市内総生産と産業別構成

いちばん稼いでいるのは、工場ではなく不動産です。

出典は川崎市統計書です:市民経済計算は e-Stat(政府統計の総合窓口)の市区町村データにはありません。川崎市統計書 令和7年(2025年)版の第10章に掲載された「川崎市民経済計算」をもとにしています。収録されているのは令和2〜4年度(2020〜2022年度)の3年分です。

このページの要点

① 市内総生産は5兆9,580億円(2022年度・名目)。市民1人あたりにすると386.7万円です。

② 最大の産業は不動産業の1兆729億円(18.0%)。製造業(9,871億円、16.6%)を上回っています。川崎は工業都市ですが、生み出す付加価値では不動産が上です。

③ 製造業は3年で27.8%減りました。1兆3,667億円から9,871億円へ。3,796億円の減少です。

何が付加価値を生んでいるか

経済活動別の市内総生産(2022年度)

生産側・名目/市内総生産5兆9,580億円の内訳

読み方:1位は不動産業の1兆729億円(18.0%)。2位が製造業9,871億円(16.6%)、3位が卸売・小売業6,234億円(10.5%)。
「業種別 出荷額シェア」のページで見たとおり、川崎市の製造品出荷額は4兆828億円あります。ところが市内総生産に計上されるのは9,871億円。差は原材料費などの中間投入で、出荷額と付加価値はまったく別の数字です。
不動産業1兆729億円のうち9,577億円は「住宅賃貸業」にあたります。これには持ち家に住む人が自分に家賃を払っていると見なす「帰属家賃」が含まれます。人が住んでいること自体が、統計上の付加価値になるということです。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第10章 Ⅹ-1(原資料:川崎市民経済計算)をもとに作成

3年でどう変わったか(2019年度→2022年度)

産業別の増減額(億円)/赤がマイナス

読み方:もっとも減ったのは製造業の−3,796億円(−27.8%)。次いで電気・ガス・水道・廃棄物処理業が−1,050億円(−35.8%)、建設業−400億円(−12.7%)。
いっぽう増えたのは専門・科学技術、業務支援サービス業の+1,089億円(+23.5%)、卸売・小売業+672億円(+12.1%)、公務+486億円(+28.1%)、保健衛生・社会事業+415億円(+8.1%)。
ものをつくる産業が減り、サービスと公共部門が増えました。「研究開発・知識サービスの集積」のページで見たとおり、専門・技術サービス業は事業所が32%増えています。付加価値の面でも伸びているということです。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第10章 Ⅹ-1をもとに作成

第1次・第2次・第3次産業の構成

各年度の小計を100%としたときの割合

読み方:第3次産業が78.6%(2022年度)。第2次産業は21.4%、第1次産業は0.03%です。
3年前は第3次72.4%、第2次27.6%でした。3年で6.2ポイント、第3次産業に寄りました。
製造業の減少がそのまま第2次産業の比率を押し下げています。川崎は「工業都市」から「サービス業の都市」へ、統計上は移りつつあります。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第10章 Ⅹ-1をもとに作成

1人あたりで見ると

1人あたりの所得水準(2020〜2022年度)

単位は万円

読み方:2022年度の1人あたり市内総生産は386.7万円、1人あたり市民所得は343.7万円、1人あたり市民総所得は503.6万円。
3年間ほぼ横ばいですが、2022年度はいずれも前年度より下がっています。市内総生産は−3.1%、市民所得は−1.6%。製造業の落ち込みが効いています。
「1人あたり市民所得」と「納税者1人あたり所得」は別の数字です。「政令指定都市20市 データ比較」のページで見た459.3万円は課税対象所得を納税者数で割ったもの。ここでの343.7万円は市民所得を総人口(子どもや高齢者を含む)で割っています。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第10章 Ⅹ-9をもとに作成

神奈川県のなかでの位置

県内総生産に占める川崎市の割合(2020〜2022年度)

読み方:川崎市の市内総生産5兆9,580億円は、神奈川県の県内総生産35兆1,594億円の16.9%にあたります。
3年前は17.9%でした。1.0ポイント下がっています。製造業の減少が、県内での比重を下げました。
「人口の推移」のページで見たとおり、川崎市の人口は神奈川県の約16.6%。経済規模は人口比とほぼ同じということになります。

出典:川崎市「川崎市統計書 令和7年(2025年)版」第10章 Ⅹ-9をもとに作成

解説:出荷額4兆円、付加価値1兆円

市内総生産という数字

2022年度、川崎市の市内総生産は5兆9,580億円でした。これは市内で1年間に新しく生み出された付加価値の合計です。国のGDPを市の単位で計算したものだと考えてください。

市民1人あたりにすると386.7万円。市の総人口154万890人で割った数字です。

この統計は川崎市が独自に推計しているもので、e-Stat には収録されていません。そのため公表も遅く、令和7年(2025年)版の統計書に載るのは令和4年度(2022年度)までです。

出荷額と付加価値は違う

ここで、他のページとの数字の違いを整理しておきます。

「業種別 出荷額シェア」のページで見たとおり、川崎市の製造品出荷額等は4兆828億円(2020年確報)。ところが市内総生産に計上される製造業は9,871億円にとどまります。

