刑法犯認知件数の推移

2002年をピークに、6年で4割減りました。

2つの出典をつないでいます:1980年〜2008年は e-Stat(政府統計の総合窓口)の市区町村別データ、2020年〜2024年は川崎市統計書 令和7年版によるものです。2009年〜2019年の11年間は、市区町村別の数字が公表されておらず空白になります。また新しいほうは区別ではなく警察署別です。

このページの要点

① ピークは2002年の3万102件。1980年の1万6,327件から22年で1.8倍に増えたあと、2008年には1万7,622件へ41.5%減少しました。ほぼ1980年の水準に戻ったことになります。

② 減少はその後も続き、2021年に5,726件まで下がりました。2008年の3分の1、2002年のピークからは81%減です。

③ ところが、そこから増えています。2021年の5,726件から2024年の8,146件へ、3年で42.3%増。20年続いた減少が、はっきり反転しました。

29年でどう動いたか

刑法犯認知件数の推移(1980年〜2008年・川崎市)

棒が件数、折れ線が人口1万人あたりの件数

読み方:1980年の1万6,327件から増え続け、2002年の3万102件でピーク。そこから急激に減り、2008年には1万7,622件になりました。6年で1万2,480件、41.5%の減少です。
折れ線(人口1万人あたり)はさらに大きく下がっています。2002年の239.2件から2008年の129.7件へ45.8%減。この間に人口が増えたぶん、1人あたりの体感はもっと下がったということです。
2000年代前半は全国的にも刑法犯がピークを迎えた時期です。その後の減少は全国共通の傾向でした。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:警察庁「犯罪統計書」)をもとに作成

その後、どうなったか

刑法犯認知件数の推移(1980年〜2024年)

1980〜2008年は e-Stat、2020〜2024年は川崎市統計書/2009〜2019年は市区町村別の公表がなく空白

読み方:右端の5本が、今回つないだ最近の数字です。
2020年6,307件、2021年5,726件、2022年5,918件、2023年7,653件、2024年8,146件。
2021年が底でした。2002年のピーク(3万102件)から81%減、2008年(1万7,622件)から67%減。ここまでは「減り続けた」という話で一貫します。
問題はその後です。2021年から2024年で42.3%増えました。3年で2,420件の増加。2023年に7,653件と急に増え、2024年もさらに上回っています。
ただし2024年の8,146件は、2008年の半分以下です。長い目で見れば低い水準にあることは変わりません。

出典:1980〜2008年は総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」、2020〜2024年は川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-4(原資料:神奈川県警察本部)をもとに作成

警察署別の認知件数(2024年)

区別ではなく警察署の管轄別。川崎区は川崎署と川崎臨港署に分かれます

読み方:もっとも多いのは川崎警察署の2,040件。川崎臨港警察署の601件を足すと2,641件で、川崎区全体では市の32.4%を占めます。
次いで中原警察署1,224件、幸警察署・高津警察署が1,051件で並びます。もっとも少ないのは麻生警察署の563件。
2008年の区別データ(川崎区5,114件、宮前区1,386件)と比べると、どの地域も大きく減っています。ただし警察署の管轄は区の境界と完全には一致しないため、直接の比較はできません。
8署の合計は8,146件で、市の値と一致します。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-4をもとに作成

7区でどう違うか

区別の刑法犯認知件数(2008年)

棒が件数、菱形が人口1万人あたりの件数

読み方:川崎区が5,114件、人口1万人あたり246.9件で突出しています。市全体(129.7件)の1.9倍、もっとも少ない宮前区(65.3件)の3.8倍です。
川崎区に次ぐのは幸区137.0件、中原区134.3件。北部(多摩区108.7件、麻生区88.4件、宮前区65.3件)はいずれも市平均を下回ります。
南北で明確に分かれる——「昼間人口と夜間人口」で見た川崎区の昼夜間人口比率116.2%(7区で唯一100超)とも重なります。人が集まる場所に、件数も集まるという関係です。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:警察庁「犯罪統計書」)をもとに作成

区別の推移(人口1万人あたり)

線をクリックすると表示・非表示を切り替えられます

読み方:すべての区が同じかたち——2002年前後にピークを打ち、そこから下がります。ただし川崎区だけ振れ幅が大きい。ピーク時には400件を超えていました。
2002年から2008年にかけて、川崎区は他区より大きく減っています。件数が多かった区ほど、減り方も大きかったということです。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

政令指定都市のなかで

人口1万人あたり刑法犯認知件数(2008年)

2008年時点の政令指定都市/川崎市を濃い色で表示

読み方:川崎市は129.7件で17市中13位。多いほうから数えて13番目、つまり下位グループです。
もっとも多いのは大阪市の327.0件で、川崎市の2.5倍。もっとも少ないのは静岡市の117.9件でした。
2008年時点の政令指定都市は17市です(相模原市は2010年、熊本市は2012年に移行したため含まれません)。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

解説:2002年という山

22年かけて増え、6年で戻った

川崎市の刑法犯認知件数は、1980年の1万6,327件から2002年の3万102件まで、22年かけて1.8倍に増えました。

ところが、そこからの動きは急でした。2003年2万9,025件、2004年2万7,410件、2005年2万2,109件、2006年1万8,992件、2007年1万7,839件、2008年1万7,622件。6年で1万2,480件、41.5%の減少です。

2008年の1万7,622件は、1980年の1万6,327件に近い水準。22年かけて積み上がったものが、6年でほぼ元に戻ったことになります。

これは川崎市だけの現象ではありません。全国の刑法犯認知件数も2002年に285万件でピークを打ち、その後一貫して減少しています。川崎市の動きは全国の動きと歩調を合わせています。

