このページの要点
① 2025年、川崎市の245地点すべてが上昇しました。平均+5.40%、下落した地点はゼロです。
② それでも住宅地の中央値29万5,000円は、1993年の40万6,000円から27.3%低い。32年たっても、バブル崩壊直後の水準に戻っていません。
③ もっとも高いのは川崎駅前本町の630万円/㎡。もっとも安い地点の44倍です。同じ市内でこれだけ開きます。
33年でどう動いたか
用途別の地価の推移(1993年〜2025年)
各年の中央値(円/㎡)/地点は毎年見直されるため、年によって対象数が異なります
そこから緩やかに回復し、2025年は29万5,000円。底からは32.3%戻りましたが、1993年比では27.3%低いままです。
1993年はバブル崩壊の直後にあたります。ピークはさらに前ですから、実際の下落幅はもっと大きいことになります。
商業地はより激しく動いています。
出典:国土交通省「国土数値情報 地価公示データ(L01)」令和7年版をもとに作成
区別の推移(住宅地・1993年〜2025年)
各区の住宅地の中央値(円/㎡)/線をクリックすると表示・非表示を切り替えられます
ただし戻り方に差があります。中原区は底から大きく回復し、2025年は42万4,000円で市内トップ。最下位の麻生区(20万8,500円)の2.0倍です。「将来推計人口」のページで見たとおり、中原区は2050年まで市内でもっとも人口が増える区(+9.2%)。人口の伸びが地価に出ています。
いっぽう麻生区・多摩区は回復が緩やかです。
出典:国土交通省「国土数値情報 地価公示データ(L01)」令和7年版をもとに作成
2025年の状況
箱の中の数字は地点数/中央値で並べています
出典:国土交通省「国土数値情報 地価公示データ(L01)」令和7年版をもとに作成
2025年の変動率(区別・用途別)
対前年変動率の平均(%)
もっとも上がったのは川崎駅周辺の商業地。上位5地点はすべて川崎駅が最寄りで、+13.5%〜+16.0%です。
もっとも上昇が小さいのは武蔵新城駅の住宅地(+1.0%)、武蔵中原駅(+1.3%)、鶴川駅(+1.4%)。
商業地のほうが住宅地より大きく上がっています。「消費者物価地域差指数」のページで見たとおり、川崎の物価が政令市1位なのは家賃が理由でした。その家賃を生む土地が、いま上がり続けています。
出典:国土交通省「国土数値情報 地価公示データ(L01)」令和7年版をもとに作成
駅からの距離で決まる
駅距離と地価(住宅地・2025年)
横軸が最寄り駅からの距離(m)、縦軸が地価(円/㎡)/対数目盛
距離帯ごとの中央値を見ると、600m〜1kmが36万8,000円、1〜1.5kmが27万1,500円、1.5km以上が21万円。1.5km以上は、600m〜1kmの57%にとどまります。
「通勤の交通手段とクルマ離れ」のページで見たとおり、川崎市の自家用車通勤は8.2%で政令市最下位。駅まで歩けるかどうかが、そのまま土地の値段になる街だということです。
出典:国土交通省「国土数値情報 地価公示データ(L01)」令和7年版をもとに作成
解説:全部上がって、まだ7割
245地点すべてが上昇
2025年1月1日時点の地価公示で、川崎市内の245地点すべてが前年より上昇しました。下落した地点はひとつもありません。
平均の変動率は+5.40%。もっとも上がったのは川崎駅前の商業地で+16.0%、もっとも小さかったのは武蔵新城駅近くの住宅地で+1.0%です。
「土地利用と工業用地」のページで見たとおり、川崎市の用途地域は38年で1.5%しか増えていません。「将来推計人口」で見たとおり、人口は2045年まで増え続けます。供給が増えず、需要が増える。地価が上がるのは自然な帰結です。
それでも1993年には遠い
ところが長い目で見ると、印象が変わります。
住宅地の中央値は1993年に40万6,000円/㎡でした。それが下がり続け、2005年に22万3,000円で底を打ちます。12年で45.1%の下落です。
そこから回復に転じ、2025年は29万5,000円。底からは32.3%戻りましたが、1993年比ではまだ27.3%低い水準です。
しかも1993年はバブル崩壊の直後にあたります。地価のピークは1990年前後ですから、実際の下落幅はこの数字より大きいことになります。
32年かけて、まだ7割強。これが川崎の地価の現在地です。
中原区が市内でいちばん高くなった
