交通事故の発生件数

20年で2.6倍に増え、9年で4割減りました。

2つの出典をつないでいます:1980年〜2009年は e-Stat(政府統計の総合窓口)、2020年〜2024年は川崎市統計書 令和7年版によるものです。2010年〜2019年の10年間は、市区町村別の数字が公表されておらず空白になります。新しいほうは区別で揃っており、死者数・負傷者数も分かります。

このページの要点

① ピークは2000年の8,425件。1980年の3,185件から20年で2.6倍に増えたあと、2009年には5,047件へ40.1%減少しました。

② その後さらに減り、2024年は2,894件。ピークからは65.6%減、2009年からも42.7%減です。減少は止まっていません。

③ 死者数は2024年に12人。1980年代から2000年代の数十人規模から大きく下がり、記録のある期間で最少です。

30年でどう動いたか

交通事故発生件数の推移(1980年〜2009年・川崎市)

棒が件数、折れ線が人口1万人あたりの件数

読み方:1980年の3,185件から一貫して増え続け、2000年の8,425件でピーク。20年で2.6倍になりました。
そこから減少に転じ、2009年には5,047件。9年で3,378件、40.1%の減少です。
折れ線(人口1万人あたり)は2000年の68.4件から2009年の36.7件へ46.3%減。件数の減少(40.1%)より大きいのは、この間に人口が増えたためです。
1980年代後半から1990年代前半の急増は、モータリゼーションの進行と重なります。2000年以降の減少は、車両の安全性能向上、シートベルト着用の徹底、飲酒運転の厳罰化(2002年・2007年の道路交通法改正)が効いたと考えられます。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:警察庁「交通事故統計」)をもとに作成

その後、どうなったか

交通事故発生件数の推移(1980年〜2024年)

1980〜2009年は e-Stat、2020〜2024年は川崎市統計書/2010〜2019年は市区町村別の公表がなく空白

読み方:右端の5本が、今回つないだ最近の数字です。
2020年2,942件、2021年2,727件、2022年2,655件、2023年2,850件、2024年2,894件。
2000年のピーク8,425件から65.6%減。2009年の5,047件からも42.7%減っています。減少は2010年代を通じて続いたことがわかります。
ただし直近は2022年の2,655件を底に、2023年・2024年とわずかに増えています。下げ止まりつつあるという見方もできます。

出典:1980〜2009年は総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」、2020〜2024年は川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-1(原資料:神奈川県警察本部)をもとに作成

死者数と負傷者数(2020年〜2024年)

棒が負傷者数、折れ線が死者数/e-Statのデータには死者数がありません

読み方:2024年の死者は12人。2020年22人、2021年17人、2022年18人、2023年22人からの急減です。
負傷者数は3,331人(2020年)から3,247人(2024年)へ、ほぼ横ばい。事故の件数も負傷者も大きく変わらないのに、死者だけが半減しました。
車両の安全性能の向上と、救急医療の進歩によるものと考えられます。「通勤の交通手段とクルマ離れ」のページで見たとおり、川崎市の自家用車通勤は8.2%で政令市最下位。もともと車の走行量が少ない街で、さらに死亡事故が減っています。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-1をもとに作成

区別の発生件数(2024年)

棒が件数、菱形が負傷者数

読み方:もっとも多いのは川崎区の637件、次いで高津区476件、中原区412件。もっとも少ないのは幸区の274件、多摩区と麻生区が347件で並びます。
2009年と比べるとどの区も大きく減りましたが、減り方には幅があります。もっとも減ったのは幸区の−55.7%(619件→274件)、次いで宮前区−48.8%、多摩区−46.3%、高津区−45.6%、川崎区−40.2%。
減り方がもっとも小さいのは麻生区の−25.4%(465件→347件)と中原区の−30.5%(593件→412件)です。この2区は「将来推計人口」のページで見たとおり、いずれも人口が増え続けている区。人が増えたぶん、事故の減り方が鈍ったと読めます。
7区の合計は2,894件で、市の値と一致します。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第21章 XⅩⅠ-1をもとに作成

7区でどう違うか

区別の交通事故発生件数(2009年)

