火災・救急出動

救急は5年で3割増えました。人は増えていません。

出典は川崎市統計書です:火災・救急のデータは e-Stat(政府統計の総合窓口)にはありません。川崎市統計書 令和7年(2025年)版の第21章に掲載された、川崎市消防局の数値をもとにしています。収録されているのは令和2〜6年(2020〜2024年)の5年分です。

このページの要点

① 救急出場は5年で33.1%増えました。2020年の6万6,951件から2024年の8万9,114件へ。1日あたり244件、およそ6分に1回の出場です。

② その間、消防職員は1,445人から1,448人。3人しか増えていません。出張所も28か所のまま、車両も204台から206台です。

③ 火災は398件で、5年で22.1%増。ただし放火は67件から49件へ26.9%減りました。増えているのは失火です(258件→342件)。

救急が急に増えている

救急出場件数と搬送人員の推移(2020年〜2024年)

棒が出場件数、折れ線が搬送人員

読み方:2020年6万6,951件、2021年6万9,883件、そして2022年に8万4,776件へ一気に跳ねます。前年比21.3%増。2023年8万7,591件、2024年8万9,114件。
5年で2万2,163件、33.1%の増加です。
2022年の急増は、新型コロナの第7波・第8波と重なります。ただしその後も減っていません。一時的な波ではなく、水準そのものが上がったということです。
搬送人員も5万6,235人から7万2,467人へ28.9%増。出場のうち実際に搬送するのは81.3%で、この比率はほぼ変わっていません。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-13(原資料:川崎市消防局)をもとに作成

救急は増え、消防力は横ばい

2020年(消防力は2021年度)を100としたときの指数

読み方:救急出場(赤)が133.1まで伸びるのに対し、消防職員数(青)は100.2、出張所数(灰)は100.0のままです。
職員は1,445人から1,448人へ3人増。出張所は28か所で変わらず。車両は204台から206台へ2台増。
需要が3割増えて、体制はほぼ据え置き。1人あたりの負担が確実に増えています。
「市職員数の推移」のページで見たとおり、川崎市の一般行政部門職員は2021年から増加に転じました。消防はその流れに入っていません。(消防職員は一般行政部門に含まれないため、別の統計です)

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-13・XⅩⅠ-14をもとに作成

区別の救急出場(2024年)

棒が出場件数、菱形が人口1万人あたりの件数

読み方:件数がもっとも多いのは川崎区の1万8,579件。人口1万人あたりでも794.4件でトップです。
もっとも少ないのは中原区の493.1件(人口1万人あたり)。川崎区とは1.6倍の差があります。
「高齢化率・年少人口比率」のページで見たとおり、川崎区は高齢化率が市平均を上回る区。いっぽう中原区は市内でもっとも若い区です。救急需要は年齢構成をそのまま映します。
件数では中原区1万3,004件が2位ですが、人口が26万3,731人と市内最大のため、1万人あたりでは最下位になります。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-13、住民基本台帳をもとに作成

火災は増えたが、放火は減った

火災件数と原因(2020年〜2024年)

棒が原因別の件数、折れ線が火災の総数

読み方:火災の総数は326件から398件へ、5年で22.1%増えました。
中身を見ると方向が分かれます。失火は258件から342件へ32.6%増。いっぽう放火は67件から49件へ26.9%減りました。
「刑法犯認知件数の推移」のページで見たとおり、刑法犯全体は2021年を底に増加に転じています。そのなかで放火だけは減り続けているということになります。
建物火災は224件から282件へ25.9%増。火災全体の70.9%を占めます。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-9をもとに作成

消防署別の火災件数(2024年)

棒が件数、菱形が管轄区の人口1万人あたりの件数/川崎区は臨港署と川崎署の2つ

読み方:件数がもっとも多いのは幸消防署の69件。次いで臨港57件、高津56件。
川崎区は臨港消防署(57件)と川崎消防署(46件)の2つに分かれており、合わせると103件。市全体の25.9%を占めます。
人口1万人あたりでは川崎区4.40件がトップ、幸区3.95件が続きます。もっとも低いのは多摩区1.69件、中原区1.78件。南部と北部で2.6倍の差があります。
8署の合計は398件で、市の値と一致します。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-9をもとに作成

何時に火が出るか(2024年)

出火時間帯別の火災件数

読み方:もっとも多いのは10時台の29件。次いで13時台26件、9時台22件。日中に集中しています。
17時台と22時台が21件と、夕方と夜にも小さな山があります。
もっとも少ないのは3時台と4時台。深夜から明け方は火災が少ない時間帯です。
ただし被害は夜のほうが大きくなります。統計書によれば、損害額がもっとも大きいのは21時台と20時台。気づくのが遅れるためです。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-10をもとに作成

解説:6分に1回

1日244件

2024年、川崎市の救急車は8万9,114件出場しました。1日あたり244件。およそ6分に1回のペースです。

2020年は6万6,951件、1日183件でした。5年で2万2,163件、33.1%の増加です。

とくに大きく動いたのが2022年です。前年の6万9,883件から8万4,776件へ、1年で21.3%増。新型コロナの第7波・第8波と重なる時期でした。

問題はその後です。2023年8万7,591件、2024年8万9,114件と、減らずにさらに増えています。一時的な波ではなく、水準そのものが上がったということになります。

