土地利用と工業用地

土地は増えていません。人だけが増えました。

このページの要点

① 用途地域の面積は38年で1.5%しか増えていません。1985年の1万2,543haから2023年の1万2,726haへ、183ha増えただけ。その間に人口は41%増えました。

② 用途地域1haあたり120.9人(2020年)は政令指定都市20市で2位。1位の大阪市に次ぎます。使える土地に、これだけ人が詰まっている都市です。

③ しかも工業専用地域が1,782ha、用途地域の14.0%。これもデータのある19市で3位です。市の使える土地の7分の1には、住めません。

土地は増えず、人だけ増えた

用途地域の面積と人口密度(1985年〜2020年・川崎市)

国勢調査年/棒が用途地域面積(ha)、折れ線が用途地域1haあたりの人口

読み方:棒(面積)はほとんど動きません。1985年の1万2,543haから2020年の1万2,727haへ、35年で184ha(+1.5%)だけ。
いっぽう折れ線(1haあたり人口)は86.8人から120.9人へ、39.3%上昇しました。
川崎は市街化が終わった街です。新しく開発できる土地はほとんど残っていません。「人口の推移」のページで見た50万人の増加は、すべて既にある市街地の中で受け止められました。
タワーマンション、狭小住宅、共同住宅への建て替え。「住宅の築年数と旧耐震」で見た住宅ストックの若さも、「一戸建て比率24.2%(20市19位)」も、すべてこの制約から出ています。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」(原典:都市計画現況調査、国勢調査)をもとに作成

増えたのは商業地、減ったのは住宅地(1985年→2023年)

用途地域の区分ごとの面積変化(ha)

読み方:38年でもっとも増えたのは商業・近隣商業地域の+311ha(+27.9%)。1,116haから1,427haへ広がりました。
次いで工業・準工業地域が+53ha(+4.9%)。
逆に減ったのは住居専用地域の−111ha(−2.0%)と住居地域の−35ha(−1.2%)、工業専用地域の−35ha(−1.9%)。
人口が41%増えたのに、住宅用の土地は減っています。駅前の住宅地が商業地に転換され、そのぶん住まいは上へ伸びた——これが川崎の35年です。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

用途地域の内訳(2023年)

用途地域1万2,726haの内訳

読み方:いちばん広いのは住居専用地域の5,405ha(42.5%)。次いで住居地域2,968ha(23.3%)。住居系で65.8%です。
3番目が工業専用地域の1,782ha(14.0%)。ここには原則として住宅を建てられません。
商業地域806ha(6.3%)、準工業地域683ha(5.4%)、近隣商業地域621ha(4.9%)、工業地域461ha(3.6%)と続きます。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

政令指定都市20市のなかで

用途地域1haあたりの人口(2023年)

住民基本台帳人口(日本人)÷ 用途地域面積/川崎市を濃い色で表示

読み方:川崎市は116.2人/haで20市中2位。1位は大阪市の122.4人/ha、3位はさいたま市113.3人/ha、4位が横浜市107.8人/ha。
最下位は北九州市の44.0人/ha。川崎市の2.6分の1です。
この指標は「市域の人口密度」とは違います。山林や農地を除いた、実際に人が使う土地あたりの密度です。「7区別 人口と人口密度」のページで見た市域ベースの密度より、実感に近い数字だといえます。

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

2023年/その区分が用途地域に占める割合/川崎市を濃い色で表示

出典:総務省「社会・人口統計体系 市区町村データ」をもとに作成

解説:使える土地が、もうない

38年で1.5%

川崎市の用途地域——つまり都市計画で用途が定められた、実際にまちとして使う土地——は、2023年で1万2,726haです。

1985年は1万2,543ha。38年で183ha、1.5%しか増えていません。

市街化調整区域(原則として開発を抑える区域)も1,720haから1,707haへ、ほとんど動いていません。川崎市の土地の使い方は、40年前にほぼ固まっていたということです。

いっぽう人口は、1985年の108万8,624人から2020年の153万8,262人へ41.3%増えました。

結果として、用途地域1haあたりの人口は86.8人から120.9人へ、39.3%上昇。同じ土地に、4割多い人が住むようになったということです。

50万人はどこに入ったのか

「人口の推移」のページで見たとおり、川崎市の人口は40年で約50万人増えました。土地が増えていない以上、この50万人は既にある市街地の中に入ったことになります。

答えは上です。タワーマンション、中高層の共同住宅、狭小の三階建て。

このことは、他のページで見た数字と正確につながります。

「住宅の築年数と旧耐震」のページで見た一戸建て比率24.2%(20市19位)。「住宅の太陽光発電と省エネ設備」で見た太陽光1.98%(20市18位)——載せる屋根がないから。「7区別 人口と人口密度」で見た中原区の高密度。すべて、この土地の制約から出ています。

