川崎市の事業所数・従業者数

働く場所は減り、働く人は増えた。40年で何が入れ替わったのか。

このページの要点

① 2021年の事業所は41,223か所、従業者は547,471人。1事業所あたり13.3人です。40年前(1981年)の10.5人から、事業所は着実に大型化しています。

② 第2次産業の働き手は25年で半減した。1981年に210,593人(46.9%)いた第2次産業の従業者は、2006年に114,552人(23.5%)へ。いっぽう第3次産業は238,723人から373,803人へ増えました。

③ いちばん多いのは卸売業・小売業。2021年で8,150か所。次いで宿泊・飲食(4,848か所)、医療・福祉(4,841か所)。製造業は2,838か所で7番目です。「工業都市」のイメージと、事業所の実数はかなり違います。

事業所数と従業者数の推移

グラフを見る前に:調査が3回変わっています。 1981〜2006年は「事業所・企業統計調査」、2009〜2014年は「経済センサス‐基礎調査」、2021年は「経済センサス‐活動調査(民営のみ)」です。 調査方法と対象範囲が異なるため、3つの系列をまたいだ増減はそのまま比べられません。グラフでは線を分けて表示しています。

事業所数の推移(1981年〜2021年)

調査ごとに線を分けています

読み方:事業所・企業統計調査で見ると、1991年の47,119か所がピークで、2006年には40,260か所まで減りました。15年で15%の減少です。
2009年に44,110か所へ跳ね上がっているのは、事業所が増えたのではなく調査が変わって捕捉範囲が広がったためです。この段差を「増加」と読まないでください。

出典:総務省「社会・人口統計体系(C 経済基盤)」/「令和3年経済センサス‐活動調査」をもとに作成

従業者数の推移(1981年〜2021年)

調査ごとに線を分けています

読み方:事業所数が減る一方で、従業者数は増えています。1981年の449,753人から1991年に536,531人へ。その後いったん減りますが、2014年には584,131人まで戻しました。
事業所が減って従業者が増えるということは、1か所あたりの規模が大きくなっているということです。小さな商店や町工場が減り、大きなオフィスや店舗に置き換わる——川崎に限らず全国で起きた変化が、ここにも出ています。

出典:総務省「社会・人口統計体系(C 経済基盤)」/「令和3年経済センサス‐活動調査」をもとに作成

1事業所あたりの従業者数

従業者数 ÷ 事業所数(人)

読み方:1981年の10.5人から2021年の13.3人へ、40年かけて着実に増えています。調査の変更をまたいでも一貫して右肩上がりなので、これは実態を反映した傾向とみてよいでしょう。
ビジネスへの示唆:取引先が「数は少なく、1社あたりは大きく」なっているということです。営業先リストの母数は年々細り、1件を失ったときの影響は年々重くなります。

出典:総務省「社会・人口統計体系(C 経済基盤)」/「令和3年経済センサス‐活動調査」をもとに作成

産業構造の転換

第2次産業と第3次産業の従業者数(1981年〜2006年)

事業所・企業統計調査による/2006年までしか同じ定義で追えません

読み方:川崎の産業構造がひっくり返る様子が、はっきり出ています。
1981年には第2次産業(製造・建設)が46.9%、第3次産業(サービス)が53.1%と、ほぼ半々でした。それが2006年には23.5% 対 76.5%。第2次産業の従業者は210,593人から114,552人へ、25年で半減しています。
「製造品出荷額等の推移」のページで見た出荷額の落ち込みは、雇用の面ではこういう形で現れました。

出典:総務省「社会・人口統計体系(C 経済基盤)」をもとに作成

2021年の産業別内訳

産業別の事業所数(2021年・川崎市)

令和3年経済センサス‐活動調査/民営事業所のみ

読み方:事業所数でいちばん多いのは卸売業・小売業(8,150か所)。次いで宿泊・飲食、医療・福祉、不動産、建設と続き、製造業は2,838か所で7番目です。
ところが従業者数に切り替えると順位が変わります。製造業は68,560人で3位に上がる。製造業は「数は少ないが1か所が大きい」という構造です。逆に不動産業は事業所数4,349か所に対して従業者17,190人で、1か所あたり4.0人。小規模事業者の集まりであることがわかります。

出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」をもとに作成

区別の内訳(2021年)

区別の事業所数と1事業所あたり従業者数

棒が事業所数(左軸)、折れ線が1事業所あたり従業者数(右軸)

読み方:事業所数は川崎区(10,362か所)が最多で、中原区(7,091)、高津区(5,915)と続きます。
注目は折れ線です。幸区が1事業所あたり16.4人でトップ。事業所数は4,621か所と6位なのに、1か所あたりの規模は最も大きい。新川崎・鹿島田周辺の大企業の研究所やオフィスが効いています。
逆に多摩区は9.4人で最小。住宅地に小さな店舗や事業所が散らばる構造です。同じ「事業所が多い区」でも、中身はまったく違います。

