業種別 出荷額シェア

350の事業所が、市の製造業の76%を出しています。

このページの要点

① 川崎市の製造品出荷額4兆828億円のうち、川崎区が3兆1,000億円。75.9%です。川崎区の製造事業所はわずか350か所。市内1,070か所の33%にすぎません。

② 川崎区の内訳は、石油38.4%・化学29.7%・鉄鋼14.6%。3業種で82.7%——ほぼ素材産業だけでできています。

③ 1事業所あたりの出荷額は川崎区88.6億円、宮前区2.5億円。35倍の差があります。同じ「製造業」でも、区によって中身がまったく違います。

川崎区は何を出荷しているか

業種別の製造品出荷額(2020年確報・川崎区)

従業者4人以上の事業所/川崎市の製造品出荷額の75.9%を占める区

読み方:1位は石油製品・石炭製品製造業の1兆1,890億円(38.4%)。2位が化学工業9,198億円(29.7%)、3位が鉄鋼業4,541億円(14.6%)。
この3業種だけで82.7%。臨海部のコンビナートがそのまま数字になっています。
4位は食料品製造業2,680億円(8.6%)。ここまでで91.3%です。機械や電機は、出荷額で見るとごくわずか——電気機械625億円(2.0%)、輸送用機械294億円(0.9%)。
「製造品出荷額等の推移」のページで見た1990年代以降の減少は、この素材3業種の値動きにほぼ支配されているということです。

出典:経済産業省・総務省「工業統計調査 確報 市区町村別産業中分類別統計表」をもとに作成

主要業種の推移(2013年〜2020年確報・川崎区)

2015年・2016年は工業統計調査がないため空白/石油製品は2018年以前が秘匿のため点がありません

読み方:石油製品・石炭製品は2019年と2020年しか点がありません。それ以前は「秘匿」されているためです(事業所が少ないと、個別企業の数値が推定できてしまうため伏せられます)。
灰色の破線が川崎区の製造業計です。この線と、色のついた線の合計とのあいだに空いている大きな差が、伏せられた石油製品のぶんだと考えられます。2013年は業種が判明した分が全体の54%しかありませんでした。
長い期間で追えるのは化学工業(6年)、鉄鋼業(5年)、食料品製造業(6年)です。化学工業は2013年の1兆198億円から2020年の9,198億円へ9.8%減りました。
製造業計が年ごとに大きく上下するのは、主に石油製品の価格変動が理由です。生産量そのものが激変しているわけではありません。

出典:経済産業省・総務省「工業統計調査 確報」をもとに作成

7区でどう違うか

区別の製造品出荷額(2020年確報)

棒が出荷額、菱形が事業所数

読み方:川崎区3兆1,000億円が突出しています。2位の中原区(5,579億円)の5.6倍、最下位の宮前区(228億円)の136倍です。
ところが事業所数を見ると、川崎区350か所に対して高津区243か所、中原区161か所。数のうえでは、それほど差がありません。
7区の合計は4兆827億円で、市の値(4兆828億円)とほぼ一致します。

出典:経済産業省・総務省「工業統計調査 確報」をもとに作成

1事業所あたりの出荷額(2020年確報)

製造品出荷額等 ÷ 事業所数(億円)

読み方:川崎区は1事業所あたり88.6億円。宮前区は2.5億円。35倍の差です。
川崎区にあるのは、石油精製・化学・製鉄の巨大プラント。1つの事業所が数千億円を出荷します。北部にあるのは、従業員数人から数十人の中小工場です。
「川崎市の製造業」とひとくくりにできないことが、この図からわかります。南部の装置産業と、北部の中小製造業。まったく別の産業と考えるべきです。

出典:経済産業省・総務省「工業統計調査 確報」をもとに作成

解説:350の事業所が支える

市の76%が、ひとつの区から

2020年確報によると、川崎市の製造品出荷額等は4兆828億円。そのうち川崎区だけで3兆1,000億円、75.9%を占めます。

川崎区の製造事業所は350か所。市内1,070か所の32.7%です。3分の1の事業所が、4分の3の出荷額を生んでいることになります。

「事業所数・従業者数の推移」のページで見たとおり、川崎市には4万1,223の事業所があります。そのうち製造業は1,070か所。市内の事業所の2.6%が、市の製造業を担っています。さらにその中の350か所——市内全事業所の0.85%——が、製造品出荷額の76%を出しているのです。

石油・化学・鉄鋼で82.7%

川崎区の3兆1,000億円の内訳を見ると、集中はさらに極端です。

石油製品・石炭製品製造業が1兆1,890億円(38.4%)。次いで化学工業9,198億円(29.7%)、鉄鋼業4,541億円(14.6%)。

この3業種だけで82.7%。4位の食料品製造業(2,680億円、8.6%)を加えると91.3%です。

いっぽう機械・電機は驚くほど小さい。電気機械器具625億円(2.0%)、生産用機械461億円(1.5%)、金属製品431億円(1.4%)、輸送用機械294億円(0.9%)。

