このページの要点
① 取扱貨物量は2010年の8,623万トンから2023年の6,320万トンへ、13年で26.7%減りました。とくに輸入が5,107万トンから3,288万トンへ35.6%減っています。
② 輸入の79.6%は、たった4品目。LNG(液化天然ガス)36.1%、原油25.1%、石炭11.2%、鉄鉱石7.1%。川崎港はエネルギーと素材の港です。
③ 入港船舶は2万6,969隻から1万6,224隻へ39.8%減。とくに内航船が40.6%減りました。
13年で4分の1減った
海上出入貨物量の推移(2010年〜2023年・川崎港)
「輸出入」は外国との、「移出入」は国内の他港とのやりとり
内訳を見ると、減り方に差があります。輸入が35.6%減(5,107→3,288万トン)ともっとも大きく、輸出も31.5%減、移出21.0%減。唯一増えたのが移入で+10.9%です。
2020年にコロナ禍で6,763万トンまで落ち、2021年に7,198万トンへ戻したものの、その後また下がっています。2023年は14年間でもっとも少ない年でした。
出典:国土交通省「港湾調査(港湾統計 年報)」をもとに作成
主要港との比較(2023年)
海上出入貨物量の合計(万トン)/川崎港を濃い色で表示
同じ京浜港でも横浜港1億97万トン、東京港8,205万トンで、川崎港はその下。千葉港(1億2,624万トン)にも大きく離されています。
ただし川崎港と千葉港の数値はフェリーを除いた「一般」の貨物です。この2港にはフェリー航路がないためで、比較上の不利にはなりません。いっぽう苫小牧港(1億128万トン)はフェリーを含む「計」です。
出典:国土交通省「港湾調査(港湾統計 年報)」をもとに作成
何を輸入しているか
輸入貨物の品目別内訳(2023年・川崎港)
輸入3,288万トンの内訳/上位15品目
この4品目で79.6%。5位の揮発油(216万トン、6.6%)を加えると86.1%になります。
「業種別 出荷額シェア」のページで見た川崎区の製造業——石油製品38.4%、化学29.7%、鉄鋼14.6%——と、そのまま対応しています。港で降ろした原燃料が、臨海部のプラントに入り、製品になって出ていく。川崎港は、その入口です。
出典:国土交通省「港湾調査(港湾統計 年報)」をもとに作成
主要品目の推移(2018年〜2023年)
2020年は品目別のデータがe-Statに収録されていないため空白です
もっとも大きく減ったのは鉄鉱石です。2018年613万トンから2023年235万トンへ61.7%減。2022年の558万トンから1年で半分以下になりました。
石炭も561万トンから369万トンへ34.2%減。いっぽう揮発油だけは158万トンから216万トンへ36.7%増えています。
出典:国土交通省「港湾調査(港湾統計 年報)」をもとに作成
船の数も減っている
入港船舶数の推移(2010年〜2023年・川崎港)
棒が隻数、折れ線が1隻あたりの貨物量(トン)
内訳では内航商船が2万3,402隻から1万3,894隻へ40.6%減。外航商船は2,663隻から2,149隻へ19.3%減にとどまります。
減っているのは主に国内航路の船です。「移出が21.0%減」という数字とも一致します。
折れ線(1隻あたり貨物量)は3,197トンから3,896トンへ21.9%増。船が大型化し、隻数が減ったという面もあります。
出典:国土交通省「港湾調査(港湾統計 年報)」をもとに作成
解説:エネルギーの入口
4品目で8割
川崎港が2023年に扱った貨物は6,320万トン。そのうち輸入が3,288万トン、全体の52.0%を占めます。
その輸入の中身は、驚くほど偏っています。
LNG(液化天然ガス)1,186万トン(36.1%)、原油827万トン(25.1%)、石炭369万トン(11.2%)、鉄鉱石235万トン(7.1%)。この4品目だけで79.6%です。
5位の揮発油(216万トン、6.6%)、6位のLPG(113万トン、3.4%)を加えると89.6%。川崎港が運んでいるのは、ほとんどエネルギーと素材だということです。
食料品もありますが、麦72万トン(2.2%)、野菜・果物48万トン(1.5%)と小さい。コンテナで運ばれる日用品や工業製品は、横浜港・東京港が担っています。
港と工場は、ひとつのシステム
この品目構成は、「業種別 出荷額シェア」のページで見た川崎区の産業構造とぴたりと重なります。
川崎区の製造品出荷額3兆1,000億円の内訳は、石油製品・石炭製品38.4%、化学工業29.7%、鉄鋼業14.6%。この3業種で82.7%でした。
そして港の輸入は、LNG・原油・石炭・鉄鉱石で79.6%。
港で降ろした原油が石油製品に、LNGが電力とガスに、鉄鉱石と石炭が鋼材になる。川崎港と臨海部のプラントは、切り離せないひとつのシステムです。
