このページの要点
① 従業者100人未満の事業所が98.0%。川崎市の民営事業所4万1,223のうち、100人以上を雇うのは843か所(2.0%)しかありません。
② 4人以下が52.6%(2万1,697か所)。川崎の事業所の半分以上は、働く人が4人以下です。この割合は政令指定都市20市で13位——ほぼ平均的な姿です。
③ 個人事業所が12年で3割減りました。2009年の1万4,047か所(32.3%)から2021年の9,479か所(23.0%)へ。いっぽう法人事業所は67.4%から76.7%へ増えています。
どんな大きさの事業所があるか
従業者規模別の事業所数(2021年・川崎市)
民営事業所4万1,223か所の内訳
ここまでで92.0%。川崎市の事業所の9割以上は、働く人が30人未満です。
100人以上はわずか843か所、2.0%。「事業所数・従業者数の推移」のページで見たとおり、市内の従業者は54万7,471人。少数の大きな事業所が、大勢を雇っているという構図です。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:令和3年経済センサス‐活動調査)をもとに作成
12年でどう変わったか(2009年〜2021年)
それぞれの年の事業所を100%としたときの構成比
小さな事業所が減り、中くらいの事業所が増えた。これが12年の変化です。
実数で見ると、1〜4人は2万4,350か所から2万1,697か所へ2,653か所減。10〜29人は7,221か所から7,997か所へ776か所増です。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:経済センサス)をもとに作成
個人事業所が減っている
個人事業所と法人事業所(2009年〜2021年・川崎市)
棒が事業所数、折れ線が個人事業所の割合
いっぽう法人事業所は2万9,331か所から3万1,638か所へ2,307か所増。割合は67.4%から76.7%へ上がりました。
個人商店・個人経営の事務所が畳まれ、法人化した事業所や新設の法人が増えている。「開業率・廃業率」のページで見た廃業の中身は、多くがこの個人事業所です。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成
政令指定都市20市のなかで
2021年/その規模の事業所が全事業所に占める割合/川崎市を濃い色で表示
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成
7区でどう違うか
区別の事業所規模の構成(2021年)
それぞれの区の事業所を100%としたときの内訳
逆に100人以上の割合は川崎区が2.8%でトップ、多摩区が1.1%で最低。2.5倍の差があります。
「産業別の構成(区別)」のページで見たとおり、川崎区は臨海部に大きな工場を抱えます。大規模事業所は川崎区に、小規模事業所は北部にという分布です。
出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成
解説:98%の側から見る
4人以下が半分以上
2021年、川崎市には民営事業所が4万1,223か所ありました。その内訳を働く人の数で分けると——
1〜4人が2万1,697か所(52.6%)、5〜9人が8,262か所(20.0%)、10〜29人が7,997か所(19.4%)、30〜49人が1,541か所(3.7%)、50〜99人が883か所(2.1%)、そして100人以上が843か所(2.0%)。
従業者100人未満の事業所が98.0%。30人未満に限っても92.0%です。
「事業所数・従業者数の推移」のページで見たとおり、川崎市内で働く人は54万7,471人。この人数を4万1,223か所で割ると、1事業所あたり13.3人になります。しかし実際の中央値はずっと小さい。半分以上の事業所は4人以下で回っているのです。
川崎は「平均的な政令市」
この構成は、政令指定都市のなかで特殊でしょうか。答えは「いいえ」です。
1〜4人の割合52.6%は20市中13位。1位の京都市(58.6%)、2位の浜松市(57.0%)より低く、最下位の千葉市(46.2%)より高い。ほぼ真ん中です。
100人以上の割合2.04%も20市中11位。1位の千葉市(2.78%)と最下位の熊本市(1.70%)のあいだで、やはり中位です。
「政令指定都市20市 データ比較」で見た所得2位、「職業構成と雇用形態」で見た専門職1位・正規率1位——川崎市はさまざまな指標で上位に来ますが、事業所の規模構成はごく平均的だということです。
これは重要な発見です。「川崎は大企業の街」というイメージは、事業所の数では裏づけられません。大企業の事業所は確かにありますが、数のうえでは他都市と変わらない割合です。