出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」をもとに作成

解説:働く場所は減り、働く人は増えた

事業所は減り、規模は大きくなった

川崎市の事業所数は、同じ調査で追える範囲では1991年の47,119か所がピークでした。2006年には40,260か所まで、15年で15%減っています。いっぽう従業者数は449,753人(1981年)から536,531人(1991年)へ増え、その後も50万人前後を保っています。

この2つを割り算すると、1事業所あたりの従業者数が出ます。1981年に10.5人だったものが、2021年には13.3人。40年で約3割増えました。調査の変更をまたいでも一貫して増え続けているので、これは実態です。

要するに、川崎で起きたのは「事業所の減少」ではなく「事業所の集約」です。個人商店や小さな町工場が畳まれ、大きな店舗やオフィスに置き換わる。この動きは全国共通ですが、人口が増え続けた川崎では、雇用の総量が減らずに集約だけが進んだ点が特徴的です。

25年で半減した第2次産業

もっとも大きな変化は、産業の中身です。1981年、川崎の従業者は第2次産業(製造・建設)が210,593人で46.9%、第3次産業(サービス)が238,723人で53.1%と、ほぼ半々でした。

それが2006年には、第2次産業114,552人(23.5%)、第3次産業373,803人(76.5%)。第2次産業の働き手は25年で半分になりました。減った約9万6千人は、そのまま第3次産業の増加分(約13万5千人)に吸収されていったと見ることもできます。

「製造品出荷額等の推移」のページで見た、1986年の8.61兆円から2000年の4.07兆円への急落。あの数字は、雇用の側から見るとこの形をしていました。

製造業は「少数精鋭」になった

2021年の産業別内訳を見ると、事業所数では製造業は2,838か所で7番目にすぎません。1位の卸売業・小売業(8,150か所)の3分の1です。

ところが従業者数で見ると、製造業は68,560人で3位に上がります。1事業所あたり24.2人。全産業平均の13.3人の倍近くです。事業所の数こそ減りましたが、残った工場は大きい。川崎の製造業は「少数精鋭」の構造に変わったということです。

一方、従業者数2位の医療・福祉(4,841か所・85,460人)は、40年前にはこの規模ではありませんでした。高齢化と共働き世帯の増加が、この産業を市内で2番目に大きな雇用の受け皿に育てています。

区によって、事業所の「濃さ」が違う

2021年の区別データで面白いのは、事業所数の順位と1事業所あたり規模の順位が一致しないことです。

事業所数が最も多いのは川崎区(10,362か所)ですが、1事業所あたり従業者数のトップは幸区の16.4人です。幸区の事業所数は4,621か所で6位。数は少ないのに、1か所が大きい。新川崎・鹿島田エリアに集まる大企業の研究開発拠点やオフィスが、この数字を押し上げています。

逆に多摩区は9.4人で最も小さい。住宅地に小規模な店舗・事業所が広く散らばる構造です。麻生区(12.2人)、宮前区(10.4人)も同様の傾向で、北部3区は「小さな事業所が多いエリア」とまとめられます。

中小企業支援の視点から

1. 支援対象の母数は確実に減っている——事業所数が減り続けているということは、支援機関や士業にとっての潜在顧客が減っているということでもあります。同時に1社あたりの規模は大きくなっており、求められる支援の内容も変わります。

2. 「工業都市」の看板で商圏を読むと外す——事業所数で見れば、川崎で最も多いのは卸売・小売、次いで宿泊・飲食と医療・福祉です。BtoB営業のターゲット選定を「製造業」から始めると、市内事業所の93%を最初から外すことになります。

3. 医療・福祉が第2の柱になった——4,841か所・85,460人。この規模は無視できません。この分野向けのサービス(人材、ICT、給食、清掃、リース)は、川崎では確実に成長市場です。

4. エリアで営業スタイルを変える——幸区や川崎区は「1件が大きい」ので、少数の深耕型。北部3区は「小さい事業所が多い」ので、数を回す効率型。同じ市内でも、営業の設計は変えたほうが合理的です。

データの注意点

このページのグラフは3つの異なる調査をつないでいます。1981〜2006年は「事業所・企業統計調査」、2009・2014年は「経済センサス‐基礎調査」、2021年は「経済センサス‐活動調査」です。とくに2021年の数値は民営事業所のみを対象としており、国・地方公共団体の事業所と、事業内容等が不詳の事業所を含みません。

そのため、系列をまたいだ増減率の計算は避けてください。グラフで線を分けているのはこのためです。同じ調査のなかでの動き(1981→2006、2009→2014)と、最新の断面(2021)は、それぞれ別のものとして読むのが安全です。