このページの要点
① 部屋数は減っている。1住宅あたり居住室数は2003年の3.54室から2023年の3.23室へ、20年で0.31室減りました。
② でも畳数は増えている。1住宅あたり居住室の畳数は23.75畳から25.59畳へ、1.84畳増えました。部屋を仕切らず、広いリビングにする間取りが増えたことを示しています。
③ 借家の縮小が目立つ。持ち家は4.80室→4.40室(−0.40室)に対し、借家は2.47室→2.14室(−0.33室)。もともと狭い借家が、さらに狭くなっています。
部屋数と畳数、逆方向の動き
1住宅あたりの居住室数と畳数(2003年〜2023年)
棒が居住室数(左軸・室)、折れ線が居住室の畳数(右軸・畳)
これは1部屋あたりが広くなったということです。計算すると、1部屋あたり6.71畳(2003年)から7.92畳(2023年)へ、1.21畳広くなっています。
細かく仕切った和室中心の間取りから、広いLDKを中心にした間取りへ——住まいの設計思想の変化が、統計に表れています。
出典:総務省「社会・人口統計体系(H 居住)」(住宅・土地統計調査)をもとに作成
持ち家と借家の居住室数
単位は室
どちらも減っていますが、持ち家が4.80→4.40室(−8.3%)、借家が2.47→2.14室(−13.4%)と、借家のほうが減り方が大きい。
「住宅数・空き家率・持ち家率」のページで見たとおり、川崎市の持ち家率は政令市20市で最も低い水準です。市内住宅の多数派である借家が縮んでいるということは、市全体の住まいが狭くなる方向に働きます。
出典:総務省「社会・人口統計体系(H 居住)」をもとに作成
広さ別の住宅数
居住室の畳数別 住宅数の構成(2003年・2023年)
100%積み上げ/畳数の区分別
2003年と比べると、5.9畳以下が3,600戸から1万400戸へ2.9倍に増えています。数としては少ないものの、極小の住宅が増えているのは注目に値します。
いっぽう30.0〜35.9畳のようなゆとりのある住宅も6万3,350戸から9万6,200戸へ増加。狭い方と広い方の両端が増え、中間が相対的に薄くなる——住宅の二極化が進んでいます。
出典:総務省「社会・人口統計体系(H 居住)」をもとに作成
解説:狭くなったのか、変わったのか
部屋数は減り、畳数は増えた
川崎市の1住宅あたり居住室数は、2003年の3.54室から2023年の3.23室へ、20年で0.31室減りました。一見すると「住宅が狭くなった」ように読めます。
ところが同じ期間、1住宅あたり居住室の畳数は23.75畳から25.59畳へ1.84畳増えています。総面積は増えているのです。
この2つを割り算すると、1部屋あたりの広さが出ます。6.71畳(2003年)から7.92畳(2023年)へ、1.21畳広くなりました。部屋の数を減らし、1部屋を広くする——それがこの20年の間取りの変化です。
和室で細かく仕切る設計から、リビング・ダイニング・キッチンを一体にした広い空間を中心に置く設計へ。マンションの間取りが3LDKから2LDKへ、そのぶんLDKが広くなる——住宅産業でよく言われる傾向が、そのまま統計に出ています。
世帯の縮小と符合する
この変化は、他のページの数字と整合します。
「世帯構成の変化」のページで見たとおり、川崎市の1世帯あたり人員は1980年の2.76人から2020年の2.06人へ縮みました。「新設住宅着工戸数」のページで見たとおり、新築住宅の1戸あたり床面積は2000年の85.9m²から2024年の67.0m²へ22%縮んでいます。
世帯が小さくなり、新築が小さくなり、部屋数が減る。3つの統計はすべて同じ方向を指しています。子ども部屋を2つ用意する必要がない世帯が増えれば、部屋数は自然に減ります。
借家のほうが縮んでいる
持ち家と借家で比べると、差ははっきりしています。持ち家4.40室に対し借家2.14室。2.06倍の開きです。
減り方も違います。持ち家は4.80→4.40室(−8.3%)、借家は2.47→2.14室(−13.4%)。もともと狭い借家のほうが、より大きく縮んでいます。
「住宅数・空き家率・持ち家率」のページで見たとおり、川崎市の持ち家率は政令指定都市20市で最も低い水準にあります。市内の住宅の多数派は借家です。その借家が縮んでいるということは、市全体の住まいの平均を押し下げる方向に働きます。
「建て方別(共同住宅比率)」のページで見たとおり、川崎市の住宅の67.0%は共同住宅です。単身者向けのワンルームが供給の中心になれば、平均は下がります。
両端が増える
広さ別の分布を見ると、もうひとつ興味深い動きがあります。
もっとも狭い5.9畳以下の住宅が、3,600戸(2003年)から1万400戸(2023年)へ2.9倍に増えました。数としては全体の1%程度ですが、増加率としては突出しています。
いっぽう30.0〜35.9畳というゆとりのある区分も、6万3,350戸から9万6,200戸へ1.5倍に増えています。
狭い方と広い方の両端が増え、中間が相対的に薄くなる。単身者向けの極小住宅と、ファミリー向けの広い住宅——住まいの二極化が、この分布から読み取れます。
中小企業への示唆
1. 家具・家電は「小さく、多機能に」——1部屋が広くなり、部屋数が減ったということは、リビングに置くものが増えるということです。省スペース、多機能、可変性——この方向の商品設計に統計的な裏づけがあります。
2. リフォームの主戦場は「間仕切りを取る」——部屋数を減らして広くする流れは、既存住宅の改修でも同じです。壁を抜いてLDKを広げる工事は、需要のある領域です。
3. 極小住宅市場が育っている——5.9畳以下が2.9倍。1万戸を超える規模になりました。家具のサイズ、収納、宅配ボックス、家事代行——このセグメント向けの商品・サービスには余地があります。
4. ターゲットは二極化を前提に——中間層向けの「標準的な3LDK向け」商品は、市場が薄くなる方向にあります。単身者向けか、ファミリー向けか——どちらに寄せるかを決めたほうが刺さります。
データの注意点
数値は住宅・土地統計調査によるもので、5年ごとの調査です。収録は2003年から2023年の5時点。それ以前のデータはこのデータベースには収録されていません。
「居住室」には台所・浴室・トイレ・玄関・廊下などは含まれません。居住室の畳数は住宅の総面積ではありません。「新設住宅着工戸数」のページで扱っている床面積とは対象が異なります。
住宅・土地統計調査は標本調査です。全数調査ではないため、細かい区分の数値には誤差が含まれます。とくに5.9畳以下のような小さな区分は、変動が大きく出る場合があります。
区別のデータはこのデータベースには十分に収録されていないため、市全体の数値のみを扱っています。