「土地利用と工業用地」のページで見た工業専用地域1,782ha(用途地域の14.0%)は、このシステムが占める空間です。
減っているのはエネルギー需要
貨物量の減少も、同じ構造から説明できます。
2010年から2023年で、貨物量は8,623万トンから6,320万トンへ26.7%減。とくに輸入が35.6%減と大きい。
品目別に追える2018年以降を見ると、減少の中身がわかります。
LNGは1,626万トンから1,186万トンへ27.1%減。火力発電の稼働率低下と、再生可能エネルギーへの移行が効いています。「住宅の太陽光発電と省エネ設備」のページで見たとおり、住宅の太陽光は15年で7.8倍に増えました。エネルギーの流れが変わりつつあります。
もっとも急激なのは鉄鉱石です。2018年613万トンから2023年235万トンへ61.7%減。とくに2022年の558万トンから2023年235万トンへ、1年で半分以下になりました。臨海部の高炉の稼働状況が、そのまま数字に出ています。
石炭も561万トンから369万トンへ34.2%減。脱炭素の流れが、港の統計にはっきり現れているといえます。
いっぽう増えているものもあります。揮発油は158万トンから216万トンへ36.7%増。国内で精製せず、製品として輸入する量が増えたためと考えられます。
船は大きくなり、数は減った
入港船舶数は2010年の2万6,969隻から2023年の1万6,224隻へ、39.8%減りました。貨物量の減少(26.7%)より大きな減り方です。
内訳では内航商船が2万3,402隻から1万3,894隻へ40.6%減。外航商船は2,663隻から2,149隻へ19.3%減にとどまります。減っているのは主に国内航路の船です。
ただし単純な縮小だけではありません。1隻あたりの貨物量は3,197トンから3,896トンへ21.9%増えています。船が大型化し、少ない隻数で同じ量を運ぶようになった面もあります。
8港でいちばん小さい
主要港と比べると、川崎港の位置がわかります。
2023年の取扱貨物量は、名古屋港1億5,784万トン、千葉港1億2,624万トン、苫小牧港1億128万トン、横浜港1億97万トン、神戸港9,206万トン、大阪港8,257万トン、東京港8,205万トン、そして川崎港6,320万トン。
比較した8港でもっとも少ないのが川崎港です。名古屋港の40%にとどまります。
川崎港はコンテナ港ではなく、特定の企業のプラントに直結した専用埠頭が中心の港です。取扱量の絶対値で他港と競う性格の港ではありません。
中小企業への示唆
1. 港湾関連の仕事は「エネルギー・素材」に紐づく——輸入の79.6%がLNG・原油・石炭・鉄鉱石。港湾荷役、タンク管理、配管、検査、産業廃棄物。求められる技能は装置産業向けです。コンテナ物流の仕事を期待して参入すると、想定が外れます。
2. 縮小トレンドは続く可能性が高い——13年で26.7%減。石炭34.2%減、鉄鉱石61.7%減は脱炭素という構造要因によるものです。景気で戻る性質のものではありません。港湾関連に依存した事業は、取引先の分散を検討すべき段階です。
3. ただしLNGは当面残る——36.1%と最大の品目で、減り方も27.1%と相対的に緩やか。ガス・電力インフラ向けの仕事は、石炭・鉄鋼向けより持続性があります。
4. 内航船の減少は陸送への転換を意味する——内航商船40.6%減。移出も21.0%減。海から陸へ荷が移っている可能性があります。トラック輸送、倉庫、構内物流には逆に機会があります。
5. 港の統計は臨海部の先行指標——鉄鉱石が2022年から2023年で半減しました。この種の急変は、雇用や関連発注に半年から1年遅れて表れます。臨海部と取引がある事業者は、港湾統計を定期的に見る価値があります。
データの注意点
数値は国土交通省「港湾調査(港湾統計 年報)」によるものです。暦年(1月〜12月)の集計です。
川崎港と千葉港の数値は「一般」(フェリーを除く)です。この2港にはフェリー航路がないため「計」が集計されておらず、実質的に一般=計となります。他港は「計」を使っています。苫小牧港はフェリー貨物を多く含む点にご注意ください。
2020年の品目別データは、e-Statに収録されていません。統計表には2020年の枠がありますが、川崎港の品目別の数値がほぼ入っていないため、グラフでは空白にしています。
品目別のデータは2018年以降のみです。それ以前は統計表の構成が異なり、同じ形では取得できませんでした。
品目別の合計は、貨物表の輸入量と一致することを確認しています(2018年・2019年・2021年・2023年は完全一致、2022年は6万トン、0.15%の差)。
「移出入」は国内の他港とのやりとり、「輸出入」は外国とのやりとりです。合計は輸出+輸入+移出+移入で計算されています。