このページの要点
① 専門的・技術的職業が24.9%で政令市20市の1位。市民4人に1人が技術者・研究者・医療従事者・教員などです。2位の横浜市(23.0%)、最下位の静岡市(15.8%)を上回ります。
② 正規雇用率59.5%も20市で1位。2位のさいたま市・仙台市(57.0%)を上回り、最下位の京都市(48.1%)とは11.4ポイントの差があります。
③ ところが管理的職業は1.79%で19位。専門職1位・正規率1位の街が、管理職では下から2番目。この落差にこそ、川崎の働き方が表れています。
どんな仕事に就いているか
職業別の就業者数(2020年・川崎市)
15歳以上の就業者71万7,354人の内訳/常住地ベース
いっぽう生産工程従事者は7.3%にとどまります。「製造品出荷額等の推移」のページで見たとおり川崎市は全国6位の製造業を抱えますが、そこで働く人が川崎に住んでいるとは限りません。この統計は「住んでいる人の職業」なので、市外へ通う事務職・専門職が多数を占めます。
出典:総務省「令和2年国勢調査 従業地・通学地による人口・就業状態等集計」をもとに作成
男女で違う職業構成
それぞれの性別の就業者に占める割合(%)
次いで管理的職業。男性2.7%に対し女性0.6%——4.5倍の差です。「就業者数・失業率・女性就業」のページで見たとおり、20年で増えた働き手はすべて女性でした。数は増えたが、管理職への到達はまだ差が大きいということです。
専門的・技術的職業は男性26.8%・女性22.4%と、比較的差が小さい分野です。
出典:総務省「令和2年国勢調査」をもとに作成
政令指定都市20市のなかで
その職業が就業者に占める割合/川崎市を濃い色で表示
出典:総務省「令和2年国勢調査」をもとに作成
専門技術職の割合と、管理職の割合
横軸が専門的・技術的職業の割合、縦軸が管理的職業の割合(%)
2つの指標に相関はほとんど見られません。むしろ専門職が多い都市ほど管理職が少ないという緩やかな逆相関すら見て取れます。
管理的職業従事者には会社役員や自営業の経営者が含まれます。地方都市ほど自営業者の比率が高いため、この指標は「出世した人の多さ」ではなく「自営・経営層の厚さ」を映していると読むのが妥当です。
出典:総務省「令和2年国勢調査」をもとに作成
雇用形態
雇用形態の内訳(2020年・川崎市)
就業者71万7,354人に占める割合
雇用者以外(自営業主・家族従業者・役員など)は10万3,211人(14.4%)にあたります。
出典:総務省「令和2年国勢調査」をもとに作成
正規雇用率ランキング(政令指定都市20市)
正規の職員・従業員 ÷ 就業者総数/川崎市を濃い色で表示
「政令指定都市20市 データ比較」のページで見た納税者1人あたり所得20市2位、「市民の最終学歴」で見た大卒率20市1位と、この数字は一本の線でつながります。高学歴 → 専門職 → 正規雇用 → 高所得という連鎖です。
出典:総務省「令和2年国勢調査」をもとに作成
7区でどう違うか
区別の専門技術職・管理職・生産工程の割合(2020年)
それぞれの区の就業者に占める割合(%)
逆に生産工程従事者は川崎区11.3%が最高、麻生区5.4%が最低。川崎区だけ職業構成が明確に違います。
管理的職業は麻生区2.48%、宮前区2.14%が高い。「7区データ図鑑」で見たとおり、この2区は持ち家率が高く1世帯人員も多い区です。経営者・自営業層が住む区という性格が読み取れます。
出典:総務省「令和2年国勢調査」をもとに作成
解説:1位と19位のあいだ
専門職の街
川崎市に住む15歳以上の就業者71万7,354人のうち、専門的・技術的職業従事者は17万8,295人。24.9%で政令指定都市20市の1位です。市民のおよそ4人に1人が、技術者、研究者、医療従事者、教員、法務・経営の専門職といった仕事に就いています。
2位の横浜市(23.0%)、3位のさいたま市(20.6%)と、上位は東京圏の都市が並びます。最下位は静岡市の15.8%。9.1ポイントの差があります。
この数字は他のページの発見と一貫しています。「市民の最終学歴」のページで見た大学・大学院卒率33.7%(20市1位)、「政令指定都市20市 データ比較」で見た納税者1人あたり所得459.3万円(20市2位)。高学歴 → 専門職 → 高所得という連鎖が、3つの統計にまたがって確認できます。
正規雇用率も1位
雇用形態を見ると、正規の職員・従業員が42万6,974人で就業者の59.5%。これも20市で1位です。パート・アルバイト等は22.8%、派遣社員は3.3%。