小さな事業所が減り、中くらいが増えた
12年の変化を見ると、方向がはっきりしています。
1〜4人の割合は2009年の55.9%から2021年の52.6%へ、3.3ポイント低下。実数では2万4,350か所から2万1,697か所へ2,653か所減りました。
逆に10〜29人は16.6%から19.4%へ2.8ポイント上昇、実数で7,221か所から7,997か所へ776か所増。30〜49人、50〜99人、100人以上もすべて割合を上げています。
つまり減ったのは、いちばん小さい層だけ。それ以外の規模はすべて増えました。
減ったのは個人事業所
その「いちばん小さい層」の中身が、次のグラフでわかります。
個人事業所は2009年の1万4,047か所から2021年の9,479か所へ、4,568か所(32.5%)減りました。割合も32.3%から23.0%へ、9.3ポイントの低下です。
いっぽう法人事業所は2万9,331か所から3万1,638か所へ2,307か所増。割合は67.4%から76.7%へ上がりました。
個人商店、個人経営の事務所や工房。これらが12年で3分の1近く姿を消しています。「開業率・廃業率」のページで見た廃業の実態は、その多くがこの個人事業所だと考えられます。
理由は複合的です。経営者の高齢化と後継者不足、大型店・チェーン店との競争、そして法人化(法人成り)。個人事業を法人に切り替えれば、統計上は「個人事業所が減り、法人事業所が増える」ように見えます。すべてが廃業ではありません。
ただし個人9,479+法人3万1,638=4万1,117で、総数4万1,223とは106のずれがあります(その他の事業所)。
川崎区は大きく、多摩区は小さい
市内の分布にも特徴があります。
1〜4人の割合がもっとも高いのは多摩区の58.2%。次いで宮前区55.5%、中原区54.9%、麻生区54.4%。もっとも低いのは川崎区の46.1%です。
逆に100人以上の割合は川崎区2.8%がトップ、幸区2.7%が続き、多摩区1.1%が最低。川崎区と多摩区で2.5倍の差があります。
「産業別の構成(区別)」のページで見たとおり、川崎区は臨海部の大工場と駅周辺のオフィスを抱えます。幸区にはソリッドスクエアや大手電機メーカーの事業所があります。大規模事業所は南部に、小規模事業所は北部にという分布です。
個人事業所の割合も、多摩区28.1%、中原区27.4%が高く、川崎区19.8%、宮前区20.0%が低い。多摩区は「小さな事業所の街」だといえます。
中小企業への示唆
1. 顧客の98%は従業者100人未満——B to Bで川崎市内を回るなら、これが前提です。大企業向けの提案書は、この市場では通用しません。決裁は社長ひとり、導入は即断即決、しかし予算は小さい。そういう相手が4万か所あります。
2. 半分は4人以下。「担当者」はいない——2万1,697か所。総務も情報システムも人事も、社長か家族がやっています。「導入すれば楽になる」より「使い方を教えてくれる」が刺さる層です。IT導入補助金の対象としても中心的なゾーンです。
3. 伸びているのは10〜29人の層——12年で776か所増、割合も2.8ポイント上昇。この規模帯が川崎で最も成長している。人を雇い始め、仕組みを整える段階に入った企業です。労務、会計、システム——支援ニーズがもっとも顕在化するゾーンです。
4. 個人事業所は12年で3割減った——1万4,047か所から9,479か所へ。事業承継と法人化の支援は、この減少を緩める数少ない手立てです。減少の一部は法人成りですが、そうでない部分は純粋な喪失です。
5. エリアで規模が違う——川崎区は大規模、多摩区は小規模。営業リストを作るときは、区ごとに提案内容を変えるのが合理的です。
データの注意点
「100人以上」の数値は、民営事業所の総数から1〜99人の各区分を引いて求めたものです。統計に直接そういう項目があるわけではありません。
調査年は2009年・2011年・2014年・2016年・2021年です。これらは経済センサス基礎調査と活動調査が混在しており、調査方法や捕捉範囲が完全に同じではありません。長期の比較はおおまかな傾向としてご覧ください。
個人事業所と法人事業所の合計は、民営事業所の総数と一致しません(2021年で106のずれ)。「法人でない団体」などが別に集計されているためです。
「事業所」は工場・店舗・事務所などの場所の単位です。企業の単位ではありません。1つの企業が複数の事業所を持つ場合、それぞれ別に数えられます。従業者100人以上の事業所が843か所しかないというのは、「大企業が843社しかない」という意味ではありません。
2021年6月1日現在の数値です。