女性の年齢別就業率

20代は全国トップ。30代で、いちばん深く落ちる。

このページの要点

① 25〜29歳女性の労働力率90.3%は政令指定都市20市で1位。2位の新潟市(89.0%)、3位の大阪市(88.9%)を上回ります。全国平均は87.0%です。

② ところが35〜39歳では76.7%まで落ちます。谷の深さ13.6ポイントは20市で18位——下から3番目に深い。全国平均の谷(8.8ポイント)の1.5倍です。

③ ただし5年で確実に浅くなっています。2015年の谷は16.1ポイント、2020年は13.6ポイント。2.5ポイント改善し、35〜39歳の労働力率は69.7%から76.7%へ7.0ポイント上がりました。

M字カーブは、どこまで解消したか

女性の年齢別労働力率(川崎市・2015年と2020年、全国と比較)

労働力率=(就業者+完全失業者)÷ その年齢の女性人口

読み方:アルファベットのMのかたちに見えるのが「M字カーブ」です。20代後半で山、30代後半で谷、40代でまた盛り返す。
川崎市(赤い実線)の山は25〜29歳の90.3%。谷は35〜39歳の76.7%。差は13.6ポイントです。
灰色の点線は2015年。すべての年齢で下にあります。5年で全年齢が上昇し、とくに35〜39歳は+7.0ポイント、60〜64歳は+8.5ポイント伸びました。
青い線は全国平均。山は川崎のほうが高いのに、谷は全国のほうが浅い——これがこのページの中心的な発見です。

出典:総務省「令和2年国勢調査 不詳補完結果」「平成27年国勢調査 不詳補完結果(遡及集計)」をもとに作成

男性と比べると

2020年・川崎市/棒が男女の差(ポイント)

読み方:男性(青)の労働力率は30〜50代でほぼ98%の水平線。M字にはなりません。
男女の差(灰色の棒)は25〜29歳で6.5ポイントともっとも小さく、そこから急に開いて35〜39歳で21.3ポイントに達します。
差が生まれるのは20代後半から30代後半にかけて——出産・育児の時期とちょうど重なります。

出典:総務省「令和2年国勢調査 不詳補完結果」をもとに作成

政令指定都市20市のなかで

M字の谷の深さ(2020年)

25〜49歳のうち最高の年齢階級 − 最低の年齢階級(ポイント)/小さいほど谷が浅い

読み方:川崎市の谷は13.6ポイントで20市中18位。谷が深いほうから数えて3番目です。
もっとも浅いのは新潟市の4.8ポイント(89.0%→84.2%)。熊本市6.6、北九州市7.3と続きます。地方都市ほど谷が浅いという傾向がはっきり出ています。
もっとも深いのはさいたま市15.4ポイント、横浜市14.4ポイント、川崎市13.6ポイント。上位3市がすべて東京圏のベッドタウンです。偶然ではありません。

出典:総務省「令和2年国勢調査 不詳補完結果」をもとに作成

女性の労働力率(%)/川崎市を濃い色、全国を緑で表示

出典:総務省「令和2年国勢調査 不詳補完結果」をもとに作成

7区でどう違うか

区別の女性労働力率(2020年)

線をクリックすると表示・非表示を切り替えられます

読み方:35〜39歳でもっとも高いのは中原区の78.9%、もっとも低いのは麻生区の71.5%。7.4ポイントの差があります。
谷の深さで見ると麻生区17.9ポイント、宮前区16.0ポイントが飛び抜けて深く、川崎区10.4ポイントがもっとも浅い。
麻生区・宮前区は「7区データ図鑑」で見たとおり、持ち家率と1世帯人員が7区でもっとも高い区です。戸建て・家族世帯が多い区ほど、M字の谷が深い。

出典:総務省「令和2年国勢調査 不詳補完結果」をもとに作成

解説:山は高く、谷も深い

20代後半は全国トップ

川崎市に住む25〜29歳の女性のうち、働いているか仕事を探している人の割合は90.3%。政令指定都市20市で1位です。

2位の新潟市89.0%、3位の大阪市88.9%、4位の福岡市88.6%、5位の横浜市88.3%。全国平均は87.0%ですから、川崎市は全国より3.3ポイント高いことになります。

「職業構成と雇用形態」のページで見たとおり、川崎市は専門的・技術的職業の比率も正規雇用率も20市で1位。「市民の最終学歴」で見た大卒率も20市1位。高学歴で専門職に就く若い女性が、川崎に多く住んでいる——この数字はその表れです。

ところが30代で、いちばん深く落ちる

ここから話が変わります。

30〜34歳で81.6%、35〜39歳で76.7%。25〜29歳の90.3%から13.6ポイントの落ち込みです。40〜44歳で77.8%、45〜49歳で79.1%と回復しますが、20代後半の水準には戻りません。

これが「M字カーブ」です。アルファベットのMのかたち——20代の山、30代の谷、40代以降のゆるやかな戻り。

問題は谷の深さです。川崎市の13.6ポイントは政令指定都市20市で18位。深いほうから数えて3番目です。全国平均の谷(8.8ポイント)の1.5倍あります。

もっとも浅いのは新潟市の4.8ポイント。熊本市6.6、北九州市7.3、岡山市8.2と、地方都市ほど谷が浅い。逆に深いのはさいたま市15.4、横浜市14.4、川崎市13.6——上位3市がすべて東京圏のベッドタウンです。