棒が件数、菱形が人口1万人あたりの件数

読み方:件数がもっとも多いのは川崎区の1,066件、人口1万人あたりでも51.1件でトップです。次いで高津区41.8件、幸区41.0件。
もっとも少ないのは中原区の26.5件。川崎区との差は1.9倍です。
興味深いのは、刑法犯では最少だった宮前区が交通事故では36.4件と中位にあること。犯罪と交通事故は、まったく違う分布をします。宮前区・麻生区は坂の多い住宅地で、生活道路での事故が一定数起きます。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:警察庁「交通事故統計」)をもとに作成

区別の推移(人口1万人あたり)

線をクリックすると表示・非表示を切り替えられます

読み方:すべての区が2000年前後にピークを打ち、そこから下がるという同じかたちです。
川崎区は一貫して最上位。1990年代後半には人口1万人あたり80件を超えていました。
減り方は区によってほぼ同じ——刑法犯のように「多い区ほど大きく減る」という関係は見られません。全国共通の要因(車両の安全性能、法規制)が一様に効いたためと考えられます。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

政令指定都市のなかで

人口1万人あたり交通事故発生件数(2009年)

2009年時点の政令指定都市/川崎市を濃い色で表示

読み方:川崎市は36.7件で18市中18位、つまりもっとも少ない。もっとも多い岡山市(113.5件)の3分の1です。
この差は「川崎の運転者が慎重だから」ではありません。そもそも車に乗る機会が少ないからです。「通勤・通学の流動」のページで見たとおり、川崎市民の通勤は鉄道が中心。自家用車で通勤する人は限られます。
逆に上位に並ぶのは、車社会の地方都市。交通事故の発生率は、その街の交通手段の構成をそのまま映します。
2009年時点の政令指定都市は18市です(熊本市は2012年に移行したため含まれません)。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

解説:乗らない街の安全

20年で2.6倍、9年で4割減

川崎市の交通事故発生件数は、1980年の3,185件から2000年の8,425件まで、20年かけて2.6倍に増えました。

とくに急だったのは1985年から1993年です。4,141件から7,265件へ、8年で75%増。モータリゼーションの進行がそのまま数字に出ています。

2000年をピークに、そこからは一貫した減少です。2005年7,275件、2007年5,913件、2009年5,047件。9年で3,378件、40.1%の減少でした。

この減少は全国共通の傾向です。要因として挙げられるのは、車両の安全性能(ABS、エアバッグ、衝突被害軽減ブレーキ)の普及、シートベルト着用の徹底、そして2002年と2007年の道路交通法改正による飲酒運転の厳罰化です。

政令市でもっとも少ない

2009年の人口1万人あたり交通事故発生件数は36.7件。当時の政令指定都市18市でもっとも少ない数字でした。

もっとも多いのは岡山市の113.5件。川崎市の3.1倍です。

この差の理由は明快です。川崎では、そもそも車に乗る機会が少ない。

「通勤・通学の流動」のページで見たとおり、川崎市民の通勤・通学は鉄道が中心です。市域が細長く、JR南武線・東海道線、東急東横線・田園都市線、京急線、小田急線が縦横に走っています。車がなくても生活できる街だということです。

逆に上位に並ぶのは、公共交通が薄く自家用車が生活の前提になっている地方の政令市。交通事故の発生率は、その街の交通手段の構成をそのまま映す指標だといえます。

「川崎は交通事故が少ない安全な街だ」と言うことはできますが、「川崎の運転者が慎重だ」とは言えません。分母が違うのです。

市内の差は、刑法犯より小さい

区別に見ると、人口1万人あたりの件数は川崎区51.1件がもっとも多く、高津区41.8件、幸区41.0件、宮前区36.4件、多摩区32.2件、麻生区28.2件、中原区26.5件と続きます。

川崎区と中原区の差は1.9倍。「刑法犯認知件数の推移」のページで見た3.8倍と比べると、市内の差はかなり小さいといえます。

順位の並びも刑法犯とは違います。刑法犯で最少だった宮前区は、交通事故では36.4件で4位(中位)。逆に刑法犯で3位だった中原区は、交通事故では最少です。

犯罪と交通事故は、まったく違う分布をします。犯罪は人が集まる場所に集中しますが、交通事故は道路の構造と交通量に左右されます。宮前区・麻生区は坂が多く見通しの悪い生活道路が多い区で、そこでの事故が一定数起きます。中原区は平坦で、鉄道での移動が多い区です。