人口が増えたぶん、体感はもっと下がった

人口1万人あたりで見ると、減り方はさらに大きくなります。2002年の239.2件から2008年の129.7件へ、45.8%の減少です。

件数の減少率が41.5%なのに、1万人あたりでは45.8%。差の4.3ポイントは人口増加分です。「人口の推移」のページで見たとおり、この6年間で川崎市の人口はおよそ10万人増えました。

同じ件数でも、人が増えれば1人あたりの遭遇確率は下がります。件数の減少と人口の増加が、同じ方向に効いた——それが2000年代後半の川崎市でした。

川崎区が突出している

2008年の区別データを見ると、市内の差は非常に大きくなっています。

人口1万人あたりの認知件数は、川崎区246.9件がもっとも多く、幸区137.0件、中原区134.3件、高津区120.8件、多摩区108.7件、麻生区88.4件、宮前区65.3件と続きます。

川崎区と宮前区の差は3.8倍。同じ市内とは思えない開きです。

川崎区の件数が多い理由のひとつは昼間人口です。「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおり、川崎区の昼夜間人口比率は116.2%——7区で唯一100を超え、外から3万7,677人が入ってきます。繁華街と駅周辺に人が集まれば、そこで起きる件数も増えます。

この指標の分母は「住んでいる人」なので、外から来る人が多い区ほど数字が高く出ます。川崎区の246.9件をそのまま「住民が3.8倍危険」と読むのは正しくありません。

減り方も、多かった区が大きい

区別の推移を見ると、すべての区が同じかたちを描きます。2002年前後にピークを打ち、そこから下がる。

ただし振れ幅は違います。川崎区はピーク時に人口1万人あたり400件を超えていました。そこから246.9件まで下がっています。件数が多かった区ほど、減り方も大きかった。

逆に宮前区・麻生区はもともと低い水準で、変動も小さい。北部の住宅地は、この29年を通じて一貫して静かでした。

2021年に底を打った

e-Stat のデータが途切れた2008年以降、川崎市の刑法犯はどうなったのでしょうか。川崎市統計書に載る最近5年を足すと、答えが見えます。

2020年6,307件、2021年5,726件、2022年5,918件、2023年7,653件、2024年8,146件。

2021年が底でした。2002年のピーク3万102件からは81%減、2008年の1万7,622件からも67%減。19年かけて5分の1以下になったことになります。

2020年と2021年が低いのは、コロナ禍で人の外出が減ったことも影響していると考えられます。

そして、増えている

ところが2022年から流れが変わります。5,918件、7,653件、8,146件。2021年から3年で2,420件、42.3%の増加です。

とくに2022年から2023年にかけて1,735件(29.3%)増えました。これは全国的な傾向とも一致しており、コロナ禍で抑えられていた人の動きが戻ったこと、そしていわゆる「闇バイト」型の犯罪が問題になった時期とも重なります。

20年以上続いた減少が、はっきり反転しました。このページの前半で見た「2002年をピークに減り続けた」という話は、2021年までの話だったということになります。

ただし水準そのものは低いままです。2024年の8,146件は、2008年の半分以下。1980年の1万6,327件と比べても半分です。「治安が悪化した」と言うにはまだ早く、「底を打って戻りつつある」と読むのが正確でしょう。

中小企業への示唆

1. 「治安が悪い」という川崎のイメージは、データの上では2000年代前半のもの——2008年時点で人口1万人あたり129.7件は政令指定都市17市で13位、大阪市の4割です。2024年は8,146件で、2008年の半分以下。ただし2021年を底に増加へ転じている点は、防犯投資の判断材料として押さえておくべきです。

2. ただし区による差は本物——川崎区246.9件と宮前区65.3件で3.8倍。店舗の防犯対策、営業時間、現金の取り扱い——エリアによって設計を変えるのは合理的です。

3. 防犯関連の需要は南部に厚い——防犯カメラ、警備、鍵、保険。件数の絶対数で見ると川崎区5,114件が突出しています。

4. 最新データは県警で確認を——このページのデータは2008年までです。実務判断には神奈川県警察が公表する最新の統計を使ってください。

データの注意点

このページは2つの出典をつないでいます。1980年〜2008年は e-Stat(社会・人口統計体系、原典は警察庁「犯罪統計書」)の区別データ、2020年〜2024年は川崎市統計書(原資料は神奈川県警察本部)の警察署別データです。

2009年〜2019年の11年間は空白です。この期間の市区町村別の数値は、どちらの資料にも収録されていません。グラフでも線をつながず空けています。

区と警察署の管轄は一致しません。川崎区には川崎警察署と川崎臨港警察署の2つがあります。他の区も境界が完全には一致しないため、2008年以前の区別データと2020年以降の警察署別データを、地域ごとに直接比較することはできません。市全体の合計は比較できます。

「認知件数」は警察が事件として把握した件数です。届け出のなかった事案は含まれません。したがって実際に起きた件数ではなく、警察が把握した件数である点に注意が必要です。

人口1万人あたりの計算には、住民基本台帳人口(日本人)または国勢調査人口を使っています。どちらもない年は前後の年から直線でおぎなっているため、1999年以前の「1万人あたり」は目安としてご覧ください。

宮前区・麻生区は1982年の区制施行後のデータのみです(1980年・1981年は高津区・多摩区に含まれます)。

この指標の分母は「そこに住んでいる人」です。昼間人口が多い区(川崎区)は数字が高く出やすく、住民の実際の遭遇確率をそのまま表すものではありません。