このページの要点
① 2021年、はじめて自然減に転じた。出生11,942人に対し死亡12,275人。333人の自然減です。以降2022年−2,338人、2023年−2,555人と差は開いています。
② 出生数はピークから25.2%減った。2015年の14,703人が最多で、2023年は10,995人。8年で3,708人減りました。
③ それでも人口は増えている。「人口の推移」のページで見たとおり、2020→2025年で+1.5%。自然減を転入超過が上回っている状態です。この構図がいつまで続くかが、川崎の人口の分かれ目になります。
出生と死亡の交差
出生数と死亡数の推移
線が交差した2021年が、自然増から自然減へ転じた年です
2021年に2本の線が交差しました。これが川崎市の人口史における転換点です。このデータが始まる1995年から2020年まで、川崎では一貫して生まれる人のほうが多い状態が続いていました。その関係が2021年に逆転しています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(A 人口・世帯)」(人口動態統計)をもとに作成
自然増減数の推移
出生数 − 死亡数/プラスが自然増、マイナスが自然減
注目すべきは減り方の速さです。2015年から2021年までのわずか6年で、4,294人のプラスから333人のマイナスへ——4,627人分も動いています。この曲線は、当面プラスに戻る見込みがありません。
出典:総務省「社会・人口統計体系(A 人口・世帯)」をもとに作成
7区の状況
区別の自然増減(最新年)
出生数 − 死亡数/単位は人
いっぽう麻生区・川崎区は高齢化率が高く(24.1%・22.4%)、死亡数が出生数を上回る幅が大きくなっています。区ごとの年齢構成の違いが、そのまま自然増減の差になっています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(A 人口・世帯)」をもとに作成
解説:転換点の意味
40年続いた関係が終わった
川崎市の人口動態で2021年に起きたことは、はっきりしています。生まれる人より亡くなる人のほうが多くなりました。出生11,942人に対し死亡12,275人。差は333人です。
数としては小さく見えますが、意味は大きい。日本全体が2007年に自然減へ転じてから14年、川崎市はそのあいだも自然増を保ってきました。「若い政令市」であることの、いちばん分かりやすい証拠がこれでした。それが失われたということです。
しかも交差したあとの動きが速い。2022年は−2,338人、2023年は−2,555人。1年ごとに差が開いています。
2つの力が同時に働いた
自然減への転換は、出生と死亡の両方が動いた結果です。
出生数は2015年の14,703人がピークでした。そこから2023年の10,995人へ、8年で25.2%減っています。「人口ピラミッド」のページで見たとおり、川崎市でもっとも人数が多いのは45〜49歳(2020年時点)。出産の中心となる年齢層は、すでにその下の細い部分に移っています。
死亡数は一貫して増え続けています。1995年の6,333人から2023年の13,550人へ、28年で2.1倍。高齢化率が5.6%(1980年)から20.2%(2020年)へ上がったことの、直接の帰結です。
片方が減り、もう片方が増える。この2つの線は、交差したあと開いていくと考えるのが自然です。
それでも人口は増えている
ここが川崎市の特殊なところです。自然減に転じてもなお、総人口は増えています。「人口の推移」のページで見たとおり、2020年から2025年で+1.5%(+22,870人)。
理由は転入超過です。自然減の分を、市外から移り住む人が埋めている。川崎市の人口増加は、いまや完全に「人が入ってくること」だけに支えられているということになります。
この構図には脆さがあります。自然減は年々拡大しますが、転入は景気や住宅供給、他都市との競争に左右されます。転入超過が細れば、川崎市の人口は減少に転じます。その分岐点は、これまで考えられていたより近いかもしれません。
中小企業への示唆
1. 子ども向け市場は先に縮む——出生数はすでにピークから25%減っています。「児童生徒数・学校数の推移」のページで見たとおり小学校児童数はまだ増えていますが、これは過去に生まれた子どもが在学しているためです。数年遅れで、確実に減少へ向かいます。学習塾、子ども服、ベビー用品、小児科——これらの市場は、市の人口が増えていても縮小局面に入ります。
2. 高齢者向けは確実に伸びる——死亡数が年13,550人ということは、それだけの人が最期の数年を市内で過ごすということでもあります。介護、医療、終活、相続、住宅の片づけ。これらの需要は、人口動態から確実に読めます。
3. 労働力は転入頼み——「就業者数・失業率・女性就業」のページで見たとおり、20年で増えた就業者はすべて女性でした。自然減が始まった以上、今後の労働力は市外からの転入と、まだ働いていない層の就業化に頼るしかありません。
4. 「川崎は若い」は過去形になりつつある——「政令指定都市20市 データ比較」で見た高齢化率20市最低(20.2%)はいまも事実です。しかし自然減はその優位が崩れ始めた合図です。中長期の事業計画では、この前提が変わることを織り込む必要があります。
データの注意点
出生数・死亡数は人口動態統計による日本人のみの数値です(社会・人口統計体系の収録値)。外国人住民の出生・死亡は含まれていません。「人口の推移」で見たとおり川崎市の外国人比率は2.50%(2020年)あるため、実際の自然増減はこの数値と多少ずれます。
2020年から2022年はコロナ禍の影響を受けた期間です。死亡数の増加には感染症による超過死亡が、出生数の減少には妊娠控えが含まれている可能性があります。傾向として読むのが安全です。
合計特殊出生率はこのデータベースには収録されていないため、このページでは扱っていません。