減り方は、どの区も同じ

区別の推移を見ると、すべての区が2000年前後にピークを打ち、そこから同じような角度で下がっています。

刑法犯では「件数が多かった区ほど大きく減る」という関係が見られましたが、交通事故ではその傾向がありません。どの区もほぼ同じ割合で減っています。

これは、減少の要因が地域固有のものではなく、全国共通のものだったことを示しています。車両の安全性能も法規制も、区ごとに違うわけではないからです。

その後も減り続けた

e-Stat のデータが途切れた2009年以降、交通事故はどうなったのでしょうか。川崎市統計書に載る最近5年を足すと、はっきりします。

2020年2,942件、2021年2,727件、2022年2,655件、2023年2,850件、2024年2,894件。

2000年のピーク8,425件から65.6%減。2009年の5,047件からも42.7%減です。2010年代を通じて減り続けたことになります。

刑法犯が2021年を底に反転したのとは対照的に、交通事故は減少がほぼ続いています。2022年の2,655件を底に2023年・2024年とわずかに増えていますが、増加幅は9%程度で、刑法犯の42.3%とは比べものになりません。

死者だけが半減した

より劇的なのは死者数です。

2020年22人、2021年17人、2022年18人、2023年22人ときて、2024年は12人。前年から10人減っています。

負傷者数は3,331人(2020年)から3,247人(2024年)へほぼ横ばい。件数も2,942件から2,894件でほとんど変わりません。事故そのものの数は変わらないのに、死者だけが半減しました。

車両の衝突安全性能、衝突被害軽減ブレーキの普及、そして救急医療の進歩。「事故は起きるが、死ななくなった」というのが、この10年の変化です。

ただし12人という数字が1年だけのものである可能性もあります。2020年から2023年は17〜22人で推移していました。2025年以降の数字を見るまでは、傾向として断定すべきではありません。

中小企業への示唆

1. 社用車のリスクは全国平均より低い——政令市18市で最少。ただしこれは「市内を走る距離が短い」ことの裏返しでもあります。市外へ出る配送・営業では、この優位は消えます。

2. 配送・営業の効率は鉄道圏で考える——市民が車に乗らないということは、荷物を受け取る側も車を持っていないということです。宅配、買い物代行、出張サービス——鉄道沿線に密度の高い川崎では、車に頼らない配送設計が成り立ちます。

3. 川崎区は例外——51.1件で市内最多。臨海部の物流動線と幹線道路が集中するエリアです。この区で車両を使う事業は、保険と安全教育のコストを高めに見積もるのが妥当です。

4. 北部は生活道路の事故——宮前区・麻生区は坂と狭い道が多い区です。訪問介護、宅配、リフォーム——住宅地に入る事業では、車両サイズと運転者の習熟が実際のリスク差になります。

データの注意点

このページは2つの出典をつないでいます。1980年〜2009年は e-Stat(社会・人口統計体系、原典は警察庁「交通事故統計」)、2020年〜2024年は川崎市統計書(原資料は神奈川県警察本部)です。どちらも区別で揃っています。

2010年〜2019年の10年間は空白です。この期間の市区町村別の数値は、どちらの資料にも収録されていません。グラフでも線をつながず空けています。

死者数・負傷者数は2020年以降のみです。e-Stat のデータには発生件数しかありません。

「発生件数」は人身事故の件数です。物損のみの事故は含みません。死者数・負傷者数は、この統計では市区町村別に取れませんでした。

件数は「その区で起きた事故」であり、「その区の住民が起こした事故」ではありません。市外から来た車による事故も含まれます。分母(住民)と分子(事故)の対象がずれている点にご注意ください。

人口1万人あたりの計算には、住民基本台帳人口(日本人)または国勢調査人口を使っています。どちらもない年は前後の年から直線でおぎなっているため、1999年以前の「1万人あたり」は目安としてご覧ください。

宮前区・麻生区は1983年以降のデータのみです(1980年〜1982年は高津区・多摩区に含まれます)。