区別に見ると、回復の仕方に差があります。
2025年の住宅地の中央値は、中原区42万4,000円がもっとも高く、次いで幸区33万500円、高津区32万2,000円、川崎区31万8,000円、多摩区25万5,000円、宮前区24万1,500円、麻生区20万8,500円。
中原区と麻生区で2.0倍の差があります。
中原区が市内トップなのは、武蔵小杉の再開発によるものです。「駅別 乗車人員ランキング」のページで見たとおり、武蔵小杉はJRと東急を合わせて21万4,188人で単独の駅として市内最大。「将来推計人口」で見たとおり、中原区は2050年まで人口が+9.2%と市内でもっとも増える区でもあります。
いっぽう麻生区・多摩区は回復が緩やかです。「昼間人口と夜間人口」のページで見たとおり、この2区は昼夜間人口比率が低く、住宅地としての性格が強い区。都心へのアクセスの差が、そのまま地価の差になっています。
駅から1.5kmで、値段が4割落ちる
川崎の地価を決めるいちばん大きな要素は、駅からの距離です。
住宅地の中央値を距離帯で分けると、300〜600mが36万4,000円、600m〜1kmが36万8,000円、1〜1.5kmが27万1,500円、そして1.5km以上が21万円。
1.5km以上は、600m〜1kmの57%。4割以上落ちます。
「通勤の交通手段とクルマ離れ」のページで見たとおり、川崎市で自家用車通勤をする人は8.2%で政令指定都市20市の最下位。鉄道は45.8%で1位です。車を使わない街では、駅まで歩けるかどうかが土地の価値そのものになります。
興味深いのは、300〜600m(36万4,000円)と600m〜1km(36万8,000円)でほとんど差がないことです。徒歩10分程度までは同じ扱い、そこから先で急に落ちるという構造が見えます。
いちばん高い場所と、いちばん安い場所
市内でもっとも高いのは川崎区駅前本町の630万円/㎡(商業地)。JR川崎駅の目の前です。次いで幸区堀川町444万円、川崎区駅前本町325万円。
住宅地に限ると、もっとも高いのは中原区の武蔵小杉駅周辺です。
もっとも安い地点との差は44倍。同じ市内、面積145平方キロメートルのなかでこれだけ開きます。
中小企業への示唆
1. 全地点が上昇=コストが上がっている——平均+5.40%、下落ゼロ。賃料の値上げ交渉は、この数字を背景に来ます。店舗・事務所・倉庫の更新時期には織り込んでおくべきです。
2. 川崎駅前の商業地が突出して上がっている——上位5地点すべてが川崎駅、+13.5%〜+16.0%。この立地の賃料は、今後さらに上がります。「大規模小売店舗の立地」で見たとおり、幸区・川崎区は大型店の密度も市内トップです。
3. 駅から1.5km以上なら4割安い——21万円 vs 36万8,000円。倉庫・工場・作業場のように「駅前でなくてよい」用途なら、コストを4割落とせます。ただし従業員の通勤は不利になります。
4. 土地を持っているなら含み益が出ている——2005年の底から住宅地で32.3%上昇。担保価値も上がっています。設備投資の資金調達を考えるなら、いまは条件が良い局面です。
5. ただし1993年比では27.3%安い——バブル期に取得した土地は、いまも簿価を下回っている可能性があります。売却を前提にした計画には注意が必要です。
データの注意点
地価公示は各年1月1日時点の価格です。国土交通省が選んだ標準地について、不動産鑑定士が評価した1平方メートルあたりの価格を示します。実際の取引価格ではありません。
標準地は毎年見直されます。新しく設定される地点、廃止される地点があるため、年によって対象地点数が異なります。1993年は65地点、2025年は181地点(住宅地)です。このページの推移は「その年に存在した地点の中央値」であり、同じ地点を追い続けた数字ではありません。
用途区分は標準地番号の見出し番号によるもので、000=住宅地、005=商業地、009=工業地です。2025年の川崎市は住宅地181、商業地57、工業地7の245地点です。
「最寄り駅からの距離」は道路距離ではなく、統計上の距離です。0mと記載されている地点もあります。
区別の数値は中央値を使っています。平均値だと川崎駅前の高額地点に引っ張られるためです(川崎区の平均66万6,881円に対し中央値34万8,500円)。
変動率は統計に収録されている対前年変動率をそのまま使っています。