なぜベッドタウンで谷が深いのか

3つの理由が考えられます。

第一に、通勤時間です。「通勤・通学の流動」のページで見たとおり、川崎市民の41.9%は他県(ほぼ東京)へ通勤しています。片道1時間近い通勤と、保育園の送り迎えを両立させるのは簡単ではありません。地方都市では職住が近く、この壁は低くなります。

第二に、世帯の構造です。地方では三世代同居や近居が多く、祖父母が育児を支えられます。川崎市の1世帯人員は2.06人(2020年)。「世帯構成の変化」のページで見たとおり、単独世帯と核家族が中心の街です。家族に頼れる前提がありません。

第三に、世帯収入です。「政令指定都市20市 データ比較」で見たとおり、川崎市の納税者1人あたり所得は20市2位。夫の収入が高ければ、妻が一時的に仕事を離れる選択も取りやすくなります。谷の深さは、必ずしも「働けない」ことだけを意味しません。

ただし、いずれの理由であっても、結果として川崎市は「20代女性の力を活かしきれずに30代で手放している街」だという事実は変わりません。

5年で2.5ポイント浅くなった

明るい材料もあります。M字の谷は確実に浅くなっています。

2015年の川崎市の谷は16.1ポイントでした。それが2020年には13.6ポイント。5年で2.5ポイント改善しています。

年齢別に見ると、すべての階級で労働力率が上がりました。とくに大きいのが60〜64歳の+8.5ポイント、35〜39歳の+7.0ポイント、70〜74歳の+7.0ポイント。M字の底と、高齢期の両方が伸びています。

横浜市(16.7→14.4)、さいたま市(17.4→15.4)も同様に改善しました。東京圏全体で、育児期の就業継続が進んでいるということです。全国平均の改善が0.2ポイントにとどまることを考えると、もともと深かった地域ほど、この5年で大きく動いたといえます。

男女差は30代で開く

男性と比べると、構図がさらにはっきりします。

男性の労働力率は30代から50代までほぼ98%で、M字にはなりません。男女の差は25〜29歳で6.5ポイントともっとも小さく、35〜39歳で21.3ポイントまで開きます。

20代後半にはほとんどなかった差が、10年で3倍以上に広がる。この10年に何が起きるかは、あらためて説明するまでもないでしょう。

「職業構成と雇用形態」のページで見た管理的職業の男女差(男性2.7%対女性0.6%)も、この構造の延長線上にあります。30代で一度離れると、その後のキャリアに差が残る。

麻生区と川崎区で7.5ポイント違う

市内でも差があります。

35〜39歳の女性労働力率は、中原区78.9%がもっとも高く、麻生区71.5%がもっとも低い。7.4ポイントの差です。

谷の深さで見ると差はさらに広がります。麻生区17.9ポイント、宮前区16.0ポイントに対し、川崎区は10.4ポイント。

麻生区・宮前区は「7区データ図鑑」で見たとおり、持ち家率と1世帯人員が7区でもっとも高い区。戸建て・家族世帯が多い区ほど、M字の谷が深いという関係が、市内でもそのまま現れています。

逆に川崎区は単身世帯と共働き世帯が多く、谷が浅い。同じ市内でも、女性の働き方はまったく違うということです。

中小企業への示唆

1. 「30代女性」は川崎最大の未活用労働力——25〜29歳の90.3%が35〜39歳で76.7%に落ちます。35〜39歳の女性5万2,452人に13.6ポイントを当てるとおよそ7,100人。これが、20代後半と同じ割合なら働いていたはずの人数です。「就業者数・失業率・女性就業」で見たとおり失業率は20市最低。採用難の答えは、この層にあります。

2. 求められるのは給与より「時間の柔軟性」——谷の原因が通勤時間と保育の両立にあるなら、勝負どころは時給ではありません。短時間勤務、在宅、始業終業時刻の自由度、急な休みへの寛容さ。中小企業が大企業に勝てる数少ない領域です。

3. 北部(麻生区・宮前区)にとくに厚い——谷が17.9ポイント、16.0ポイント。働きたいのに働けていない層がもっとも多いエリアです。北部で職住近接の求人を出す価値は、統計的に裏づけられます。

4. 高齢層の伸びも見逃せない——60〜64歳が+8.5ポイント、70〜74歳が+7.0ポイント。5年でもっとも伸びた層です。経験のある人材を、短時間で——この組み合わせは今後さらに広がります。

データの注意点

「労働力率」は、就業者と完全失業者を合わせた「労働力人口」がその年齢の人口に占める割合です。仕事を探している人も含みます。就業率(就業者のみ)はこれより数ポイント低くなります。

使用したのは国勢調査の「不詳補完結果」です。労働力状態が「不詳」だった人を統計的に補完した集計で、2015年分も同じ手法で遡って集計されているため、2015年と2020年をそのまま比較できます。通常の集計値とは数値が異なります。

2020年10月の調査で、コロナ禍の影響を含みます。休業者も就業者に計上されているため、実際に働いていた人の数はこれより少ない可能性があります。

M字の谷が深いことは、それだけで「悪い」とは言い切れません。育児に専念する選択も、自発的なものであれば尊重されるべきです。ただし「働きたいのに働けない」人がどれだけいるかは、この統計だけではわかりません。

「谷の深さ」は25〜49歳の5つの年齢階級のうち最高と最低の差として計算しています。