最下位の京都市(48.1%)とは11.4ポイントの差があります。京都市は学生が多く、アルバイトの比率が高くなりやすい都市です。川崎市は「働いている人が住む街」——「通勤・通学の流動」のページで見たとおり、市民の4割は東京へ働きに出ます。安定した雇用を持つ人が、住まいとして川崎を選んでいるという構図です。
ところが管理職は19位
ここまでは「1位」が続きました。ところが管理的職業従事者の割合は1.79%で20市中19位。下から2番目です。1位の岡山市(2.37%)とは0.58ポイントの差があります。
専門職1位・正規率1位の街が、管理職では最下位クラス。この落差をどう読むか。
鍵は管理的職業従事者の定義にあります。この分類には、企業の管理職だけでなく会社役員や自営業の経営者が含まれます。地方都市ほど自営業者・小規模事業主の比率が高いため、この指標は上位に来やすい。
実際、上位の岡山市・福岡市・名古屋市に対し、下位は川崎市(1.79%)と相模原市(1.55%)。東京圏のベッドタウンほど低いという並びです。川崎市は雇用者の比率が85.6%と高く、自営業・経営層が相対的に薄い。この指標は「出世した人の多さ」ではなく「自営・経営層の厚さ」を測っていると読むのが妥当です。
散布図で見ると、専門技術職の割合と管理職の割合には相関がなく、むしろ緩やかな逆相関すら見て取れます。「雇われて専門性を発揮する街」と「自ら経営する人が多い街」は別物だということです。
女性は事務、男性は専門・管理
男女別に見ると、職業構成ははっきり分かれます。
もっとも差が大きいのは事務従事者。女性33.5%に対し男性18.6%で、14.9ポイントの開き。女性就業者の3人に1人が事務職です。
次いで管理的職業。男性2.7%に対し女性0.6%と、4.5倍の差があります。「就業者数・失業率・女性就業」のページで見たとおり、2000年から2020年で増えた就業者7万8,387人はすべて女性でした。数としては増えたが、管理職への到達には依然として大きな差があることが、この数字に表れています。
いっぽう専門的・技術的職業は男性26.8%・女性22.4%と差が小さい。医療・福祉・教育といった分野に女性の専門職が多いためと考えられます。
川崎区だけ違う
区別に見ると、川崎区の職業構成が明確に他と異なります。
専門技術職の割合は、中原区28.9%・麻生区27.1%・多摩区26.9%に対し、川崎区は18.2%。10.7ポイントの差です。逆に生産工程従事者は川崎区11.3%が最高で、麻生区5.4%の2倍以上。
「産業別の構成(区別)」のページで見たとおり、川崎区は臨海部の工業地帯を抱えます。働く場所が区内にあり、そこで働く人が区内に住んでいる——他区とは異なる構造です。
管理的職業では麻生区2.48%、宮前区2.14%が高い。「7区データ図鑑」で見たとおり、この2区は持ち家率と1世帯人員が7区で最も高い区でした。経営者・自営業層が住まいとして選ぶ区だといえます。
中小企業への示唆
1. 採用は「専門職」で勝負できない——専門技術職24.9%は20市1位。裏を返せば専門人材の争奪が最も激しい市場です。「就業者数・失業率・女性就業」で見たとおり失業率も20市最低。給与だけで大企業と競うのは現実的ではありません。
2. 事務職の女性が最大の労働力プール——女性就業者の33.5%が事務従事者。時短、在宅、柔軟なシフト——この層に届く条件整備は、統計的に最も効率のよい採用戦略です。
3. 経営者向けサービスは麻生・宮前へ——管理的職業の割合が高いのはこの2区。事業承継、資産運用、保険、士業——経営者を顧客とする商売は、北部に営業の重心を置くのが合理的です。
4. 川崎区は別の市場——専門技術職18.2%、生産工程11.3%。他区とは職業構成がまったく違います。同じ市内でも、川崎区向けの商品・サービス設計は分けて考える必要があります。
データの注意点
数値は令和2年国勢調査による常住地ベースの集計です。川崎市に住む人の職業であり、市内で働く人の職業ではありません。「通勤・通学の流動」のページで見たとおり市民の41.9%は他県で働いており、この統計の多くは東京での仕事を映しています。
管理的職業従事者には会社役員・自営業の経営者が含まれます。「企業内で管理職に昇進した人」だけを数えたものではありません。都市間比較では、この点が結果に大きく影響します。
雇用形態の「正規の職員・職業員」「派遣社員」「パート・アルバイト等」は雇用者の内訳です。自営業主・家族従業者・役員は雇用者に含まれないため、3つを足しても就業者総数にはなりません。
2020年10月の調査で、コロナ禍の影響を含みます。休業者も就業者に計上されています。