川崎といえば工業都市というイメージがありますが、その中身は素材産業です。臨海部の石油精製プラント、化学コンビナート、製鉄所。これらが川崎の製造業の実体です。

数字が動くのは、価格が動くから

この構造は、統計を読むうえで重要な意味を持ちます。

推移を見ると、石油製品・石炭製品の振れ幅が突出しています。2013年から2020年のあいだで、数千億円単位で上下しています。

これは生産量が激変しているからではありません。原油価格に連動しているからです。石油製品の出荷額は、原油価格が上がれば増え、下がれば減ります。

「製造品出荷額等の推移」のページで見た川崎市の製造業の長期的な減少も、この点を踏まえて読む必要があります。減少の一部は、実体(生産量・雇用)ではなく価格の変動を映しています。

川崎区の出荷額も、2013年3兆5,429億円、2017年2兆6,283億円、2018年3兆621億円、2019年3兆1,996億円、2020年3兆1,000億円と大きく上下しています。年ごとの増減を「産業の盛衰」として読むのは危険です。

南部と北部は、別の産業

区別に見ると、市内の製造業がいかに不均一かがわかります。

出荷額は川崎区3兆1,000億円、中原区5,579億円、高津区1,699億円、幸区1,619億円、麻生区421億円、多摩区281億円、宮前区228億円。川崎区と宮前区で136倍の差です。

ところが事業所数は、川崎区350か所、高津区243か所、中原区161か所、幸区99か所、宮前区90か所、多摩区70か所、麻生区57か所。数のうえでは、それほど差がありません。

1事業所あたりに直すと、差の正体が見えます。川崎区88.6億円に対し、宮前区2.5億円。35倍です。

川崎区にあるのは、石油精製・化学・製鉄の巨大プラント。1つの事業所が数千億円を出荷します。北部にあるのは、従業員数人から数十人の中小工場です。

「川崎市の製造業」とひとくくりにすることはできません。南部の装置産業と、北部の中小製造業。まったく別の産業と考えるべきです。

中小企業への示唆

1. 「川崎の製造業は4兆円市場」という説明は、実務上ほとんど意味がない——その76%は臨海部の3業種です。中小企業が関わる余地のある市場は、残りの1兆円弱、あるいは川崎区以外の9,827億円のほうです。自社の市場を測るときは、区と業種で絞ってから数えてください。

2. 臨海部への納入は「装置産業向け」の仕事——石油・化学・鉄鋼のプラント。求められるのは保全、配管、計装、安全管理、産業廃棄物、構内物流です。部品加工とは別の技能体系になります。参入するなら、この方向を見るべきです。

3. 北部の中小工場が「川崎の製造業の数」——高津区243、宮前区90、多摩区70、麻生区57。合計460か所。1事業所あたり数億円規模の、いわゆる町工場です。支援施策・営業の対象として現実的なのはこちらです。

4. 中原区5,579億円をどう見るか——161事業所で1事業所あたり34.7億円。川崎区に次ぐ規模です。「産業別の構成(区別)」で見たとおり、中原区には大手電機メーカーの拠点があります。研究開発型・高付加価値の製造業という別の性格を持つ区です。

5. 統計の年次変動に振り回されない——原油価格で数千億円動きます。前年比だけを見て「川崎の製造業が回復した/悪化した」と判断しないこと。従業者数や事業所数のほうが、実体をよく表します。

データの注意点

業種別の内訳は「区」単位でしか公表されていません。市の値として公表されているのは製造業計だけです。このページで市の業種構成を示していないのは、そのためです。

事業所が少ない業種は「秘匿」されます。個別企業の数値が推定できてしまうためです。川崎区以外の6区では、ほとんどの業種が秘匿されており、業種別の内訳を示すことができません。川崎区でも2013年〜2018年は判明分が48〜66%にとどまり、内訳がすべて揃うのは2019年と2020年だけです。

対象は従業者4人以上の事業所です。3人以下の小規模工場は含まれません。「事業所の規模と中小企業比率」のページで見たとおり、川崎市の事業所の52.6%は4人以下。この統計は、小さな工場を捉えていません。

2015年と2016年のデータがありません。経済センサス‐活動調査の実施年には工業統計調査が行われないためです。グラフでも線をつながず、空けて表示しています。

年は確報の年次です。工業統計調査は2020年をもって廃止され、2021年以降は経済センサス‐活動調査に統合されました。このページの数値は2020年確報が最新となります。

金額は製造品出荷額等(製造品出荷額+加工賃収入額+その他収入額)です。付加価値額ではありません。