが、県の資料に説明はありません。
「入込観光客数」は延べ人数です。同じ人が年に3回訪れれば3人と数えます。実人数ではありません。
調査は観光地点・行事等ごとの入込客数を積み上げる方式です。どの施設を「観光地点」とするかは市町村の申告によるため、市町村間で基準が完全には揃っていない可能性があります。
収録されているのは令和2〜6年(2020〜2024年)の5年分だけです。神奈川県は平成19年(2007年)以降の調査結果を公表していますので、それ以前にさかのぼる場合は各年の報告書をご確認ください。
数値は千人単位で四捨五入されているため、宿泊客数と日帰り客数の合計が延観光客数と一致しない場合があります(県の注記による)。
2020年・2021年はコロナ禍の影響を強く受けた年です。この2年を起点にした比較には注意が必要です。