搬送人員も5万6,235人から7万2,467人へ28.9%増。出場のうち実際に搬送に至るのは81.3%で、この比率は5年間ほとんど変わっていません。

体制は3人しか増えていない

需要が3割増えた5年間、消防の体制はどうだったか。

消防職員は1,445人(2021年度)から1,448人(2025年度)。3人増です。出張所は28か所で変わらず。消防車両等は204台から206台へ2台増。

指数にすると、救急出場133.1に対して職員数100.2、出張所100.0。需要と体制の差がそのまま開いています。

「市職員数の推移」のページで見たとおり、川崎市の一般行政部門職員は2000年から2020年で25.8%減ったあと、2021年から増加に転じました。ただし消防職員はこの統計には含まれません(一般行政部門の外です)。行政全体が増員に転じるなかで、消防は横ばいという状態にあります。

1人あたりで見ると、2020年は職員1人あたり年46.3件の出場でしたが、2024年は61.5件。1.3倍の負担増です。

川崎区と中原区で1.6倍

区別に見ると、救急需要には明確な差があります。

人口1万人あたりの出場件数は、川崎区794.4件がもっとも多く、幸区661.3件、高津区547.0件、多摩区544.4件、麻生区536.4件、宮前区498.8件、そして中原区493.1件。

川崎区と中原区で1.6倍の差です。

理由は年齢構成にあります。「高齢化率・年少人口比率」のページで見たとおり、中原区は市内でもっとも若い区。いっぽう川崎区は高齢化率が市平均を上回ります。救急需要は高齢者の割合をそのまま映します。

件数だけを見ると中原区は1万3,004件で市内2位ですが、人口が26万3,731人と市内最大のため、1万人あたりでは最下位になります。件数と密度で順位が逆になる典型例です。

なお7区の合計は8万8,960件で、市の8万9,114件とは154件の差があります。東名高速道路上での出場(138件)とその他(16件)が区に含まれないためです。

火災は増え、放火は減った

火災は2020年の326件から2024年の398件へ、22.1%増えました。

ただし原因別に見ると、方向が分かれます。

失火は258件から342件へ32.6%増。いっぽう放火は67件から49件へ26.9%減りました。

「刑法犯認知件数の推移」のページで見たとおり、川崎市の刑法犯は2021年を底に2024年まで42.3%増えています。そのなかで放火だけは減り続けているということになります。

建物火災は224件から282件へ25.9%増え、火災全体の70.9%を占めます。

地域差もあります。人口1万人あたりの火災件数は川崎区4.40件、幸区3.95件に対し、多摩区1.69件、中原区1.78件。南部と北部で2.6倍の差です。「住宅の築年数と旧耐震」のページで見たとおり、建物の年齢や密度が影響していると考えられます。

火が出るのは昼、危ないのは夜

出火時間帯を見ると、もっとも多いのは10時台の29件。次いで13時台26件、9時台22件。日中に集中しています。

もっとも少ないのは3時台と4時台。深夜から明け方は火災件数が少ない時間帯です。

ただし損害額は逆です。統計書によれば、2024年に損害額がもっとも大きかったのは21時台(7,442万円)と20時台(5,701万円)。件数は多くないのに、被害額が突出しています。

夜の火災は、気づくのが遅れる。これが数字に出ています。

中小企業への示唆

1. 救急車は「6分に1回」動いている——1日244件。すぐ来る前提で事業を組むのは危険です。従業員の安全計画、AED、応急手当の訓練。自前で初動できる体制の価値が上がっています。

2. 需要増に体制が追いついていない——救急+33.1%、職員+0.2%。この差は今後さらに開く可能性があります。高齢化が進めば需要はさらに増えます。

3. 川崎区・幸区は火災リスクが高い——人口1万人あたり4.40件・3.95件で、多摩区の2.6倍。この2区で店舗・工場・倉庫を持つなら、防火設備と保険の設計を上乗せするのが合理的です。

4. 火災の7割は建物火災——282件。しかも失火が32.6%増えています。厨房、電気設備、たばこ。基本的な管理の徹底が、いちばん効く対策です。

5. 夜間の初期対応が被害を分ける——件数は昼が多いのに、損害額は夜が大きい。無人になる時間帯の火災報知・遠隔監視への投資は、統計的に裏づけがあります。

データの注意点

収録されているのは令和2〜6年(2020〜2024年)の5年分だけです。それ以前にさかのぼるには、川崎市統計書の過去の版を1年ずつ確認する必要があります。

消防力(職員数・出張所数・車両数)は年度の数値で、令和3〜7年度(2021〜2025年度)です。火災・救急は暦年です。指数のグラフでは、それぞれの初年を100としています。

消防職員は「一般行政部門職員」に含まれません。「市職員数の推移」のページで扱っている職員数とは別の統計です。

火災の消防署別データは管轄区域によるもので、区の境界と完全には一致しません。とくに川崎区は臨港消防署と川崎消防署の2つに分かれます。人口1万人あたりの計算では、この2署を合算して川崎区の人口で割っています。

救急の区別データには、東名高速道路上での出場(2024年で138件)とその他(16件)が含まれません。そのため7区の合計は市の値より154件少なくなります。

人口は住民基本台帳(2024年1月1日現在、外国人を含む総数)を使っています。

出火時間帯のグラフは合計377件で、火災の総数398件と21件の差があります。出火時刻が不明の火災が21件あるためです。