そして「1人あたり市税額」のページで見た固定資産税8万9,062円(20市3位)。土地が希少だから、単価が高い。

増えたのは商業地だけ

用途地域の中身は、この38年で少しずつ入れ替わりました。

もっとも増えたのは商業・近隣商業地域の+311ha(+27.9%)。1,116haから1,427haへ広がっています。次いで工業・準工業地域が+53ha(+4.9%)。

逆に減ったのは、住居専用地域の−111ha(−2.0%)、住居地域の−35ha(−1.2%)、工業専用地域の−35ha(−1.9%)。

人口が41%増えたのに、住宅用の土地は減っています。

川崎駅前、武蔵小杉、新百合ヶ丘。駅周辺の住宅地が商業地域に指定変更され、そこに商業施設と高層住宅が建った。「大規模小売店舗の立地」のページで見た大型店の2.5倍増も、この土地利用の転換とセットです。

7分の1には、住めない

もうひとつ、川崎に特有の制約があります。

工業専用地域が1,782ha。用途地域の14.0%を占めます。この区分では、原則として住宅を建てることができません。

この14.0%はデータのある19市で3位(熊本市は数値が公表されていません)。1位の北九州市(18.9%)、2位の堺市(17.9%)に次ぐ高さです。横浜市は5.4%、名古屋市は2.1%、福岡市は0.3%。

ここで、ひとつの対比が浮かび上がります。

川崎市は、用途地域あたりの人口密度が20市で2位。同時に、工業専用地域の比率が19市で3位。

つまりもっとも人が詰まっている都市が、同時に市域の7分の1を「人が住めない土地」として確保しているということです。

「業種別 出荷額シェア」のページで見たとおり、この1,782haが4兆円の製造品出荷額を生んでいます。「1人あたり市税額」で見た固定資産税の高さにも、この工業用地が寄与しています。住宅の窮屈さと、産業の厚みは、同じコインの裏表です。

これから土地は空くのか

「将来推計人口」のページで見たとおり、川崎市の人口は2045年に161万人でピークを迎え、その後は減少に転じる見通しです。

用途地域の面積が変わらないとすれば、1haあたりの人口は2045年に126.5人まで上がり、そこから下がりはじめる計算になります。

ただし「土地が空く」までにはまだ20年以上あります。当面、川崎の土地は今より窮屈になり続けます。

中小企業への示唆

1. 工場・倉庫の適地は限られている——工業専用地域1,782ha、工業地域461ha、準工業地域683ha。合計2,926haがすべてです。しかも38年でほとんど増えていません。用地取得は「空きを待つ」しかないのが実情です。

2. 準工業地域683haが現実的な選択肢——工業専用地域は大規模プラント向けで、中小企業が入れる区画はまれです。準工業地域なら住宅も併存でき、小規模な工場・倉庫・作業場が成り立ちます。38年で+9.6%と、数少ない増えている区分でもあります。

3. 商業地域は+27.9%で拡大中——店舗・サービス業の立地余地は、この38年でむしろ広がりました。ただし増えたのは駅周辺。賃料は上がっています。

4. 「郊外に安い土地」という選択肢がない——市街化調整区域はわずか1,707ha、しかも38年でほぼ不変です。他都市のような郊外型の低コスト立地は、川崎では成立しません。市外(横浜市北部、東京都西部)を含めて検討するのが現実的です。

5. 土地を持っているなら、それ自体が資産——用途地域が増えない街で、人口が2045年まで増え続ける。需給の構図は明確です。ただし固定資産税も20市3位。保有コストと合わせて判断すべきです。

データの注意点

用途地域の面積は「市」単位でしか公表されていません。区別の数値は、この統計には収録されていません。区ごとの土地利用は川崎市の都市計画情報をご覧ください。

用途地域は13種類ありますが、この統計では一部がまとめて集計されています。「住居専用地域」には第一種・第二種低層住居専用、第一種・第二種中高層住居専用が含まれます。「住居地域」には第一種・第二種住居、準住居が含まれます。

商業地域・準工業地域・工業地域の3区分は2005年からしか取れません。1985年から追えるのは、これらをまとめた「商業・近隣商業地域」「工業・準工業地域」と、「工業専用地域」「住居専用地域」「住居地域」です。長期の変化はこの5区分で見ています。

1haあたり人口の計算は、推移のグラフでは国勢調査人口(1985〜2020年)、20市の比較では住民基本台帳人口(日本人)(2023年)を使っています。基準が違うため、数値がわずかに異なります(川崎市:2020年120.9人、2023年116.2人)。

用途地域の面積は各年3月31日現在です。「実際にその用途で使われている面積」ではなく、「そう定められている面積」です。工業専用地域に空き地があっても、面積には含まれます。