差の3兆円あまりは中間投入です。原油、LNG、鉄鉱石、電力、外注費。「川崎港の取扱貨物量」のページで見たとおり、川崎港の輸入の79.6%はLNG・原油・石炭・鉄鉱石でした。買ってきたものの値段は、付加価値に含まれません。

石油精製や鉄鋼は、原材料費が売上の大部分を占める産業です。出荷額は巨大でも、生み出す付加価値の比率は低い。これが川崎の製造業の特徴です。

不動産業が1位になった

2022年度、市内総生産でもっとも大きいのは不動産業の1兆729億円(18.0%)。製造業の9,871億円(16.6%)を上回りました。

不動産業の内訳を見ると、9,577億円が住宅賃貸業、1,152億円がその他の不動産業です。

この住宅賃貸業には「帰属家賃」が含まれます。持ち家に住んでいる人が、自分自身に家賃を払っていると見なして計算する項目です。国民経済計算の標準的な扱いで、実際にお金が動いているわけではありません。

「土地利用と工業用地」のページで見たとおり、川崎市の用途地域1haあたりの人口は120.9人で政令市20市の2位。「消費者物価地域差指数」で見たとおり、川崎の物価が政令市1位なのはほぼ家賃が理由でした。

人が密集して住み、家賃が高い。それが統計上、最大の産業になっている。これが川崎の経済の姿です。

3年で製造業が3,796億円減った

2019年度から2022年度の3年間で、産業構成は大きく動きました。

もっとも減ったのは製造業の−3,796億円(−27.8%)。1兆3,667億円から9,871億円へ。次いで電気・ガス・水道・廃棄物処理業が−1,050億円(−35.8%)、建設業−400億円(−12.7%)。

いっぽう増えたのは専門・科学技術、業務支援サービス業の+1,089億円(+23.5%)、卸売・小売業+672億円(+12.1%)、公務+486億円(+28.1%)、保健衛生・社会事業+415億円(+8.1%)、金融・保険業+266億円(+19.7%)。

結果として第3次産業の比率は72.4%から78.6%へ6.2ポイント上昇。第2次産業は27.6%から21.4%へ下がりました。

ただし注意が必要です。この3年はコロナ禍と重なります。2020年度は経済活動が大きく制約された年で、そこを起点にした比較には歪みが含まれます。また製造業の落ち込みには、原油価格やLNG価格の変動も影響しています。3年という短い期間で「産業構造が変わった」と断定するのは早すぎます。

県のなかでは16.9%

神奈川県の県内総生産は35兆1,594億円(2022年度)。川崎市の5兆9,580億円は、その16.9%にあたります。

3年前は17.9%でした。1.0ポイント下がっています。製造業の減少がそのまま県内での比重を下げました。

川崎市の人口は神奈川県の約16.6%です。経済規模は人口比とほぼ同じということになります。「政令指定都市20市 データ比較」で見た所得水準の高さを考えると、やや控えめな数字です。

理由は「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおりです。川崎市民の41.9%は他県で働いています。その人たちが生み出す付加価値は、東京都の総生産に計上されます。市内総生産は「どこで生産されたか」で数える指標だからです。

中小企業への示唆

1. 「出荷額4兆円」は市場規模ではない——製造業が生み出す付加価値は9,871億円。営業先としての川崎の製造業は、出荷額が示すほど大きくありません。市場を測るときは付加価値で見るべきです。

2. 伸びているのは専門サービスと医療福祉——3年で+1,089億円と+415億円。この2分野は事業所数も従業者数も増えています。「研究開発・知識サービスの集積」「生活保護費と福祉サービス」のページと合わせて読むと、方向が一致します。

3. 建設業は−12.7%——2,744億円。「土地利用と工業用地」で見たとおり、用途地域は38年で1.5%しか増えていません。新規開発の余地が乏しい街では、建設需要も伸びにくい。改修・更新へ軸足を移す必要があります。

4. 不動産が最大産業ということの意味——1兆729億円。川崎で確実に伸びているのは「住む」需要です。「将来推計人口」で見たとおり人口は2045年まで増えます。住まいに関わる商売は、市場が広がり続けます。

5. 公務が+28.1%——486億円増。「市職員数の推移」で見たとおり、市職員は2021年から増加に転じました。行政向けの受注機会は増えていると読めます。

データの注意点

収録されているのは令和2〜4年度(2020〜2022年度)の3年分だけです。それ以前にさかのぼるには、川崎市統計書の過去の版か、川崎市が公表する市民経済計算の報告書を確認する必要があります。

市民経済計算は市が独自に推計したものです。国や県の統計を按分して計算する部分が多く、推計値である点にご注意ください。公表も年度終了から2〜3年遅れます。

金額はすべて生産側・名目です。物価変動の影響を除いた実質値もありますが、産業別の内訳は名目のみ公表されています。実質の市内総生産は2022年度で6兆1,915億円と、名目より大きくなっています。

不動産業には「帰属家賃」が含まれます。持ち家に住む人が自分に家賃を払っていると見なす計算上の項目で、実際の取引はありません。国民経済計算の国際基準に沿った扱いです。

「1人あたり市民所得」は市民所得を総人口で割ったものです。働いている人だけで割った数字ではありません。「政令指定都市20市 データ比較」で扱っている「納税者1人あたり課税対象所得」とは別の指標です。

市内総生産は「市内で生産された付加価値」です。市民が市外で働いて得た所得は含まれません。逆に市民総所得には、市外で得た所得も含まれます。