このページの要点
① 1位はどの区も卸売業・小売業。18.5%(高津区)から21.7%(幸区)まで、7区すべてで最多です。買い物の場は、どこにでもあります。
② 2番手で区の性格が分かれる。川崎区と中原区は宿泊業・飲食サービス業、北部4区(幸・多摩・宮前・麻生)は医療・福祉が2位です。
③ 製造業は「数」と「金額」で集中度が違う。事業所数では川崎区が市全体の28.8%(816所)。ところが従業者数では41.0%、「製造品出荷額等の推移」で見た金額では78.3%。数を数えるほど分散して見え、規模で測るほど集中して見えます。
区ごとの産業構成
区別の産業構成(事業所数・2021年)
100%積み上げ/各区の全産業に占める割合
ところが従業者数に切り替えると、川崎区だけ形が変わります。製造業と運輸業の帯が太くなり、他区とはっきり違う姿になります。臨海部の大規模事業所が効いているためです。
「事業所の数」では区の違いは小さく、「働く人の数」では大きい——これがこのページの核心です。
出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」をもとに作成
産業ごとに、どの区に集まっているか
その産業の市内事業所が、どの区にどれだけあるか(%)/点線は区の人口シェア
出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」/総務省「令和7年国勢調査 速報集計」をもとに作成
1事業所あたりの規模
区別・産業別の1事業所あたり従業者数(2021年)
従業者数 ÷ 事業所数(人)/数字が大きいほど大規模な事業所が多い
出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」をもとに作成
解説:似ているようで、違う
事業所の数では、区の違いは小さい
7区の産業構成を事業所数の割合で並べると、意外なほど似ています。どの区でも卸売業・小売業が最多で18.5%〜21.7%。次いで医療・福祉、宿泊業・飲食サービス業、不動産業、建設業——という並びがほぼ共通です。
これは考えてみれば自然なことです。人が住んでいる場所には、その人たちの生活を支える商売が必要になります。コンビニ、クリニック、飲食店、不動産屋、工務店。人口に比例して立地する業種が、事業所数の多数を占めるからです。
「7区データ図鑑」のページで見たとおり、7区の人口は17.6万人〜27.0万人と1.5倍の幅に収まっています。人口の差が小さければ、生活密着型の事業所の構成も似てきます。
働く人の数で見ると、川崎区だけ違う
ところが従業者数に切り替えると、様子が変わります。川崎区だけ、製造業と運輸業・郵便業の帯が明らかに太くなります。
「製造品出荷額等の推移」のページで見たとおり、川崎区は市の製造品出荷額の78.3%を占めます。ところが事業所数で見ると28.8%(816所)にすぎません。従業者数では41.0%。数え方を変えるだけで、28.8% → 41.0% → 78.3%と集中度がまるで変わります。
意味するところは明快です。川崎区の工場は数こそ市の3割だが、1か所あたりが圧倒的に大きい。逆に高津区(601所・21.2%)や中原区(455所・16.0%)には、小さな町工場が数多くあります。「製造業が多い区」がどこかは、何を数えるかで答えが変わります。
「事業所数・従業者数の推移」のページで見たとおり、川崎市全体の1事業所あたり従業者数は13.3人。区別では幸区16.4人がトップ、多摩区9.4人が最低でした。この差は、産業構成の違いから生まれています。
2番手に出る、区の性格
構成が似ているとはいえ、違いがないわけではありません。2位の業種を見ると、区は2つのグループに分かれます。
宿泊業・飲食サービス業が2位——川崎区(13.0%)、中原区(15.1%)。どちらも大きなターミナル駅(川崎駅、武蔵小杉駅)を抱え、通勤客と買い物客が集まる区です。飲食店は「人が通る場所」に集まります。
医療・福祉が2位——幸区(11.4%)、多摩区(14.0%)、宮前区(13.3%)、麻生区(15.7%)。住宅地としての性格が強い区です。とくに麻生区の15.7%は7区で最高で、「7区データ図鑑」のページで見たとおり高齢化率24.1%も7区最高でした。2つの数字は連動しています。
高津区だけは不動産業・物品賃貸業(13.1%)が2位という、やや異なる構成です。溝の口という交通の結節点を抱え、賃貸物件の取り扱いが多いことが背景と考えられます。
中小企業への示唆
1. BtoBの営業先は川崎区・幸区——1事業所あたりの規模が大きく、まとまった取引が見込めます。少数の顧客を深く担当する営業スタイルが向きます。
2. 数を回すなら多摩区・麻生区——1事業所あたり9.4人・12.2人と小規模事業所が中心です。単価は小さくても、件数で稼ぐ設計になります。
3. 医療・福祉向けは北部4区——幸・多摩・宮前・麻生の4区で医療・福祉が2位。「高齢者福祉施設と定員」のページで見たとおり、この分野は伸びています。給食、清掃、リネン、人材、ICT——関連サービスの営業先が集中しています。
4. 飲食業向けは川崎区・中原区——宿泊業・飲食サービス業が2位のこの2区に、食材卸、厨房設備、店舗内装、清掃といった取引先が集まります。ただし「開業率・廃業率」のページで見たとおり、この業種は廃業率38.9%と全業種で最高です。取引先の入れ替わりが激しい前提で、与信管理は厳しめに。
データの注意点
数値は令和3年経済センサス‐活動調査(2021年6月1日現在)による民営事業所です。国・地方公共団体の事業所と、事業内容等が不詳の事業所は含みません。
「その産業がどの区に集まっているか」のグラフでは、比較の目安として区の人口シェア(2025年)を点線で示しています。産業のシェアがこの線より右にあれば、人口の割に事業所が多いことを意味します。ただし人口は2025年、事業所は2021年と年が異なります。
農林漁業、鉱業、電気・ガス・熱供給・水道業、複合サービス事業は事業所数が少ないため、グラフから除いています。